17 MAR/2020

“ベストな産み時”っていつ?24歳で産んだ人と37歳で出産した人に聞いてみた

【特集】
「私らしい育休」って何だろう?

出産後も働き続ける女性は増えたけれど、育休後のキャリアには何となく不安がつきまとうもの。「育休期間をどう過ごすべき?」「復職後もやりたい仕事を続けるにはどうしたら…?」 本特集ではそんな疑問に答えていきます。

「いつか、子どもは欲しい。でも、いつがいいんだろう?」

働く女性を悩ませる“産み時”問題。第一子の平均出産年齢は30歳を超えているが、「自分にとって最適な出産のタイミング」の見つけ方はあるのだろうか……?

そのヒントを得るべく、早めに出産をした人、遅めに出産をした人の双方に話を聞いてみた。

ストリートアカデミー株式会社 執行役員 営業・事業開発 窓岡 順子さん/株式会社リブセンス 転職ドラフト ディレクター まさよふ(不破 昌代)さん

ストリートアカデミー株式会社
執行役員 営業・事業開発
窓岡 順子さん(写真左)

2002年、株式会社リクルートに新卒入社し販促事業の広告営業・ 営業マネジャーを経験後、人事教育部門で社内講師として全国の営業パーソンの育成を担当。 10年からは人材事業で法人営業や新規営業チャネルの立ち上げを経験。 15年4月に「自由に生きる人を増やす」というビジョンに共感し、 ストリートアカデミーに参画。法人事業の立ち上げや、地方開拓・事業開発など幅広く担当

株式会社リブセンス
転職ドラフト ディレクター
まさよふ(不破 昌代)さん(写真右)

大手ゲーム会社に2Dデザイナーとして新卒で入社すると同時に働く母になる。その後、人材業界のWebディレクター、ITベンチャー企業でUXデザイナー、マーケター、デザイナーHR/採用広報を経て、現在は株式会社リブセンスのディレクター。 開発の現場と採用担当の両側面から経験してきた失敗を活かして、エンジニア採用の課題解決の試行錯誤中。14歳と12歳の2人の母 Twitter:@masayofff

37歳で出産し、現在0歳児と2歳児の子育てをしているストリートアカデミー執行役員の窓岡順子さんと、24歳で出産し、14歳と12歳の子どもと暮らすリブセンスのまさよふさん。

2020年3月現在、窓岡さんは40歳、まさよふさんは38歳。ほぼ同世代でありながら、10年以上の時を隔てて産休・育休を取得した2人はともに、「あの時が出産のベストタイミングだった」と振り返る。

なぜそう思うのか、二人の体験談を聞いた。

キャリア0年目の出産と、15年目の出産

ーーお二人が初めて産休に入ったのは、どんなタイミングだったのでしょうか?

窓岡さん(以下、敬称略):私は新卒で入社したリクルートで13年間営業として働いた後、2015年にストリートアカデミーに転職しました。第一子を出産したのは、その2年後の17年7月です。

まさよふさん(以下、敬称略):私は大学4年生の冬に妊娠が分かりました。ゲームデザイナーとして大手ゲーム会社から内定をもらっていたので、お腹に子どもがいる状態で入社式に参加し、その半年後の2005年8月に出産しています。

窓岡:新卒1年目から母親になる人は今でも珍しいと思います。当時はかなり驚かれたのではないでしょうか。

まさよふ:社内では前代未聞だと言われました(笑)。でも、会社の制度がしっかりしていたので、入社後は他の社員と同じように研修に参加し、それがちょうど終わる頃に産休に入りました。

ーー実務を経験する前に産休に入ったのは、かなり不安だったのではないでしょうか?

まさよふ:不安でした。ロールモデルがいない中、「果たしてこの先どのようなキャリアを描けばいいのだろうか」と。でも、この道を選んだのは私なので、後はどうにかするぞという覚悟を持って産休に入りました。

ーー窓岡さんはキャリアを積んでからの出産でしたが、産休に入るときはどんな思いでしたか?

窓岡:私は出産するまで思いっきり働いてきたので、仕事に対する不安はなかったんです。

私の場合、20代は課題を克服する時期で、30代からは得意なことを生かしたキャリアを意識してきました。すでに自分の軸ができつつあったので、「復帰後の私に何ができるんだろう?」と悩むこともありませんでしたね。

ストリートアカデミー株式会社 執行役員 営業・事業開発 窓岡 順子さん

窓岡:産休前はそれよりも、「仕事がしたい」という気持ちの方が強かったです。体調が安定していたので、出産の2週間前まで働いていて。大阪や福岡に出張もしていました。

まさよふ:えぇー! 大きいお腹を抱えて飛び回っていたんですか?

窓岡:そうなんです(笑)。産んだ後は4カ月目からリモートワークを活用して、週3勤務で職場に戻りました。自分の性格上、育児だけの期間が続くとストレスがたまることが分かっていたので。

今は昨年秋に出産した第二子もいて大変ですが、職場や家族の協力を得ながら、バランスの取れた働き方ができていると思います。

ーーまさよふさんの復帰後はどのような状況でしたか?

まさよふ:正直、職場は私の受け入れに困っていたと思います。私が配属された部署は当時男性が9割で、育休から復帰した女性はまだいませんでした。

職人気質の先輩たちが多い中、アシスタント寄りの業務が増えていき……。せっかく参加できたプロジェクトも、子どもの病気で2週間休んだ後に、プロジェクトの配置換えが決まりショックを受けたこともありました。

窓岡:それは悔しい思いをしましたね。

まさよふ:でも、私は産休・育休を取らせてくれた会社には恩を感じていて。

そのお返しをするために、新しいプロジェクトに手を上げるなど、できることを迷いながら探していました。そうやってほぼ1人で立ち上げたオウンドメディアの成長はうれしかったですね。

今は転職してリブセンスで働いていますが、自分なりに動くことができているのは、厳しい環境の中でも手探りで仕事を進めてきた経験があるからだと思っています。

自分のやりたいことをやり終えたから、子どもとの時間を大切にできる

ーー窓岡さんは、「遅めの産休・育休」でよかったと思うことはありますか?

窓岡:私はこのタイミングの出産がベストだったと思っています。

私は昔から「環境に縛られたくない」気持ちが強いんです。出産して環境が変わっても仕事を続けていくためには、自分の力を蓄えておく必要がある。

そう思って、20~30代前半はひたすらスキルを磨いてきました。今自分らしく生きることができているのは、これまで積み重ねてきたキャリアがあるから。

そして思う存分働いたのはもちろん、友達と散々遊んだし、旅行にも行ったし、お酒もいっぱい飲みました(笑)。そういう自分のやりたいことをやってきたからこそ、子どもとの時間を大切にできているんだと思います。

ーー仮にもう少し出産が早かったとしたら、子育てを楽しむのは難しかったかもしれないと感じますか?

窓岡:そうですね。リクルート時代は「仕事がしたくてたまらない」気持ちが強かったので、子どもがいても、今のように気持ちに余裕は持てなかったでしょうね。

それは夫も同じだと思います。夫は私より5歳年上で、私以上にキャリアを積み重ねてきていて会社でも一定の立場にあるので、早く帰ってくるなど仕事の調整がしやすいんです。

2人とも20~30代前半の“仕事の頑張りどき”を越えて、ある程度落ちついた年齢になったからこそ、育児で協力し合えるのかなと思います。

ーーパートナーのことを考えても、ベストなタイミングだったというわけですね。

窓岡:そうですね。でも、「体力がもっとあれば……」とは思いますよ(笑)

40歳に近づくにつれて、疲れを感じることが増えました。特に第二子を産んでからはぐったりする日が多くて……。もうちょっと若ければ、こんなに疲れずに済みますよね。

ストリートアカデミー株式会社 執行役員 営業・事業開発 窓岡 順子さん

まさよふ:たしかに、私は23歳で出産したので、体力はあったのかなと思います。子どもの服を手作りする余裕もありましたし、どれだけ泣かれようが走り回られようが、楽しんでいた記憶があります。

窓岡:まさよふさんは、他のお母さんに比べたらお子さんと年齢も近いですよね。若いママって、お子さんにとっても良さそうです。

まさよふ:たしかに、上の子が今中学生で、この4月から下の子も中学生になるんですけど、30代の親は珍しがられますね。

子どもたちはデジタルネイティブ世代なので、私のTwitterやnoteを普通に読んでいるんです。「ママの理論は矛盾している!」なんてよく言われるんですが、そうした会話ができるのも楽しいです(笑)

思うように働けなかった経験が「めちゃくちゃ働きたい」モチベーションの源

ーーまさよふさんは他に、「早めの産休・育休」でよかったと思うことはありますか?

まさよふ:出産したときはまだキャリアが始まっていなかったので、「復帰してからどうにかしよう」と切り替えて、育休期間中は母親としての役割にコミットできたように思います。

その分、復帰後は全てがゼロスタートで気持ちがくじけることもありましたが(笑)

窓岡:20代でお子さんを育てながら試行錯誤してきたなんて、想像がつかないです。すごい経験だと思います。

まさよふ:私の場合、キャリアの最初で思うように働けなかった経験が、今の「めちゃくちゃ働きたい!」というモチベーションにつながっているんだと思います。

株式会社リブセンス 転職ドラフト ディレクター まさよふ(不破 昌代)さん

まさよふ:実は、ゲームデザイナーには12歳の頃からなりたくて、ずっと夢を追い続けてきました。

大学入試にも就活にも本気で取り組んできたので、大手ゲーム会社に就職が決まったときは本当にうれしかったんです。

ーーその矢先で妊娠が分かったのですね。

まさよふ:はい。妊娠はうれしかった反面、今後のキャリアを考えると、正直ネガティブな気持ちにもなりました。家族や友人にもたくさん反対されました。

そんな状況でも、出産する前にゲームデザイナーになる夢を叶えた経験があったから、自分に自信があったんです。だから出産するという意思を貫き通せたし、仕事でくじけそうになっても頑張れた。そういった経験を通して、もっと強くなれたんだって思います。

今はというと、特にここ5年は仕事がめちゃくちゃ楽しいです。むしろ「今から仕事楽しむぞ!」という気持ち。仕事に対するモチベーションが湧き続けてくるのは新卒一年目で出産したからこそです。

それに私は今「転職ドラフト」という転職サービスのディレクターをしているのですが、20代で産休・育休を取得して働くことの困難を当事者として体験できたことが、今の仕事にすごく生かされています。

こうした原体験があったからこそ、転職のような人生に関わるサービスに興味が持てるようにもなりました。

そう考えると、私のベストな出産のタイミングはやっぱりあの時だったなって思います。

30代前半は悩む時期。“コントロールできること”を悔いなくやろう

ーー「自分にとってのベストな産休・育休のタイミング」に悩む女性はたくさんいます。そんな女性に何かアドバイスはありますか?

窓岡:「こうすればベストなタイミングが見つかる」という便利な方法はないと思いますが、その時々でやりたいことを思いっきりやっておくことが大事だと思います。

出産って相手が必要ですし、授かれるかどうかも分かりません。自分でコントロールできないものをコントロールしようと思うから、悩んでしまうのだと思います。

それなら、それ以外のコントロールできる部分を悔いなくやっておくこと。自分の興味関心を大切に、後悔のない毎日を過ごしていれば、その積み重ねでタイミングはやってくるのではないでしょうか。

まさよふ:かっこいい……! やりたいことを思いっきりやった後だと、育児を始めるときの心持ちも違うんだろうなと思います。

窓岡:とはいえ、30代前半はすごく悩みましたよ。何をしていてもぼんやりと結婚や出産が頭をよぎるので、その頃が一番つらかったかもしれないです。5年前の自分に、「大丈夫だよ」って言ってあげたいぐらい(笑)

まさよふさんは、先に育児とキャリアの兼ね合いで苦労した分、30代前半でそんな悩みは抱えなくて済んだのではないですか?

まさよふ:そうですね。むしろ30代に入った頃は、かつて疎遠になってしまった友達が出産して、やっと育児の話題ができるようになってうれしかったですね。

株式会社リブセンス 転職ドラフト ディレクター まさよふ(不破 昌代)さん

まさよふ:私がこれまで子育てをしてきて思うのは、子育ては産休・育休の期間だけではなく、約20年続く長期プロジェクトだということ。その立ち上げにあたる産休・育休期間が、最もカオスでめまぐるしい時期でした。

子どもを産むと、産まれたての小さな命と24時間体制で対峙し続けることになります。不安やリスクとの戦いの日々をブレずに乗り越えるには、自分のコアとなる部分をしっかり認識しておくことが大切だと振り返って思います。

出産のタイミングはコントロールできないものですし、ベストなタイミングは人それぞれ。でも、「自分は何を叶えたいか、何を譲れないか」を意識することさえできれば、いつだって最高のタイミングだと思います。

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取材・文/一本麻衣 企画・編集・撮影/天野夏海