どんなことも「気持ちいいかどうか」で決める。漢方ブランドDAYLILY小林百絵のヘルシーな生き方

いつも真面目に、頑張り過ぎてしまう私たちだから――。コロナ禍の今こそ見つめ直したい、擦り減らない働き方、生き方を実践するヒントとは?
とりあえず仕事しなきゃ。会社に行かなきゃ。――日々感じる「何となくモヤモヤ」には蓋をして、毎日をやり過ごしている人は少なくないのでは?
漢方のライフスタイルブランド『DAYLILY』を経営する小林百絵さんも、2年前まではそんな会社員の一人だった。
組織に所属することに違和感があり、「会社で萎縮して、モヤモヤしながら働いていた」という彼女。漢方に出会ってからは「自分にとって気持ちいい生き方」を見つけることができたという。

DAYLILY 小林百絵さん
92年生まれ。大学院修了後、電通に就職。新規事業の立ち上げ支援に従事。2018年に台北市内で漢方のライフスタイルブランド『DAYLILY』を立ち上げる。2019年に誠品生活コレド室町テラス、大丸梅田店、2020年には有楽町マルイ、渋谷ヒカリエに実店舗をオープン。 Twitter:@moekobayashi_tw
今では『DAYLILY』を通して、日本ではまだ馴染みの薄い「漢方」を広め、多くの女性たちの体と心を支えている小林さん。
どうしたら彼女のように、ヘルシーに働き、「気持ちいい自分」を手に入れられるのだろう? 自身の経験をもとに、教えてもらった。
「自分の個性って何だっけ」萎縮していた電通時代
私が漢方ライフスタイルブランド『DAYLILY』を立ち上げたのは26歳の時。新卒で入社した電通を1年半で退職し、起業したんです。
電通では、クライアントの新規事業の立ち上げをお手伝いする部署で仕事をしていました。元々大学時代からブランディングの勉強をしていた私にとって、とても恵まれた環境で仕事をできていたように思います。
一方で、会社員として生きていくことの難しさも実感していました。電通には“すごい人”がたくさんいますから、上司に「自分のカラーを出していけ」「個性をアピールしろ」と度々言われていました。ただ、じゃあどうすればいいのか、というのがいまいちよく分からなかったんです。
組織の一員として、自分はどう立ち居振るまえばいいのか。どう自分をアピールすればいいのか。考えれば考えるほど分からなくなってしまい、本来の自分を出せずに萎縮してしまっていたように思います。
本来なら、何も考えずに過ごしているだけで自分のカラーみたいなものって出るはずなんです。でも、私は頭で難しく考えていたせいか、身動きが取れなくなってしまっていました。

そんな時、よく考えていたのは「ヘルシーに働く」ってどういうことなんだろう、ということです。
私が入社した時、ちょうど世間で労務問題が取り沙汰されていて。私自身は過酷な働き方をしていたわけではありませんでしたが、周囲で働き方について議論がなされている中で、どうやって心も体も健康に働いていけばいいのか、ということを考えざるを得ませんでした。
ちょうどその頃、感銘を受けたのが、台湾での漢方のカルチャーでした。『DAYLILY』共同創業者であるEriとは大学院のゼミで知り合ったのですが、彼女のご両親が台湾で漢方薬局を経営していたのもあり、よく話を聞いていたんです。
台湾では、漢方を薬のように大袈裟なものと捉えておらず、食・ライフスタイルなど日常のありふれたところで自然に取り入れられています。日々の生活の中で自分の心身を調整するという、漢方との付き合い方を聞いた時、「無理がない心地よさ」を感じて、すごく好きだな、と思いました。
「ヘルシーに働く」「ヘルシーに生きていく」ということが課題だった私にとって、その考え方がぴたりとハマったんです。その後、Eriと漢方ライフスタイルブランド『DAYLILY』を立ち上げました。
誰と過ごすか、何をするか。全ては「気持ちいいかどうか」
経営者となった今、一番大切にしていることは、自分が「気持ちいい」と感じることを選ぶことです。誰と一緒にやるのか、何をするのか、どちらを選ぶのか。全ての判断基準を「気持ちいい」かどうか、に委ねています。
会社員として働いていた頃を振り返ると、あまりに多くのことが固定されすぎていたなと思います。例えば、毎朝同じ時間に起きて、電車に乗って、会社に行くこと。毎週同じメンバーで同じ時間に部会をやること。そうしたルーティンに、私自身はどこか違和感がありました。

それでも忙しく過ごす日々の中で、自由に過ごすことのできるプライベートの時間だけは自分の「気持ちいい」と思う心を優先して過ごしていました。
一緒にいて気持ちのいい人たちと時間を過ごして、好きなようにインプットもアウトプットもする。それが本当に気持ちよくて、次第に「この気持ちいいと思える状態の時間をもっと増やしたい」と思うようになったんです。
その判断基準で、起業という道を選んでからは、自分の「気持ちいい」を大切に過ごせているなぁと実感しています。
現在は社長という肩書を持っていますが、「社長らしくいなければ」とも思っていません。起業したての頃は肩肘張っていたような気もしますが、いろいろと失敗を重ねる中で、自分って本当に何もできないんだなって実感したんです。だから、もう頑張りすぎたり社長らしく振る舞ったりするのはやめて、楽にやろう、と思いました。
それでも何とかやれていますから、やっぱりそんなに緊張しなくてもよかったんだなというのが今の気持ちですね。
すべての人に起業という選択が当てはまるわけではないですから、自分にとっての「気持ちよさ」は何なのか、一度考えてみるのはいいことだと思います。

漢方薬剤師がブレンドしたDAYLILYの「EAT BEAU-TEA ~ Thinkin Bout You ~」写真はDAYLILY HPより
最近はサステナブルな働き方が注目されていて、これは素晴らしい考え方だと思っています。世の中には「若い時はがむしゃらに頑張った方がいい」という考え方もありますが、必ずしもそれが全員に当てはまるとは思いません。その人にとっての、その時々の「ちょうどいい」があるはず。
がむしゃらに働きすぎてバーンアウトしてしまうより、「今」の気持ちよさを大事にした方がいいと思うんです。なぜなら、「今」が将来につながっているから。辛くならずに、今の自分を大切にしてほしいと思います。
意識は高くなくていい。「自分の体が気持ちいい」ことを探して
語弊を恐れずに言えば、新型コロナウイルスによってこれまでの日常が変化したことは、働く女性にとってすごく良いことだったと思っています。
移動や人と会うことに制限がかかる中で、“自分の心身が生活の中心にある”という感覚を持つことができたような気がするんです。
無理に周りに合わせることが減って、家で心地よく過ごすために料理を始めてみたり、植物を育ててみたり、身体を動かしてみたり。自分の心身を大切にすることで、すごく生きやすくなったと実感した人も多いんじゃないかなと思います。
本来、そうあるべきなんですよね。私自身も、時間や人間関係など、想像以上にいろいろなものに振り回されていたんだな、と気付かされました。これをきっかけに、たくさんの人が“自分を中心においた生活”を続けられたらいいなと思っています。

とはいえ、いわゆる“意識高いこと”をしよう、とは言いたくありません。私は今漢方のブランドをやっていますが、ものすごくズボラですし、健康オタクでも何でもないんです(笑)
ただ、「漢方」の考え方ってそれでいいと思っています。漢方は薬ではなくて、ライフスタイルですから。
自分の体が「気持ちいい」と思うことをすれば、それだけで十分“漢方”の考え方だと思っています。朝起きて白湯を飲んで「あぁ、自分に良いことしちゃったな!」と思えれば、それだけでハッピー。
なので、健康のためにDAYLILYの商品を買ってね、と言うつもりもありません(笑)。自分にとって心地良いと思えるライフスタイルを、少しでも取り入れてみてほしい。
それが「気持ちいい生き方」のスタートになると思います。
取材・文/太田冴 撮影/赤松洋太