「できない自分」と向き合い、周囲を巻き込む。実績ほぼゼロの営業女性が、社内売上No.1になるまで【freee小口さん】

私たちの生活様式や働き方が大きく変化したコロナ禍の1年。環境が変わり、仕事で思うような成果を上げられずに悩んだ人も多いはずだ。

しかし、困難な状況を打破する方法は、工夫と心掛け次第で必ず見つかる。

そう証明してくれるのが、クラウド会計・人事労務サービスを展開するfreee株式会社で働く小口莉奈さんだ。彼女はコロナ禍の2020年度に同社のクラウドERP事業部で営業成績ナンバーワンに輝いた。

freee株式会社 GS事業部 Sales Development リーダー 小口莉奈さん

freee株式会社 GS事業部 Sales Development リーダー 小口莉奈さん

大学卒業後、大手銀行での法人営業を経て、2018年にfreee株式会社へ入社。法人顧客向けのセールスを担当し、入社2年目には部署内の営業成績ナンバーワンを記録。昨年7月からはインサイドセールスとして、商談機会創出を担っている。

「前年度までの営業成績は下から数えた方が早かったくらい」と明かす小口さん。

伸び悩んでいた時期をブレイクスルーし、この「変化の時」に高い実績を残せたのはなぜだったのだろうか。

コロナ禍で商談数が激減。1件1件にコミットするスタイルへ

――freeeに入社してから担当してきた仕事について教えてください。

クラウドの会計・経理システムを扱う法人営業を担当してきました。企業の経理部門が抱えている課題をヒアリングし、最適なサービスの導入をご提案する仕事です。

前職の銀行でも法人営業を行っていたのですが、その頃は既存のお客さまに対するアプローチが中心だったため、新規開拓の営業スタイルは初挑戦。お客さまに関する情報がほとんどない状態からのスタートなので、営業としてのヒアリング力が試されました。

――小口さんは入社2年目にあたる昨年度、部署内の売上1位だったと伺いました。昨年からコロナ禍が続いていますが、営業活動にも影響があったのでは?

そうですね。昨年の4月頃は、大半の商談がキャンセルになったこともありました。お客さまの多くがリモートワークに切り替わり、営業スタイルもオンラインへ。オンラインでの商談はとにかく雰囲気がつかみづらくて……。慣れるのに苦労したことを覚えています。

――営業の成果も出しづらい時期だったのはないでしょうか?

それが成果にはあまり影響がなかったんです。

――どんな工夫をされたんですか?

商談の数を増やすのは難しいと判断し、1件1件のお客さまに対する提案を充実させることに専念しました。

freee株式会社 GS事業部 Sales Development リーダー 小口莉奈さん

商談の事前準備を以前より入念にし、商談後には必ずメールで再度ご連絡する、後日お電話で改めてお話しする……など、お客さまとの接点を増やしていきました。

目の前のお客さまに対して私ができることに最大限のコミットをしよう。そんな姿勢で取り組んだことでお客さまからの信頼を得られたのかもしれません。

――数より質にシフトした、ということですね。

そうですね。今できることに目を向けたら、結果がちゃんとついてきました。

思いが空回り、苦戦した転職1年目。まずは「できない自分」を認めること

――入社2年目で営業成績ナンバーワンということは、入社直後からかなりの手応えがあったのでは?

いえ、それが全くなかったんです。むしろ入社1年目の頃は実績ほぼゼロ。もちろん営業成績も下から数えた方が早いくらいでした。

――ほぼゼロ……!苦労されたのですね。

今振り返ってみると一人で抱え込み過ぎだったんですよね。中途入社なんだから早く自立して結果を出さなければ、と思い込んで、空回りしてしまったんです。

分からないことや困っていることがあっても誰にも相談しなくて。当時は何でも自分一人で全部やり切ろうとして必死でした。

――その状況からどのように脱したのでしょうか?

私の様子を見かねて、当時のマネジャーが声を掛けてくれたんです。

そこで思い切って苦しんでいることを相談してみたところ、マネジャーが「元々できる人と比べるからつらくなる。苦手なことを持っている人がどんな工夫をしているのか、そっちに目を向けてみたらヒントがあるんじゃない?」と言ってくれました。

私はコミュニケーション能力が長けているわけでもないですし、当時はまだサービス知識も深くない。なのにトーク力の高い人や知識量の豊富な人ばかり見ては落ち込んでいるだけでした。

自分と違うタイプの人を目指しても成果にはつながらないんですよね。マネジャーの一言でハッと目がさめたんです。

――なるほど。そこから仕事の仕方にも変化があった、と?

はい。まずは感情的に「私なんて」と思う前に、自分の課題を明確に理解しようと努めました。

全ての商談をリスト化して、できたこと、できていないこと、どうすればよかったのか、など全てのアクションを洗い出す。そこに自分自身で振り返りのコメントを記録していきました。

freee株式会社 GS事業部 Sales Development リーダー 小口莉奈さん

リストに書き出して客観的に見ると、自分の得意・不得意の傾向が浮かび上がってきたんです。

結果、やみくもに取り組んで空回りする前に「私はここができていない」という事実を受け止められるようになりました。

――自分の課題を見つめることから始めたのですね。振り返りの中でどのような課題が見えてきたのですか?

例えば、いつも商談の最後の一押しができていない、ということが分かりました。クロージング力が課題だったんです。

それが分かってからは、お客さまの決め手となり得る情報をサービス知識の豊富な人に教えてもらったり、大事な商談にはクロージングの得意な人に同行してもらったりと、周囲に積極的に協力を求めるようになりました。

自分で全てを背負わなくても得意な人の力を借りてもいい。そう思えるようになっていったんです。

――一人で抱え込んでいた頃と比べると、大きな変化ですね。

周囲からも「変わったね」と言われますね(笑)。今振り返れば入社当時は肩肘張り過ぎていたんだと思います。

自分の苦手分野が明確になったことで人に協力してもらおうと思えたこと。仲間と一緒に成果を出すスタイルもあると気付けたことは大きな発見でした。

freee株式会社 GS事業部 Sales Development リーダー 小口莉奈さん

行き詰ったら、「自分が働く理由」に立ち返って考える

――「一人で頑張り過ぎない」仕事スタイルに変えた後、いつ頃から成果に違いが出てきましたか?

リストでの振り返りを始めて2カ月くらい経った頃でしょうか。入社2年目に入る昨年の春ごろから少しずつ実績が出せるようになりました。

とはいえ、今でも思うように成果が出なくて落ち込むことはあります。

――そういうときはどうしているんですか?

「自分は何のために働いているのか」と考えるようにしているんです。

私の場合、もともと「お客さまの役に立ちたい」という意識が強かったんですけど、最近では「うまくいかなくてもチャレンジを繰り返して成果へとつなげていく姿を通じ周囲に勇気を与えたい」という思いを持つようになりました。

人によって働く目的は違うと思います。行き詰まった時こそ「何のために働いているのか」を自問してみると光が見えてくるかもしれません。

取材・文/太田 冴 編集/秋元 祐香里(編集部)