【金井芽衣×秋元里奈】“女性に優しい会社”って何? 時短ママ活躍、福利厚生充実だけじゃない真実
厚生労働省のサイトや転職サイトなどを見てみると、女性が長く活躍できる職場のことを、“女性に優しい会社”と表現することがある。
女性比率が多い会社、ワーキングマザーが活躍している会社、時短や在宅勤務など働き方がフレキシブルな会社、子育て支援など福利厚生が充実している会社……。
各社の求人サイトを覗いてみると、「女性に優しい会社」を謳う企業では、上記のようなキーワードがずらりと並んでいる。
しかし、女性が長く活躍できる会社の条件は、本当にそれだけなのだろうか。
そんな問いを一緒に考えてくれたのは、品質にこだわる農家・漁師から旬の食材を直接お取り寄せできる産直通販サイト『食べチョク』を運営する株式会社ビビッドガーデン代表取締役社長・秋元里奈さんと、キャリアのパーソナル・トレーニング『POSIWILL CAREER』を展開するポジウィル株式会社代表取締役・金井芽衣さん。
新卒入社では国内大手企業で仕事に打ち込んでいた二人。会社員を経てスタートアップ経営者となった今、“女性に優しい会社”についてどのように考えるのだろうか。
コロナ禍で不確かさを増すこれからの時代に、女性が長く働ける会社とは?
産休・育休期間も会社と社員が“ゆるやかに”つながる
ーーお二人が考える“女性に優しい会社”とは、どんな会社でしょうか?
“女性にだけ優しい”のではなく、性別や属性を問わず、あらゆる状況にある個人が長く働ける会社でしょうか。
子育てや介護=女性の仕事と決めつけない、女性にとっても男性にとっても働きやすい会社が、本当のところは“女性に優しい”のでは。
正にそうですね。男女関係なく、フラットに評価してくれる会社。
ーーお二人は、女性が長く働き続けられる職場づくりを意識していますか?
当社にはまだ産休・育休を取得したメンバーはいないのですが、将来の結婚・出産を考える20代後半の女性メンバーは多くいます。
なので、制度づくりはまさにこれから取り組むところです。
また、女性メンバーにヒアリングしたところ、多くの人が心配しているのが、復帰後の働き方でした。
育休明けに、会社の変化についていけるか不安になるようです。
スタートアップだと、たった半年でも会社が大きく変わりますしね。
当社でも「女性が長く働ける環境づくり」は直近取り組んでいる重要課題の一つです。
ちょうど、会社立ち上げの時期から支えてくれたメンバーが5月から産休に入ったのですが、彼女も「戻ってからバリューを発揮できるか不安だ」と言っていました。
ーー復職するメンバーの不安を払拭するために、新たに始めたことはありますか?
毎週オンラインで開催している社員のランチ会に声を掛けたり、産休・育休中の人も含めて「誰でも同じ情報にアクセスできる環境」を整えたり。
ゆるく長くつながりを持てる仕組みをつくったところです。
ーー仕事から離れていても、会社と接点を持ちやすいようにしたのですね。
はい。一度会社から完全に離れてしまうと、心も離れてしまいがちだと思います。
でも、ゆるくずっとつながれる環境があれば安心して戻ってきやすいですし、復帰後に大きなギャップを感じずに済むのではないかと思います。
私がこれから会社の制度を整えていく際に意識したいのは、個々人の状況に合わせたサポートができるようにしておくこと。
「この制度があれば全てがうまくいく」という万能の制度はおそらくありません。
なので、メンバーの声を一つ一つ拾いながら、会社としてできることを探していくつもりです。
女性と一言に言っても、置かれている状況は人それぞれですからね。
個の力を伸ばし、成長できる。令和の“女性に優しい会社”
ーーその他、「女性が長く働ける会社」の条件として大切なことは何だと思いますか?
自分が成長できる環境があるかどうか。これに尽きると思います。
『POSIWILL CAREER』のキャリア相談に訪れる20~30代の女性ユーザーさんの中には、時短ママがたくさん働いていて、福利厚生が充実していて……といういわゆる“女性に優しい会社”に入社したものの「私の人生これでいいんだっけ?」と悩む人は多くいます。
いくら8時~17時で安定して働ける職場環境があったとしても、全く仕事にやりがいを感じられない、将来につながる経験を積むことができない、成長実感を持てない会社で長く働き続けるのは難しいですしね。
しかも、そこから転職を考えても厳しい戦いになります。
市場から必要とされるスキルがなかったり、自分自身の希望条件だけが高くなってしまっていたり。
結局モヤモヤしながら今の会社で働き続ける……なんてことも。
会社の中にいても、外に出ても、働き続けられる実力をしっかり養える会社こそ“女性に優しい会社”ですね。
言い換えると、性別によらず成長するための機会が開かれている会社。実績でフェアに評価してくれて、挑戦の機会を存分に与えてくれる会社でしょうか。
ーーなるほど。お二人も、就職活動ではそのような視点で会社を選んだのでしょうか?
そうですね。私の前職はリクルートキャリア(現:リクルート)なのですが、実力でしか評価されないフェアな環境だっだと感じます。
「ここでなら、どこでも活躍できる力を身に付けられるのではないか」と思ったのが入社の決め手でした。
私も同じで、DeNAに入社した理由の一つは評価も挑戦の機会もフェアだったからですね。
自ら声をあげた人はいろいろなことにチャレンジできるし、仮に失敗しても許容してくれるような、懐の深さがあったと思います。
「仕事はそこそこ」な20代を過ごすと、後がきつい
ーーお二人とも、20代では成長環境を重視して会社を選んだわけですね。
20代のうちは体力も気力もある。この時期に一度リスクを取ってでもチャレンジしてみることは大事だと思いますね。
30代になった今思うと、本当に20代の頃は疲れを知らなかったな……と感じます。
体力は本当になくなりますね……。
ーー「リスクを取ってチャレンジ」というと、少し尻込みしてしまう気持ちもあります。
働き続けていくために必要なスキル上がらないまま30歳を迎えて、「本当に後悔がないか?」と、自分に問い掛けてみてはいかがでしょう。
私は自分が30歳になって改めて思うのですが、体力や気力がある20代は、リスクを取ってチャレンジしやすい時期です。
若いうちは「少ししんどいな」と思う環境に身を置くくらいがその後がラクになるのではないでしょうか。
力を伸ばせるのは、自分に負荷をかけてくれる会社。早い段階で挑戦した分、将来の選択肢は広がります。
ーー20代を「仕事のやりがいも成長もそこそこでいいや」と過ごしていると、その後が辛くなりそうですね。
もちろん人の幸せはそれぞれなので、「昇進しなくてもいい」「現状を維持したい」と考える人もいますよね。
それは全く否定しません。その場合には、それに合った手段を選べばいいと思います。
そうではなく、「自分は成長したい」と思う人は、成長できるマインドが自分自身に身に付いているかを振り返ってみるのがおすすめです。
私は自社の採用をしていて思うのですが、「素直さ」と「自省心(自分自身を省みる習慣)」が備わっている人は年齢関係なく、何歳になっても伸びます。
つまり、この二つこそが「成長できるマインド」です。
ところがこのマインドがない人は、どんなに若くても、どんなに環境が良くても伸びないんです。
ーー「素直さ」と「自省心」は、自分の努力次第で身に付けられるものでしょうか?
身に付けられると思いますが、大切なのは、自分を客観的に認識すること、つまりメタ認知ができることです。
これは意外にできていない人が多い印象です。
それは私も同意見です。
自分ではメタ認知できているつもりでも、側から見るとできていない人は意外に多いですね。
成長を望むのであれば、ぜひ客観的な意見にも耳を傾けてみてください。
自己認識と他者からの評価が大きくズレる場合は、それがなぜかを考えてみるといいと思います。
ーー自分にいい負荷がかかるような成長環境に身を置くこと。そして自分自身に成長できるマインドがあるかを問うてみること。それによって、30代からのキャリアの充実度が大きく変わりそうですね。
<プロフィール>
ポジウィル株式会社 代表取締役
金井芽衣さん
1990年群馬県生まれ。埼玉純真短期大学で保育士・幼稚園教諭の免許を取得した後、2010年に法政大学キャリアデザイン学部に編入。13年、リクルートキャリアに入社し、法人営業を経験。17年に国家資格キャリアコンサルタント登録。同年8月にポジウィル株式会社を設立し、同社代表取締役に就任。「どう生きたいか?でキャリアをきめる」キャリアのパーソナル・トレーニング事業『POSIWILL CAREER』(旧『ゲキサポ』)を運営。20代~30代の若手ビジネスパーソンを中心に、絶大な支持を集めるサービスへと成長している Twitter:@meiem326
株式会社ビビッドガーデン 代表取締役社長
秋元里奈さん
慶應義塾大学理工学部を卒業後、株式会社ディー・エヌ・エーへ入社。webサービスのディレクター、営業チームリーダー、新規事業の立ち上げを経験した後、スマートフォンアプリの宣伝プロデューサーに就任。2016年11月に株式会社ビビッドガーデンを創業。実家は相模原の農家 。品質にこだわる農家・漁師から旬の食材を直接お取り寄せできる産直通販サイト『食べチョク』は、「利用率No.1」の産直通販サイトへと急成長。コロナショックで被害を受けた生産者の支援などにも精力的に取り組む Twitter:@aki_rina
取材・文/一本麻衣
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