「お母さんなんだから、頑張らなくていいよ」マミートラック真っ只中にいた私の転職体験記
仕事か、プライベートか。働き方を二者択一で考える時代はもう終わり。「仕事のやりがい」も「子育て」も。全部諦めないと決めた“仕事大好きママ”の「時短転職」体験記をお届けします!
はじめまして。再生可能エネルギー発電所の開発などを手掛けるスタートアップ企業で、時短社員として働き、ライターとしても活動している永見薫です。現在、3歳の息子を育てながら、本業と複業に取り組んでいます。
私は、自他共に認める仕事大好き人間。独身時代も結婚してからも、地道に仕事に勤しんできました。

なぜ仕事が好きかというと、端的に言えば自分の成長を感じられるから。
難しいことにチャレンジしたり、小さなことでも課題解決ができたりすると、やっぱりうれしい。
だから、子どもが生まれた後も「仕事を通して成長すること」を諦めたくありませんでした。
でも、「子どもとの時間」をないがしろにするような生活もしたくない。「子育ても仕事のやりがいも諦めたくない。どちらもバランスよく」というのが、私の理想でした。
でも、「どちらか一つしか手に入らない」と思ってしまう人は、多いのではないでしょうか?
私もかつては、時短勤務で転職なんてできるのかな、まして理想の働き方なんて手に入るんだろうか……と思っていた一人。
「仕事のやりがいも子育ても両方諦めない」
口にするのは簡単でも、実際にできるのか。転職前は不安でいっぱいでした。
結論、今の私は希望の会社に転職し、理想の働き方を実現できています。それはなぜか……?
この連載では、私が転職活動中に悩んだこと、躓いたこと、気づいたことや見聞きしたことなど、さまざまな体験を織り交ぜながら、時短ワーママが転職を成功させるポイントを5回に分けて紹介していきたいと思います。
今はまだ、時短勤務をしばらく続けたい

私がキャリアについて悩み始めたきっかけは、育休から職場復帰して半年が経った頃でした。
一つは、今後フルタイム勤務に戻るときのことをリアルに考え始めたことが大きかったように思います。
なぜなら前職では、時短勤務制度(6時間勤務)が使えるのは子どもが3歳までだったので、それ以降はフルタイム勤務に戻す必要があったのです。
前職では出社が原則だったのですが、通勤には片道1時間以上をかけていました。これがフルタイム勤務になると、子どもを保育園へ迎えに行く頃には延長保育の時間という状況。
「たった2時間」かもしれないけれど、その2時間が子どもにとってはどれだけの負担になるのか。まだ3歳に満たない当時の息子は、体調を崩す頻度が高く、2カ月に一度発熱を繰り返していました。
フルタイム勤務にすることで給与は増えても、延長保育にすると支出も増え、プラマイゼロに。むしろ、子どもも私も肉体的・精神的に疲弊する事を考えると、マイナス面の方が大きいのでは……。
そう考えると、このまま時短勤務をもうしばらく続けていたい、というのが私の希望でもありました。
「お母さんは無理しない方がいいよ」
フルタイム勤務に戻すより、もうしばらく時短勤務を続けたい……。
そう考えるようになった一方で、仕事に「物足りなさ」を感じるようになってきたのもこの頃でした。

復職後は時短勤務ということで、産休に入る前と比べてかなり負荷の少ない、誰とでも交代ができる業務を担当することに。最初は仕事と育児の両立が不慣れなこともあり、緩やかなペースに助けられていました。
ですが、両立生活に慣れてくると、「もっと働きたいのに」という気持ちがむくむくと湧いてきたのです。
これがマミートラックというやつか……。
はっとした私は、上司や人事とのキャリア面談をセッティング。自分の業務や家庭の状況についてシェアした上で、「もっと成長したいし頑張れる余裕があるので、仕事のウェイトをあげたい」ということと、「時短勤務制度をもう少し子どもの年齢が大きくなるまで利用できるようにできないか」と提案してみました。
でも、結果はNO。限られた時間の中で成果を出す努力をしたいと思っていることを伝え、何度も交渉を重ねましたが、その願いは叶いませんでした。
「お母さんは無理をしない方がいいでしょ? 時短勤務なのだから頑張らない方がいい」
そう言われて、まともに取り合ってもらえなかったのです。

彼らが私への「気遣い」から、そう言っていくれていることも分かりました。本当に「頑張らないこと」が私のためだと思ったのかもしれない。ただ、そう言われて私のモヤモヤは募っていくばかりでした。
もっと頑張りたいし、頑張れるのに、挑戦させてもらえない。仕事にモチベーションを見い出すことが難しくなり、「戦力外通告」を突きつけられたようでした。
私には現状維持しかできないのだろうか。あと何年したらこの状況を打破できるんだろう……。職場へ行くたびに、どんよりとした気持ちを引きずって過ごすようになっていました。
社外の人とつながるコミュニティーや勉強会への参加がキャリアの転機に
何とかこの状況を打開するために、私はオンラインのキャリアスクールや、ワーキングマザーを中心としたオンラインコミュニティーに参加してみることにしました。
このことが、転職に踏み切るきっかけに。
勉強会や情報交換の場に出入りするうちに、今や転職市場には時短勤務の女性を歓迎する求人が多く出てきていることや、ワーキングマザー専門の転職エージェントが誕生していることなどを知ることができました。

時短勤務のワーキングマザーを喜んで採用する企業なんてないだろう。そう思い込んでいた当時の私には、衝撃でした。そして、新たな活路を得た気がして、胸が高鳴ったのです。
とはいえ、実際のところ周りに時短勤務で転職した知人は皆無。本当にそんなことできるの…? と半信半疑な私もいました。
そこで、心のモヤモヤを晴らすべく、ワーキングマザーの転職市場について、まずは自分で調べてみることにしました。
時間を決めてまずは動き出してみる
インターネットで「ワーキングマザー 時短転職」と検索すると、ワーキングマザー専門の転職エージェントが検索一覧に複数並んでいました。
数年前では考えられなかったこの状況に、私はただただびっくり。また、総合転職サイトや、転職エージェントで「時短勤務」の求人を検索してみると、自分が思っていたよりも多くの求人がずらりと並びました。
教えてもらったことは本当だったんだ!
さっそく、とあるワーキングマザー専門の転職エージェントに登録し、まずはどんな求人があるのか、どんな市場動向なのかを知るため、エージェントの担当者と電話面談をしました。
そこでも分かったことは、「時短勤務歓迎の求人はすごく多いわけではないけれど、確かにある」ということでした。

もちろん業種や職種によって差があるのは事実ですが、今いる場所でただただ忍ぶような気持ちで頑張り続けるか、諦めて退職するかしか考えが浮かばなかった自分には、この時短勤務の転職市場が、一筋の光に見えたのです。
エージェントの担当者との電話面談を終えた時点で、自分がフルタイム勤務に戻さなくてはならないタイミングまで残り1年半になっていました。
1年半という限られた時間で、転職まで結び付けたい。一方で、できたら現職で諦めない道も見い出せたらそれはそれでうれしい。
揺れ動く気持ちを抱きながら、転職活動を始めてみることにしました。
…続く
※次回、9月下旬~10月上旬公開予定です

【著者プロフィール】
永見 薫
1982年生まれ、東京都在住の会社員兼ライター。3歳児のママ。不動産系企業を複数経て、2020年6月に時短勤務転職をして、再生可能エネルギーの事業会社へ。「暮らすこと」と「働くこと」が交じり合ったライフスタイルが理想。サスティナブルやまちづくり、働くことに興味があり、関心分野の取材やインタビュー記事を執筆中。◆note ◆Twitter
文/永見薫 編集/栗原千明(編集部)