年上部下に「注意したい」とき、新人マネージャーがやってはいけないたった一つのこと【管理職1年目の壁 突破法】
元アマゾン ジャパン管理職、『amazonのすごいマネジメント』(宝島社)著者の二人が、管理職1年目の女性たちの仕事の悩みに回答! アマゾン流のベストプラクティスを使い、「管理職一年目の壁」を乗り越えるヒント、マネジメントの仕事を楽しむ秘訣を提供していきます
管理職1年目の悩み
自分の課には、年上の部下が数人います。
社歴も、業務経験も、自分より豊富で、そんな相手に「課題点」や「改善してほしいこと」を伝えるのが難しく、相手のプライドを折らないか、私から指摘することでやる気を失わせないか、気にしてしまいます。
年上部下をやる気にさせ、仕事にコミットしてもらう方法はありますか?
(Dさん:管理職歴6カ月/27歳/営業系職種)

【回答者プロフィール】
太田理加さん
アマゾン ジャパンに入社後、約13年間、新規ビジネス立案・立ち上げを担当し、立ち上げたビジネスの事業責任者を歴任。新規ビジネスをつくるということは、そのビジネスを実行する組織を一からつくること。よって、採用・人材育成・組織づくりに尽力。リーダーシップにフォーカスした幹部育成にも力を入れ、チームでイノベーションを起こす。2020年3月にaLLHANz合同会社共同代表に就任
太田さんからの回答
相手の年齢で接し方・態度を変えていないか見直して
Dさんの悩み、とてもよく分かります。管理職になりたての時期は自分のマネジメントスタイル自体も模索している時期。経験豊富な年上メンバーをどのように扱ったらいいのか不安になりますよね。私自身も管理職になりたての頃、Dさんと同じように悩んだものです。
でも、結論から言うと、最初は接し方に戸惑っていたチームの年上部下は、最終的に私の「強い味方」になってくれました。
新人リーダーには足りないところがたくさんあるものですが、私の経験のなさや欠点を補いチームを強くしてくれたのが、年上部下だったと感じています。なので本当は、部下の年齢なんて「気にしないで」とDさんにも声を掛けたいところです。
でも、年上は敬うべきという考え方や、年功序列のカルチャーが根強い日本では、そうもいかないのも事実。年上の人に対して、ストレートに物事を伝えたり、仕事をお願いしたりすることを、つい遠慮してしまう人は、Dさんのみならず多いと思います。

ただ、一度問い直してみてほしいのが、仕事において「そもそも、部下を年上と年下として、分けて考える必要があるのかどうか」ということ。
もしDさんが、相手が年上だからやりづらいなぁ……と接し方を変えている場合、相手から見たらその姿はどう映るでしょうか? きっと相手も同じように、やりづらさを感じるはずです。
また、年下のメンバーから見ても「人によって接し方や仕事の采配の仕方が違うのは不自然だ」と思われるかもしれません。すると、Dさんがチームをまとめるのはますます難しくなってしまいます。
まずは、相手の年齢によって対応を変えていると思われるような言動、態度をとっていないか自分の行動を見直してみてください。
「Earn Trust」いいリーダーは相手が誰でも敬意を払う
アマゾンには、「Earn Trust(リーダーは注意深く耳を傾け、率直に話し、相手に対し敬意をもって接します)」という行動指針があります。
部下の年齢や性別などの属性にかかわらず、一人一人の相手に対して敬意を持って接すること。これが、マネージャーの姿勢として、最も大切だとされています。

また、部下のモチベーションを維持するためには、否定しないことも大事な要素。年上、年下に関わらず、その人の経験を人前で否定するような発言、態度はとらないように意識しましょう。
その上で、年上部下の豊富な経験をチームで最大限に生かす雰囲気づくりをするのは、Dさんの役割です。
例えば、ミーティングの場で、Dさん自身が年上部下に意見を求めてみるなど「頼る」姿勢を見せるといいですね。
彼らの豊富な経験や知識をDさんが引き出し、チーム全員とシェアするようにするのです。すると、若手のメンバーたちも、ベテランの彼らを頼りやすくなっていきます。
部下の改善点は、「答えを伝える」のではなく「自分で気づかせる」
では、年上部下に対して、その人の弱みや課題など「改善してほしいこと」を伝えなければいけないときはどうすればいいのか。
これも、対応は「年上だから」と考えるのではなく、相手が誰でも一緒。Dさんが「あなたの弱みはここだよね」と直接伝えるのではなく、本人が自分で気づき、言葉にできるようにサポートしてあげるのがベストです。
例えば、何かうまくいかなかったことがあったとします。それに対して、「何が起こったのですか?」「何が原因でこうなったとX Xさん自身は思いますか?」、そして、「どのように改善したら良いと思いますか?」と全て部下に考えてもらう。あなたが答えを伝えるのではなく、相手に質問していくのです。

これは、いわゆるコーチングの手法。この方法でコミュニケーションをとる方が、「ここが弱点ですよね」とズバリ言われるよりも、自分で考えて言葉にしていくので、腹落ちしやすいと思いませんか?
“やらされ感”を排除すると、部下のモチベーションが上げる
また、仕事の任せ方も、年下・年上で違いをつくることはおすすめできません。
誰でも、言われたことをただ作業としてやるだけでは、「やらされている」と感じてしまいますし、モチベーションも上がりません。チームメンバー一人一人に主体的に仕事をしてもらうには、任せることが必要なのです。
ただ、ざっくり丸投げはNG。まず、Dさんが持っている目標や会社のゴール、もしくは今期の重点施策など、会社としてやらなければならないことを情報共有してください。そして、それに貢献できるような目標と、やるべきことを部下自身で決めてもらいます。
その場合、いつまでに何をやるのか、なども細かく決めてもらうといいですよ。それをDさんと部下が一緒にレビューして、合意をとって実際に行動してもらうのです。
自分で決めたことなら「やらされ感」はだいぶ減りますし、当事者意識を持つこともできるので、モチベーションも向上していくでしょう。そして、成果が合った場合には、「さすが、X Xさん、こういう素晴らしい実績をあげてくれました」と評価し、かつチームに共有しましょう。
自分にはこういう役割があって、業務をうまく行う事ができ、成果がでればちゃんと評価をしてもらえる……そう感じられると、自分はこの会社や部署に必要な人間なのだと思えて、仕事に対する意欲が上がっていきます。

繰り返しになりますが、そういうモチベーションアップのサイクルは、年齢に関係はありませんよね。 今後ますます、実力主義で社員を評価する会社が増えれば、Dさんのように年上部下をマネジメントする人は増えていくはず。そんな中で「いいマネージャー」を目指したい人は、ぜひ「Earn Trust」を意識してみてください。
そして、あなたの敬意と信頼の下でメンバー全員が当事者意識を持って働けるようになると、Dさんに対する敬意も自然と生まれていくはずです。You can make it!
書籍紹介

「なかなかチームで結果を出せない」「部下が無難な数値目標ばかり出してくる」など、管理職の方々のチーム運営に関する悩みを、ジェフ・ベゾスが生み出したアマゾン流マネジメントで一挙解決! 黎明期のアマゾン ジャパンに入社し、長らく新規ビジネスの立案やブランディングを担当し、現在は起業家として活躍する太田理加、小西みさをによるアマゾン流マネジメントの極意を紹介。
『「管理職1年目の壁」突破法』の過去記事一覧はこちら
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