【体験談】20代でフリーランスになるには? 会社員時代に経験しておきたい三つのこと


「これといった大きなキッカケはなくて。20代最後に『新しい働き方にチャレンジしたい』と思ってフリーランスになりました」と話すのは、29歳の松原佳代さん。
今年2月に独立したばかりで、現在は人事系のフリーランスとしてベンチャー企業を中心に複数社で採用業務などの仕事を担当しています。
実は今、20代でフリーランスにチャレンジする女性が増えているのをご存じでしょうか。
私が共同代表を務めるWarisではフリーランスとして働きたい女性と企業との仕事のマッチングサービスを展開していますが、直近の登録者のおよそ30%が20代で、特に2020年に入ってからの伸びが顕著です。

先ほどの松原さんが独立した背景には、コロナ禍の影響がありました。
「フリーランスになる前はベンチャー企業で人事担当の社員として働いていました。コロナでリモートワークやフルフレックスなどの新しい働き方に触れて、会社員でいることや働き方に対しての考え方が変わりました。
20代最後に自分自身の今までの経験やスキルがどこまで通用するのかチャレンジしたいという思いもあり独立しました」(松原さん)
きっかけは「オランダ訪問」。「辞めます」と会社に伝えて
「フリーランスになったのはオランダに行ったことがきっかけです」と話すのは、同じく29歳でフリーランスとして働く神原沙耶さん。
「オランダの教育制度に興味があって、知人がオランダの学校を視察に行くというので、一緒についていったんです。
そうしたら本当に素晴らしくて……人と人とのつながりが理想的で、例えば、先生と生徒の関係もとてもフラットで感動してしまって。『ここに住みたい』と思って、当時勤めていた会社に『辞めます』って言っちゃいました」(神原さん)

独立したのは去年の夏。オランダは個人事業主(フリーランス)であれば、ビザが取りやすいことも背景にはあったと言います。
「『会社を辞める』といろいろな人に話していると、ありがたいことに複数の方からお仕事を紹介していただいて……今はプロジェクト型の仕事を複数受けながら働いています。
新規事業の立ち上げサポートを軸に営業企画、人材育成、コーチングなどの仕事をしているほか、自身の事業も展開していて、オランダでの気づきを発展させて夫婦関係の対話を深めるサービスをおこなっています」(神原さん)
フリーランスとは、特定の企業や団体、組織に専従しない独立した形態で、自身の専門知識やスキルを提供して対価を得る人のこと。内閣官房の調査によれば日本国内に462万人いるとされ、これは日本の労働力人口の6.7%を占めるまでになってきています(※1)。
完全に組織から独立してフリーランスをしている人(=独立系フリーランス)もいますし、会社員をしながら「副業」としてフリーランスをしている人(=副業系フリーランス)もいます。
ここ数年、浸透してきた「働き方改革」によって柔軟で多様な働き方が可能になり、副業・兼業を容認する企業が半数を超えたという調査もあるほどです。
読者の皆さんの中にも、20代や30代前半で「フリーランスになりたい」と思っている人が少なからずいらっしゃるのではないでしょうか?
最近の「20代フリーランス」の方を見ていて思うのは、フリーランスという選択肢が一般的になってきた時代ならではの軽やかな一歩の踏み出し方と、それを裏打ちしている専門性やスキルの豊富さです。
では、「20代でフリーランスになる」ためには実際、会社員時代にどんなことを経験しておくといいのでしょうか? 「20代フリーランス」の皆さんの話を聞いていて感じる三つのポイントをお伝えします。
ポイント1:仕事の「好き」「嫌い」に気づいて深める&伝える

フリーランスは「自身の専門知識やスキルを提供して対価を得る人」なので、他者が仕事をこの人に任せたいと思うくらいの知識やスキルがあることが前提となります。
20代フリーランスの皆さんとお話ししていると、20代という比較的キャリアの初期でありながら、しっかりと専門的な経験を積んでいることが特徴的。
例えば、前述の松原さんでしたら大手人材派遣会社での営業職を経た後、人事職へキャリアチェンジし中小企業・ベンチャー・スタートアップの3社を経験されています。
「人事」「営業」などの特定職種で経験を深めるのも方法ですし、横方向で経験を広げていく方法もあります。
前述の神原さんは、人材サービス会社で広告営業、新卒採用支援を経験した後、営業企画・事業企画、組織開発・人材育成等における役員直下のプロジェクトに従事。
経験領域としては広いですが、やってこられたことが現在のフリーランスの仕事につながっています。
「実は入社2年目に病気をしまして、やむをえず営業から営業企画に異動になったんです。同期はみんな営業の仕事で売上に貢献しているなかで、『早く成長しなきゃ』という思いが強くなりました。そこからすべてが変わりました。
苦手なことをできるようにするなんて時間がもったいない。できることで人に貢献できるようにしたいと思って。人や組織に関連するもの以外の役割はすべて外してもらいました。
やりたいことを叫ぶのも大事だけど、『私はこれはできないです/やらないです』ってノーを言えると、こんなにも自分らしくいられるんだ……と感じました」(神原さん)
20代のうちに「これが好き/得意」と思える専門性にたどりつけるように、意識的に周囲に希望を伝えることも大切。それと同時に、苦手なことは苦手と周囲に伝えることも経験を積んでいく上では重要ですね。
ポイント2:積極的にプロジェクトの推進経験を積む

フリーランスにはプロとして自律的に業務を推進することが求められます。クライアントが手とり足とり仕事について丁寧に指導してくれるわけではないからです。
専門的な知識・スキルがあるのは大前提。その上で「この仕事をお任せします」という働き方になります。
また、キャリアの初期においては、上司や先輩の指示を受けながら受動的に業務を推進していくことが一般的ですが、20代でフリーランスデビューすることを考えると、早い段階から自分でプロジェクトを推進し、巻き込む経験を積んでおきたいところです。
クライアントは会社ごとに異なるカラーを持っています。多様なクライアントのニーズを汲み取り、巻き込み、任された仕事をやり切る力が求められます。
会社員時代にリーダーやマネジャーなどの役職にチャレンジできる機会があるなら、ぜひ経験してほしいですし、そうした具体的な「肩書」でなくても、全社横断的なプロジェクトに積極的に手を挙げるのもいいですね。
先ほどご紹介した神原さんは会社員時代にNPO法人で採用認知獲得のためのイベント企画や運営のプロボノ(ボランティア)をしていたそうです。
こうした、自身が所属する組織を越えて、経験と人的ネットワークを広めるのもフリーランス経験につながっていきます。
ポイント3:「まずやってみる」を大切に

「悩んでいても何も解決しないし、考えの転換が大事だなと思っています」とは前述の松原さん。
自分の興味・関心に素直に従って行動してみて、失敗しても周囲を責めるでもなく自身を責めるでもなく、フラットにその事実を受け入れて、次の行動につなげていく。そんな行動の積み重ねが自然とキャリアをつくっていくんですね。
いかがでしょうか? 人生100年時代、フリーランスや副業は決して「特別な人の特別な働き方」ではなくなってきています。特に20代のうちからフリーランスに挑戦したい人たちにとって参考になればうれしいです。
(※1)内閣官房「フリーランス実態調査結果」より

【この記事を書いた人】
Waris共同代表・国家資格キャリアコンサルタント
田中美和
大学卒業後、2001年に日経ホーム出版社(現日経BP社)入社。編集記者として働く女性向け情報誌『日経ウーマン』を担当。フリーランスのライター・キャリアカウンセラーとしての活動を経て2013年多様な生き方・働き方を実現する人材エージェントWarisを共同創業。著書に『普通の会社員がフリーランスで稼ぐ』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。一般社団法人「プロフェッショナル&パラレルキャリア フリーランス協会」理事
『ニューノーマル時代のLive Your Life』の過去記事一覧はこちら
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