16 DEC/2021

初めての個人開発。やってみて分かった楽しさ・難しさ「女性エンジニアが自信持てる世界つくりたい」

個人開発 だむは

個人開発は、スキルの高い人がやるものでしょ? 「作ってみたいもの」はあるけれど、エンジニアとしてのキャリアが浅い自分に個人開発なんて無理なのでは……?

やりたいことに一歩踏み出せずにいる女性エンジニアに知ってほしいのが、SlerからWeb系企業への転職を経て、現在はフリーのサーバーサイドエンジニアとしてテック業界に特化した女性向けキャリアスキルシェアサービス『sister』を運営しているだむはさん(@damuha_)だ。

だむはさんが開発した『sister』は、いまだ女性が少ないIT・Web業界で、技術やキャリアのことを安心して相談できる“シスター”(仲間)を見つけられるサービス。

sister

このサービスの開発に取り組み始めた当初は、「サーバーサイドエンジニアとしてのキャリアはまだ浅かった」とだむはさんは言う。そんな中、彼女が個人開発に踏み出せた理由は何だったのか。

2021年11月17日に開催された女性エンジニアの学びと活躍を応援するカンファレンス『Women Developers Summit』に登壇しただむはさんの講演内容を一部ご紹介しよう。

だむは

だむはさん

フリーランスのサーバーサイドエンジニア 。韓国生まれ日本育ち。 新卒でSIerに入社した後、Web業界を経て2021年11月に独立。テック業界に特化した女性向けキャリアスキルシェアサービス『sister』を個人で開発・運営。TECHPLAY女子部のコミュニティオーガナイザーとしてコミュニティー運営にも携わる

「自分が欲しい・今までにないサービス」を作りたい

だむはさんが『sister』を開発しようと考えたきっかけは、エンジニアとして自分が感じてきた“キャリア不安”だった。

エンジニアとして長く働き続けている女性のロールモデルが少なく、技術のこと、キャリアのことを安心して相談できる相手がいなかったのだという。

だむはさん

男性メンターに相談できることはあるけれど、妊娠・出産など女性特有のライフステージの変化について話をするのはやっぱり難しい。

安心して相談できる女性のメンターが欲しい」と思っているのは、自分だけではないのではないか、と思いました

自分が「欲しい」と思えるサービスを作ってみたい。それに加えて、世の中にまだないサービスを作れるかもしれない。だむはさんはワクワクする気持ちに突き動かされ、『sister』の設計に取り掛かった。

個人開発 だむは

2020年9月から開発を始め、約3カ月経ったところでベータ版をリリース。すると、想定していた以上に、ユーザーが増えた。

だむはさん

ベータ版をリリースしてみて、これだけ求められているサービスだったのかと確信しました。

それと同時に、技術的に未熟な時期に作っていたので、このままユーザーが増え続けてもUI/UXがよくなかったり、ページの読み込み速度が遅かったりすることで、ユーザーが離脱してしまうのではないか。

そう思って、ベータ版を一度クローズして再度リリースしようと決めました。

設計を見直し、ユーザーに快適に使ってもらえるサービスへと改良して2021年5月に正式版の『sister』をリリース。

『sister』を必要とする人に安心して使ってもらえるサービスにするため、だむはさんは「ジェンダーバイアス」には細心の注意を払った。

個人開発 だむは
だむはさん

『sister』はユーザーが仕事やキャリアの相談相手となるメンターと出会えるサービスですが、メンターという言葉には指導する人というイメージがあるため、挑戦するのにハードルの高さを感じてしまう女性も多いのではないでしょうか。

そこで、メンターになってくれる女性と相談者となる女性ユーザー、双方の心理的ハードルを下げるため、メンターのことをあえてシスターと呼ぶことにしました。

また、サイトデザインにおいても、「女性向けだからピンク系がいいよね」っていう開発者のバイアスをできる限り入れないようにしていて。現在のような、中性的な配色を選びました。

「シスターが増えない」サービス開始後にぶつかった壁

順調にユーザー数を伸ばした『sister』だったが、サービスを開始してすぐ、ある障壁にぶつかった。それは、シスターとして登録してくれる女性が増えなかったことだ。

だむはさん

シスターに相談したいユーザーさんは増えているのに、相談に応じる側のシスターが全然増えていかなかったんですよ。

これではサービスが持たないので、自分で知人に声を掛けたりして、シスターを増やす施策を地道に行っていくことにしました。

この時、だむはさんは「女性エンジニアがジェンダーバイアスの影響をいかに受けているのか」を痛感したと明かす。

だむはさん

私から見て素晴らしい実績がある人たちに声を掛けても、「いやいや私が人の相談に応じるなんて……」「私はちょっと自信がないな」と仰ることが多かったんです。

女性エンジニアは、自分自身を過小評価し過ぎではないか。なぜそんなふうになってしまうのか……。

IT・Web業界のジェンダーギャップが女性に与える影響について、いろいろと考えさせられました。

そこでだむはさんは、シスターをやってみたい人向けのイベント開催や、自身がオーガナイザーを務めるエンジニア女性向けコミュニティーで技術LTの場を設けた。

だむはさん

やみくもにユーザーを増やそうとするより、まずはシスター側のフォローが必要。「あなただからお願いしたい」「あなたならできる」と根気強くお話しして、自信をつけてもらい、シスターにチャレンジしてもらうようにしました。

その後は奮闘の甲斐もあり、少しずつシスターの登録者数は伸びていったという。

個人開発は「やりたいこと重視」が継続のカギ

初めての個人開発。一人でも多くのユーザーにサービスを届けるため、試行錯誤の末、機能追加やデザイン変更を繰り返した。

だむはさん

今感じているのは、個人開発といっても「すべて一人でやるのは限界がある」ということ。特に、サービス運営を継続するには根気が必要。正解がないなかでトライアルアンドエラーを繰り返す必要があります。

そこで一人で悩まずに、相談できる人にどんどん頼るっていうのも大事なんじゃないかなと思います。私自身も積極的サポートしてくれる人を見つけに行って、助けてもらいました。

個人開発といっても、困ったときには誰かの手を借りることも必要だと学びました。

また、大変なことも多い個人開発に挫折せずに取り組んでこられたのは、「自分が本当に欲しいと思ったサービスを作っているからだと思う」とだむはさん。

『sister』の価値を自分自身が一番信じているからこそやり切ることができるのではないか、と話す。

だむはさんは今後、『sister』の開発・運営を通して感じたIT・Web業界のジェンダーバイアスを取り払い、ジェンダーギャップ解消のためにできることを続けていきたいという。

だむはさん

自分が積極的に発信を続けることで、女性エンジニアが自分に自信を持つためのきっかけをつくりたい。『sister』の開発を経験したことで、私の話も説得力も増すのではないかと感じています。

どんなエンジニアがサービスを開発するかで、見つける課題も、仕上がりも違う。開発者のダイバーシティーが広がることで、生み出されるサービスもよりいっそう、あらゆる人のニーズを解消するものになっていくはずだ。

だむはさん

女性エンジニアの皆さんに、ぜひ「自分が作りたいもの」を作ってみてほしいと思います。難しく考え過ぎず、小さいサービスでもいいので、まずはやってみてください。

新しい技術を使わなくてもいいし、一人でできない部分は人に頼ればいいんですから。

自分のやりたいことに一歩踏み出してみることが、ひょっとすると、自分と同じような課題を抱える仲間の一歩を後押しすることにつながっている。だむはさんの経験が、そう教えてくれた。

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文/安心院 彩