大企業で安定は得られない? 長く働き続けたい女性にこそスタートアップ転職を勧める三つの理由【田中美和】

「2022年はスタートアップ創出元年」ーー5年で起業を10倍にするとした岸田政権の政策が注目を集めています。
「スタートアップ」とは、先進的な技術やアイデアを強みに、ゼロから市場やビジネスモデル創出に挑戦する急成長をする組織を指します(※1)。
スタートアップ情報プラットフォーム『INITIAL』の調査によれば、2021年日本国内スタートアップの資金調達額は、前年比46%増の7801億円。実態としては1兆円に迫る勢いで、一社あたりの資金調達の大型化も進んでいます(※2)。

そんな中、今なお「スタートアップで働く」という選択肢について、残業が多かったり、経営が安定していなかったりと、不安定なイメージを持っている人も多いのではないでしょうか。
しかし、スタートアップへの転職や再就職は、長く働き続けたい女性にとって魅力的な選択肢になると私は考えています。その理由を三つのポイントで解説していきたいと思います。
理由1:最先端の技術や経営者の考え方を吸収し、成長できる!
一点目は、既存の企業にはない新しい技術を世の中へ発信しつつ、経営者のそばで会社をつくる経験ができるところです。
例えば、大学発のスタートアップの数が大きく増えていることはご存じでしょうか? 経済産業省が発表した2021年度大学発ベンチャー企業数は3306社にものぼります。2000年度には420社でしたから、この20年でなんと約2800社も増えているのです(※3)。

大学発ベンチャーとは、大学での研究成果を社会に生かすべく事業化させた企業のことで、IT系やバイオ・ヘルスケア系・ものづくり・環境エネルギー系など最先端の技術を活用した企業が中心です。日本においては東京大学発ベンチャーが329社(2021年度)で飛び抜けて多く、2位の京都大学に100社近く差をつけています。
最先端の技術に触れながらキャリアを深められることは、スタートアップで働く利点のひとつです。
また、社員数が数人~十数人程度など極めて組織が小さい段階から参画できる可能性も。
その場合、経営者の近くで働くことが出来るので、経営視点で物事をとらえられる力の醸成、そしてビジネスパーソンとして視野を広げることにつながります。
理由2:高速キャリアアップが可能!
何よりキャリアアップできる環境が整っている点も魅力です。
経営戦略の立案や制度づくり、業務フロー設計、システム導入、人材育成プラン策定など会社の基盤づくりを経験することができる上、会社の成長フェーズに合わせて業務の幅を広げることも可能です。
最初はバックオフィス(管理部門)の一人のスタッフとして入社した人が、組織が成長するにつれてマネジャーや担当役員に抜てきされるケースも。幅広く業務を担当していく中で、専門性を高めていきたい分野を絞ることもできますし、積極的に手をあげることで、新しい業務にチャレンジすることも可能です。
大手企業のように業務が縦割りされた状況では、他部門の仕事に柔軟に挑戦することはできないケースが多いものです。配属されて少なくとも3〜5年は同じ部門で仕事をし、挑戦したい仕事があれば異動願などを出し会社の決定を待たなければならないことが一般的です。
組織が小さいからこそ、大手企業で一つの業務を経験する間に、スタートアップでは自身の興味や関心にそって多くの業務に挑戦することができます。

株式会社Waris作成資料より
理由3:実はスタートアップほど仕事と家庭の両立がしやすい!
「今の会社で出産後も働き続けられるかわからない…」
「子どもを産んだらキャリアはあきらめないといけないの…?」
ーーいまだに20代30代の女性たちからこうした悩みや不安の声を聞く機会が少なくありません。でも実はスタートアップほど「仕事と家庭の両立がしやすい」のを知っていますか?
その理由のひとつに、組織が小さいからこそ「週3日からOK」「週5日・時短勤務OK」など柔軟な働き方を個別に相談しやすい点が挙げられます。スタートアップはIT関連の企業が多いこともあり、リモートワークOKの職場もめずらしくありません。
加えて、「成果主義」で評価する企業が数多くあるので、「常駐」「フルタイム勤務」であることにこだわらない傾向が見られます。育児や介護が理由で働く時間・場所に制約がある人にとっても能力を発揮しやすく、正当な評価を得やすいといえます。
また、スタートアップの経営者は30代40代の子育て世代が中心。自身の両親が共働きであったり、自身のパートナーも働いていたり……家事分担や子育てしながら働いている方も多いため、仕事と家庭の両立に理解が深いのも特徴です。
スタートアップで再就職を果たす女性たち
今回は、スタートアップに就職することのメリットを紹介しました。
私が共同代表を務めるWarisでは、育児・介護などで離職した女性たちの再就職を支援する『ワークアゲイン』という取り組みを行っています。これまで300名以上の方々の再就職を実現してきましたが、その就職先の多くがスタートアップです。

またWarisでは、東大発のスタートアップ支援をおこなう東大IPCとともに、大学関連スタートアップでの就業に役立つ実務が学べる『東大IPCキャリアスクール』を、8月から開講予定です。
このスクールは今年初めにも第1期として開講したのですが、その参加者の8割以上が大学関連スタートアップに就業を果たしています。
今後のキャリアを考えるうえで「スタートアップで働くこと」を選択肢の一つとして考えてみてはいかがでしょうか?
(※1)東京大学協創プラットフォーム開発株式会社ホームページより
(※2)プレスリリース「INITIAL、『Japan Startup Finance 2021』を公開。国内スタートアップ資金調達額は1兆円市場へ」より
(※3)経済産業省「令和3年度 ⼤学発ベンチャー実態等調査 調査結果概要」より

【この記事を書いた人】
Waris共同代表・国家資格キャリアコンサルタント
田中美和
大学卒業後、2001年に日経ホーム出版社(現日経BP社)入社。編集記者として働く女性向け情報誌『日経ウーマン』を担当。フリーランスのライター・キャリアカウンセラーとしての活動を経て2013年多様な生き方・働き方を実現する人材エージェントWarisを共同創業。著書に『普通の会社員がフリーランスで稼ぐ』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。一般社団法人「プロフェッショナル&パラレルキャリア フリーランス協会」理事
『ニューノーマル時代のLive Your Life』の過去記事一覧はこちら
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