「転職回数が多い人」の何を人事はチェックする? 社数よりも重視する二つのポイント

大きな声では言えない本音、ぶっちゃけます!
採用担当者の覆面ガチトーク

表立って聞きにくい「これってどうなの?」という転職にまつわる女性たちの疑問を中途採用担当者に直撃!人事のリアルな見解とは……?

覆面座談会

転職が当たり前になったとはいえ、転職回数の多さはマイナス評価になるイメージが強いもの。

実際のところ、転職回数は何回以上で「多い」のか。そして、転職を重ねていることは企業からネガティブに見られてしまうのだろうか。

真相を3名の中途採用担当者に聞いてみた。

<お話を聞いた中途採用担当者>
●IT系メガベンチャーの採用担当者・加賀さん(仮名)
●大手アパレル企業の採用担当者・中野さん(仮名)
●スタートアップの採用担当者・石田さん(仮名)

「転職3回以上」は多いけど、それより気になるのは……

編集部

転職者が30歳の場合、何回以上転職していると「多い」と感じますか?

加賀さん

大卒だとしたら、社会人歴は約7年。その前提だと、3回以上は多いと思います。

中野さん

同感ですね。2回は理解できるけど、3回以上は多いかな

石田さん

私も同じです。

編集部

そうなると、転職回数3回以上の大卒の転職者から応募があった場合、注意深く選考をするのでしょうか?

加賀さん

1社を2〜3年で辞めていることが多いので、「同じ会社に3年以上勤めた経験がない人」という見方はしますね。そういう意味では要注意。

石田さん

1社に勤め上げる時代じゃないから転職を重ねること自体をネガティブには思わないですけど、どのようなキャリアの積み重ね方をしているかは重視しますね。

編集部

具体的にはどのような点を見るのでしょうか?

石田さん

私の場合、書類選考の段階では「1社にどのくらい在籍していたのか」を見ますね。

在籍期間1年未満が何社か続いていたら、書類で落としちゃうことが多いかな。「短期間で転職を繰り返す=組織になじめない人」と捉えてしまうので。

編集部

短い在籍期間が続くと「長く続かない人なのかも」と人事は判断するのですね。

石田さん

本来、入社1年たった頃にようやく自分の給与分が稼げるようになるくらいだと思うんですよ。

当初からめちゃくちゃ成果を出せる人は別だけど、1年前後で辞められちゃうと、正直企業にとっては赤字です。

「3年の在籍期間」を重視する理由

編集部

在籍期間が短いと感じるのは、どのくらいの期間ですか?

中野さん

1年未満は短いですね。

ハラスメントや過酷な労働環境など、辞めざるを得ない環境だったのか、あるいは本人にも何か要因があるのか、注意して聞きます。

加賀さん

3社経験があったとして、全部2年前後で辞めていると「なぜ?」と疑問がよぎりますし、1年未満が続いていると危険人物かもしれないと思っちゃうな。

中野さん

2年ごとに転職をしている人は、何かしら意図があることが多いように感じています。

だからキャリアの考え方の軸や転職の目的を確認した上で採用することはありますね。

とはいえ、2年ごとに転職しているような方は「飽きっぽいのかな」と少し警戒はします。

石田さん

退職理由にもよりますけど、2年以上在籍していればまぁいいかな。本当は3年以上ほしいですけど。

加賀さん

1社でも3年以上在籍した会社があれば少し安心しますよね。1社での経験は2〜3年は欲しいのが正直なところです

編集部

3年が一つのポイントなのですね。理由はあるのでしょうか?

加賀さん

「踏ん張れる人なんじゃないか」と思えるからです。

慣れなかったりしんどかったりする期間を乗り越えて、何かしら違う業務やチャレンジの機会が与えられるのが2〜3年目。

その間にチームや上司が変わるなど環境の変化もあるでしょうし、やりたくないことをやったり人間関係で悩んだりといったこともあると思います。

そういう状況を踏ん張って会社に向き合った人だと考えると、信頼できるかなと。

石田さん

3年いれば、何かしら組織にもまれますもんね。

加賀さん

あとは「会社にちゃんと貢献してくれそうか」と思えるかどうかもポイントです。

1〜2年で辞める人の多くは、「この仕事がしたいから入社したけど、できないから転職する」といった自分の都合で転職する傾向にあるように思います。

それがダメなわけではないですが、そういう転職を何回も繰り返していると「会社に貢献するよりも自分のキャリアに矢印が向いている人なのかも」とは思いますね。

それはつまり「本人の望む環境を与え続けなければすぐに辞める人」なので、その環境をうちの会社で用意できるんだっけ? という判断が入ります。

石田さん

「当初聞いていた仕事内容と違った」「途中から役割が変わった」といった転職理由はよく聞きますし、置かれた環境にもよるので一概には言えないですけど、「もうちょっと頑張ったら?」と思うことは正直多いです。

特にスタートアップは事業の状況によって仕事内容や役割が変わるのが当たり前。

それが転職理由な時点でアウトですね。「キャリアを大事にするのはいいけれど、それを環境に求めるのね」と思っちゃう。

知りたいのはキャリアのストーリー性

加賀さん

私は転職回数も在籍期間もそこまで気にしませんが、「どういう理由で転職を重ねてきたのか」は重視します。

極端な話、1年ちょっとで転職をしていたとしても、流れが見えれば理解はできるんですよ。

編集部

流れですか?

加賀さん

例えば、最初に販売スタッフから事務職に転身して2年働き、仕事の難易度を上げるために専門スキルが必要とされる事務職に転職して2年続けて……というのは、「こういうキャリアを目指して転職を重ねたんだな」と意図が見える。

一方、販売員から事務職にキャリアチェンジし、再び販売員に戻っていれば、「この人は販売の仕事がしたいんだな」と捉えるか、もしくは「軸がないのかも」と考えます。

編集部

転々としていたとしても、そこにストーリー性が感じられることが重要なんですね。

中野さん

年齢も影響しますね。例えば新卒入社した会社を1年未満で辞めるのは理解ができます。

職場が合わなかったり、第二新卒枠で転職できるうちに辞めたりといったケースも多いですし、初めての就職ですから仕方がないとも思えます。

一方、ある程度キャリアを積んだ20代後半以降に、職場の人間関係を理由に1年未満で退職している人は心配です。「これまでの経験もあるんだから、もっと自分でできることがあったのでは?」と思っちゃう。

編集部

キャリアを重ねるにつれて、「仕方がない」と思えることがどんどん減っていくと。

中野さん

特に子育て中の女性に多いのが、「職場の子育て環境がよくなかった」という退職理由。

本当に環境が悪いケースもありますけど、自分で変えられることはあるでしょうし、本人のコミュニケーション不足による問題もあったのでは思ってしまいます。

転職回数が多い理由、面接でどう伝えればいい?

編集部

短い期間での転職を繰り返してしまった場合、どう伝えるのがいいでしょうか。本人もマイナス評価だと理解している分、伝え方が難しいなと思います。

加賀さん

自分の軸を意識しながら経歴を見直し、ストーリー性を考えることでしょうか。

こういう業務がしたくてこんな行動をしたけど、かなえられなかった」と、うそのない範囲で積み重ねが感じられるストーリーに寄せていくイメージです。

石田さん

前提として、他責性がないことが重要ですね。自分の経歴を客観的に見て、「自分にも何かしら原因があった」ことをまず認める。

その上で、いろいろな環境で経験を積んだことで何が身に付き、それを次の会社でどう生かしたいのか。積み重ねとストーリーが伝えられれば、評価が覆る可能性はあるかもしれません。

中野さん

「やれることをやってきたのか」は知りたいですね。面接でも転職理由となる状況に対して「どういうアクションを取りましたか?」というのはストレートに聞きます。

しかるべき行動が取れなかったのであれば、「振り返ってこうすればよかった」を伝えてもらえるといいかな。

石田さん

ただ、採用するかどうかはポジションによります。

大量採用の一人だったら可能性はありますが、重要な役割を担うポジションだとかなり厳しいでしょうね。

編集部

これまでの転職の仕方がよくなかった自覚があり、「これからは心を入れ替えて頑張ろう」と思っている場合、率直に伝えた方がいいでしょうか。

中野さん

自分が至らなかった認識があるのであれば、率直に話してもらえるとありがたいですね。

変に隠されると裏がありそうだなとこちらも警戒しますし。

石田さん

変にごまかすよりは開き直った方が好感は持てます。

「私はこういう経歴なのでネガティブに思われるのは分かっています」という前提で話してくれた方がこちらも質問がしやすいです。

編集部

いずれにせよネガティブな評価をされやすいのであれば、いっそのこと開き直ってオープンに話した方が逆転の可能性が出てくる感じでしょうか?

加賀さん

そうですね。ただ、オープンにしすぎると他責になってしまいそうな気がするので、そこは注意した方がいいかな。

環境要因もあるでしょうけど、実績が出せなかったり、会社に自分の考えを正しく伝えられなかったりと、自分の至らなかった点を伝えた上で、それをどう改善したいかまで教えてほしいです。

編集部

原因を分析して「こういう状態だったら大丈夫です」を説明できることが重要なのですね。

中野さん

私は「どういう条件がそろえば長く働けるのか」を聞くことが多いです。

転職の要因となっている要素が何で、どんな職場環境や仕事内容であれば続けられるのかが知りたいですね。

編集部

長く働ける会社のイメージを転職者がしっかり持っていれば、その環境があるかどうか、面接の場ですり合わせもできそうです。

ちなみに候補者が本当に改心しているのか、それとも改心した風を装っているのか、なんとなく分かるものですか……?

加賀さん

「今1社目に戻ったとして、どういう仕事をしますか?」「どうすれば会社に貢献できたと思いますか?」など、質問を重ねて深堀りすると思います。

そこで「今の自分だったらこうしたい」と言える人であれば、ちゃんと改心してると信じたくなります。逆に「でも」「やっぱり」といった言葉が出てくると、結局他責にしたままだなと思う。

石田さん

「あの時はできなかったけど、こういうふうに仕事ができていたら辞める選択はしなかったかもしれない」など、過去を振り返って反省し、年月の経過とともに成長していることを示せると「ちゃんと考えてはいそうだな」と、安心材料にはなると思います。

企画・取材・文・編集/天野夏海