09 DEC/2022

4回面接に落ちるもGoogleに転職。岩尾エマはるかさんに学ぶ「何歳からでも始められる」好きをキャリアにつなげる方法

Google 岩尾エマはるかさん
日々の業務をこなしながら、「自分の好きなことを仕事にできたらいいのに」と思うことはないだろうか。

でも、「好きなことを仕事にする」方法が分からなかったり、忙しい毎日の中で今後のキャリアについて考えること自体後回しにしてしまっていたり、具体的なアクションにはつなげられていないという人も多いかもしれない。

そんな女性たちに知ってほしいのが、Googleで活躍中の岩尾エマはるかさんだ。

岩尾エマはるかさん

Google
デベロッパーリレーションズ デベロッパーアドボケイト
岩尾エマはるかさん

2015 年に Google に入社。現在はシアトルオフィスにて、 Google Cloud のデベロッパーアドボケイトとして、クラウド技術の導入・活用推進に取り組む。2022年に円周率100兆桁をクラウド上で計算し、世界記録を更新。趣味はゲームと旅行
Twitter

幼いころから機械いじりが大好きだった岩尾さん。たまたま参加したイベントでクラウドの革新性に魅せられ、現在はGoogle Cloudのデベロッパーアドボケイトとしてクラウド技術の活用推進に取り組んでいる。

とはいえ、これまで順風満帆に好きなことをキャリアにつなげてきたわけではない。「Googleの採用面接は4回落ちたし、たくさん失敗もしてきた」と明かす岩尾さん。「好き」を「強み」に変えて、自分らしく働けるようになった転機は何だったのだろうか。

2022年11月2日に開催された女性エンジニアの学びと活躍を応援するカンファレンス『Women Developers Summit2022』のトークセッション「好きなことをキャリアにつなげる」で語られた岩尾さんの経験談を紹介したい。

偶然参加した海外のカンファレンスでクラウドの魅力を発見

小さい時から機械が大好きでした。実家にあったタイプライターを触って指を挟んだり、洗濯機に手を突っ込んで巻き取られたり(笑)

規則正しく動くモノに興味があったんだと思います。11歳の頃にプログラミングに出会い、楽しさに衝撃を受けました。

ですが数学が苦手だったこともあり、大学は文系に進みました。それでもコンピューターへの情熱は消えず、担当教授から「そんなに好きなら情報系に行ったら?」と言われるほど。

岩尾エマはるかさん

そこで大学2年生の時に情報系の学部に編入し、コンピューターサイエンスの修士号まで取得しました。

いまはGoogleで働いていますが、現在のキャリアにつながった転機は10年前、ラスベガスでクラウドベンダーのカンファレンスに参加したことです。

岩尾エマはるかさん

当時は、Web系の企業でモバイルゲームのインフラエンジニアをしていました。

ラスベガスに招待されていたのは前職時代のCTOだったのですが、「自分は行けないから、よかったら行く?」と声を掛けてもらったんです。それが私にとって初めての海外出張でした。

イベントの規模や演出にも驚きましたが、何より衝撃だったのはクラウドをこんなにも多くの人が楽しそうに使っているという事実でした。

今後はこのクラウドが主流になるに違いない、それならもっと勉強したい、クラウドに関わるところで働きたい! と強く思いました。

4回面接落ちしたGoogleに入社。「やりたいこと」を伝え続けた

岩尾エマはるかさん

そこで思いついたのが、Googleへの転職です。ただ、すんなり入社できたわけではありません。4回も選考で落ちましたから。

もともとソフトウエアエンジニア職で応募していたのですが、全く採用されず。Googleは面接の回数が多く、一度の選考で4~5人の面接官とお話ししたと思います(笑)

そして、Googleに初めて応募してから数年後。当時プリセールスエンジニアをしていた経験を評価してもらえて、広告分野のカスタマーソリューションエンジニアのポジションでようやく採用してもらえました。

ただ、私の好きなこと、どんどん興味が出てくることはクラウド領域の仕事でした。その思いを社内のクラウドチームの知り合いに伝えて、当時のクラウドデベロッパーリレーションズのディレクターを紹介してもらったんです。

そして、採用ポジションができたら教えてもらえるようにお願いし、空きが出た時に異動できました。やりたいことは口に出して言っておくものですね。

コミュニティー活動が「好きをキャリアにつなげる」きっかけに

これまでのキャリアの中で、私が一貫して続けてきたことがあります。それがコミュニティー活動です。具体的には、エンジニア向けのカンファレンスや勉強会に参加することですね。

岩尾エマはるかさん

コミュニティー活動をしていると、自分の会社の業務だけやっていると思いつかないことを教えてもらえるなど、広い視野が身に付きます。

例えば、新卒で入社した家電メーカーでは、定年まで勤めあげる人が多く、年次が上がるにつれてエンジニアがコードを書く機会も減っていくのが一般的でした。

ただ、社外の人と交流していたおかげで、外の世界にはそうではない会社があることや、もっと多彩なキャリアパスがあることを知ることができました。実際、私はいま30代後半ですが、毎日コードを書き、それでしっかり評価もされています。

また、「好きなことをキャリアにつなげる」上でも、コミュニティー活動は欠かせないものでした。

たまたま知り合った人の紹介で就職したり、コミケでLinuxについて書いた本を出したり、それがきっかけとなって転職したり……。

Googleで希望のポジションに異動できたのも、コミュニティー活動の恩恵が大きいです。

部署異動のためのプレゼン面接では、過去にカンファレンスに登壇した時の動画をシェアしましたし、社内でクラウドの担当をしていた人とはコミュニティー活動をきっかけにすでに知り合いだったことも仕事内容をよく理解する一助になりました。

こうやって人の輪がつながって、仕事に生きてくることも多いと思います。

やりたいことは口に出す。“The best time is NOW”精神

あとは、自分から好きなこと、興味のあることを主張するのはやっぱり大事ですね。

やりたいことをやるには努力も必要ですが、好きなことだと苦労も苦労だと思わずにできてしまうことがある。それってすごいことだと思います。

自分の好きなことを周りに伝え続けていたら、それを覚えていてくれて、チャンスを与えてくれる人や、あなたに必要な情報を持ってきてくれる人がきっと出てくるはずです。

そして、私が常に意識しているのは、“The best time is NOW”という言葉。

「あの時やっておけばよかった」ではなく、「今が残りの人生で一番若いのだから、やりたいことがあるなら今すぐやろう」という考え方です。

岩尾エマはるかさん

私がアメリカに引っ越したのは34歳になってから。36歳から中国語の勉強を始め、今年からSREの仕事も始めました。「今からじゃ遅い」なんてことはないんですよ。

ですから、皆さんにも自分の好きなことを積極的に発信し、キャリアにつなげるチャンスをまさに「今」からつかみとってほしいと思います。

岩尾エマはるかさん

取材・文/まゆ