共働きで“イクメン”するってどんな感じ? ワーク&ライフ・インターンに未婚社会人が挑戦してみた【後編/男性】
今回社会人向け『ワーク&ライフ・インターン』に挑戦したのは、保険会社で営業をしている宇賀神吉敬さん(28)。
イクメンという言葉が一般化しつつあるものの、ロールモデルとなるような人が身近にいないケースも多い。将来の仕事と家庭の両立生活を想像しづらいのは、女性に限らず男性も同じだ。
宇賀神さんはインターンへの参加を決めた理由を次のように語る。
「自分の将来像をはっきりさせるため、共働き家庭の現実を知っておきたい。それに、自分がいざ父親になったときに役立つ経験になりそう。職業柄、家族のライフプランを考えることもあるので、今回の経験が普段の仕事にも役立ちそうだと感じています」(宇賀神さん)
プライベートでは子どもと触れ合う機会がほとんどないそうだが、このインターンを通じて宇賀神さんはどのようなことを感じるのだろうか。インターン当日の様子をレポートし、参加前後で感じた“自分自身の変化”を教えてもらった。
17時00分・・・保育園にお迎え
「前編」記事で登場した柴田さん同様に、宇賀神さんも事前研修を受講し、子どもとの触れ合い方を学んだ上でインターン当日を迎えた。
いざ2人が出会うと、さっそく人見知りをするあいこちゃん。なかなか目を合わせてもらえず、戸惑う宇賀神さんだったが、「ターくんって呼んでね」と優しく話し掛けると、あいこちゃんの表情も次第にほころび、少しずつ距離が縮まっていった。保育園からの帰り道、「今日は保育園で何をしたの?」、「楽しかったことは?」など、会話が盛り上がってくると、あいこちゃんの方から手を握ってきてくれた。
17時45分・・・洗濯物の取り込み
家に到着してあいこちゃんと一緒に手を洗った後は、さっそく家事に取り掛かる。一人暮らしが長いからか、手際よく洗濯物を取り込む宇賀神さん。しかし、家事に集中してしまうと、ついあいこちゃんから目を離してしまう。「ずっと子どもを見ているというわけにもいかないし、常に緊張感がありますね……」と宇賀神さん。
洗濯物を畳み終わったら、あいこちゃんの遊び相手に。ブランケットとソファーを使ってお部屋に見立てたり、クッションを使って滑り台を作ったりして遊ぶ二人。遊びの時間を通して、すっかりあいこちゃんとの距離が縮まった。
18時半・・・長男(小2)帰宅
そうこうしているうちに、18時半。長男の太一くん(小2)が、サッカー教室から帰宅した。太一くんは妹のあいこちゃんと一緒に、録画していたアニメ番組を見始める。2人がテレビに集中している間、宇賀神さんはほっと一息。「まだインターン開始から1時間ほどしか経っていませんが、子どものパワーに圧倒されています」と少しお疲れモード。
2人のアニメ鑑賞が終わったら、ボール遊びを開始。太一くんも、一生懸命遊んでくれるお兄さんを気に入ったようだ。
19時・・・夕飯を食べてお風呂へ
夕飯の時間。宇賀神さんがキッチンに立つと、あいこちゃんが手伝いにきてくれた。子どもと同じ目線で食事の準備をする。太一くんも興味津々だ。「一緒に料理をするのは楽しいけれど、やっぱり子どもが怪我をしないか注意を払う必要があるので緊張しますね」と宇賀神さん。
食事の後はお風呂。太一くんもあいこちゃんも、あまりお風呂に入りたくなかったようで、宇賀神さんに抱き上げられてお風呂場へ。お風呂に入っている間に、着替えやタオルの準備をしつつ、二人が安全にお風呂に入れているかどうかをチェック。ここでもやっぱり気は抜けない。
20時・・・太一くんと勉強
お風呂から上がり、今度は太一君の宿題を一緒に見てあげる宇賀神さん。なかなか宿題に集中できない太一くんに、「勉強が終わったら、また一緒に遊ぼうね」と提案し、机に向かわせることに成功。宿題を終えた太一くんとは約束通り、かくれんぼをして遊んだ。
20時半ごろ、仕事を終えたお父さんが帰宅。短い時間ではあったものの、宇賀神さんは初めての子育てインターンを無事に終了することができた。
共働き家庭の両立生活のコツは夫婦の話し合いと分担決め
このインターン参加を通じ、宇賀神さんが痛感したのは「子どもたちのパワフルさ」だという。「両立生活って、よく仕事と家庭に割く時間のバランスを取るのが難しいっていうけれど、それ以前に、体力的にかなりきつかったですね(笑)」。
少し疲れ気味の宇賀神さんに対し、太一くんとあいこちゃんのお父さんからはこんなアドバイスが。
「我が家では平日はママが、休日はパパがメインで子育てをするというルールを設けています。親のどちらかだけが子どもの面倒を見るような家庭にしてしまうと、やっぱりどちらかに負担が掛かり過ぎると思うんです。短い時間でのインターンでしたが、相当疲れましたよね? 毎日片方にそんな負担が掛からないように、家庭内でのコミュニケーションをしっかりとり、夫婦間で話し合いを重ねながら子育てに臨むことが共働き家庭で仕事と家庭の両立をうまくやっていくコツですね」
また、「恥ずかしがりやな子どもたちが宇賀神さんにとてもなついていたことに驚いた。子どもと同じ目線で接してくれたのがきっとうれしかったんでしょうね」とお父さん。その言葉を聞いて宇賀神さんは、「本当に素直な子たちで助かりました」とほっと肩を撫で下ろした。
「最終的には、子どもたちの方から遊びに誘ってくれたり、積極的に家事を手伝ってくれたりもして、すごくかわいく思えました。子どもたちはいつでも全力だから、こっちも全力で向き合わなくちゃいけないってことが分かりました。体力的にはきつかったけど、すごくパワーをもらえましたね。あとは、『共働きの子育ては大変』という漠然としたイメージがありましたが、自分が家庭を持ったときにはパートナーとちゃんと協力して分担を決めればいいんだということが分かって、安心もしました」(宇賀神さん)
子育てを女性に任せっぱなしにするのではなく、男性の子育て参加がいかに大事かを改めて痛感した宇賀神さん。今回のインターンへの参加を経て、「将来は、結婚して子どもを持って、楽しい家庭を築きたい」という想いが膨らむとともに、未来の両立生活をより前向きに考えられるようになったようだ。
取材・文・撮影/橋本岬(アバンギャルド)