不妊治療中・妊活中も転職できる? 経験者3人が明かす「不妊治療と両立できる仕事」の見つけ方

2022年に保険適用が開始され、よりいっそう身近になった不妊治療。
子どもを持ちたい夫婦に希望を与えてくれる一方で、仕事と不妊治療の両立は働く女性の悩みの種にもなっている。
厚生労働省の調べで明らかになったのは、4人に1人の女性が不妊治療と仕事を両立できない現実(※1)。

(※1)『不妊治療と仕事との両立ハンドブック』(厚生労働省)
通院のスケジュールを前もって立てづらく、体調やメンタルが安定しづらい日々が続くことで、仕事をあきらめざるをえない状況に陥る女性は少なくない。
そんな中、2023年1月28日に開催されたオンライントークイベント『経験者に聞く不妊治療と仕事の話。~妊活・不妊治療中でも転職できる?~』(主催:妊活キャリア)には、両立に悩み、模索し、自分なりの答えを見つけてきた3人の女性が登壇。
不妊治療と仕事を両立するために行った転職活動のことや、治療と両立できる仕事や働き方、職場の探し方について3人が実体験を語った。
松下加奈さん(メーカー人事→ベンチャー企業人事)
田所ゆかりさん(エンジニア→経営コンサルタント)
浅田智子さん(営業職→大学職員)
「時間にゆとりがある」だけでもダメ? 不妊治療中にぶつかったキャリアの壁
前職では、大手メーカーで人事として働いていた松下さん。33歳で不妊治療をスタートして約半年がたった頃、仕事と不妊治療の両立に壁を感じるようになった。
「妊活がしたいから、仕事を調整したいと上司に話したところ、妊活するなら半年後にしてと言われてしまったんです。
人事の仕事にやりがいは感じていたけれど、通院の度に頭を下げたり、チームに迷惑をかけたりするのも心苦しく、結局退職することにしました」(松下さん)
専業主婦になった彼女を待っていたのは、不妊治療のことばかり考えてしまう日々だった。
そこで一念発起し、再就職を決めた松下さん。働く時間に融通がきく、フルリモート・フルフレックスで働けるベンチャー企業を候補に、SNSや転職サイトを使って転職先を探した。
「今は希望の条件で働けるベンチャーで人事をしています。会社の環境を変えただけで、不妊治療と仕事の両立に対するストレスがぐっと減りました」(松下さん)

かつてエンジニアとして働いていた田所さんは、体外受精に取り組む直前のタイミングでコンサルティングファームへの転職を経験している。
それまでずっと頭にあったのは、「治療中に新しい場所に移っていいのか」という不安だった。
「不妊治療しながら、新しい環境で働くことに不安を感じていました。転職をきっかけにこれまでなんとか保っていた治療との両立ができなくなってしまうことが怖くて。
でも、いつ終わるか分からない治療のためにやりたいことを我慢してもキリがないと思い、転職の情報収集を始めたんです。すると、意外にも両立しやすい制度が整っている企業が多いことが分かりました。
実際に転職した時には、育児休暇や介護休暇の制度が整っているかはチェックしていましたね。こういった制度がしっかりしている企業は、不妊治療もしやすいかなと思ったので。
転職先の企業には不妊治療休暇の制度があったので、いざとなったらそれを使えることを知って安心できました」(田所さん)
転職先の企業の働き方が、成果主義だったことにも救われたと田所さんは言う。
「きちんと成果を出していれば、働く時間も場所も自分で決められる仕事だったので、転職後の方がより不妊治療との両立はしやすくなりました」(田所さん)

26歳で不妊治療を始めた浅田さんは、人材系企業の営業職として働いていた。売り上げノルマが厳しく、帰宅時間が繁忙期は22時頃になる日々が続き、治療との両立も難しくなっていたという。
そこで、雇用形態を派遣社員に変更し、大学職員として就職。残業が全くない職場で働き始めたことで、通院はしやすくなったものの、「仕事のやりがいを失ってしまった」と明かす。
「時間にゆとりさえもてれば仕事と不妊治療の両立がしやすくなると思ったのですが、仕事に対するモチベーションが保てず、逆に苦しくなってしまいました」(浅田さん)
その後、キャリアコンサルタントの資格を取得した浅田さん。業務委託の働き方に切り替え、自分らしく取り組める仕事を続けている。
不妊治療と両立できる仕事とは? キーワードは裁量と価値観
不妊治療中でも転職をかなえ、「今の自分」のライフスタイルにフィットする仕事と出会うことができた3人。
当事者が不妊治療をしながら働き続けていくためには、「裁量を持って働ける仕事」と「自分の価値観に合う仕事」を見つけることが大事だと口をそろえる。

時間の調整がしやすく自分で裁量を持ってハンドリングできることはもちろん、自分の価値観に合うという視点も欠かせない
さらに、この二つの条件を満たす仕事を見つけるために、「まずは自分の視野を広げてみてほしい」と松下さんは呼び掛ける。
「例えば、現在看護師をしている方だと『病院や直接支援しか選択肢はない』と思いがち。
でも、訪問診療の電話応対だったり、看護師経験を生かして何かサービスをつくる仕事だったり、看護師の方がフルリモートでできる仕事って意外とあるんですよね」(松下さん)
また、業務委託のキャリアコンサルタントとして働く浅田さんは、「正社員など『雇用』にこだわらず、他の労働形態を選ぶことも『働きやすさ』をかなえる一つの手です」と話す。
過去の職業や雇用形態に縛られず、広く求人サイトを活用することで、自分のスキルや経験を生かして裁量をもって働ける場、やりがいのある仕事に出会えるかもしれない。
今回このイベントに登壇した3人の女性たちの実体験を参考に、自分らしく仕事を続けるための一歩を踏み出してみてほしい。
妊活当事者のためのキャリア支援サービス「妊活キャリア(#妊キャリ)」
「妊活キャリア」(#妊キャリ)は、不妊治療をきっかけに、自分らしいキャリアを築きたい方をサポートする、キャリアの専門家集団。 妊活・不妊治療は、ライフプラン・キャリアプランの変更を余儀なくされるケースも多いが、妊活キャリアは、「自分のキャリアをアップデートするきっかけ」と考え、より自分らしく、満足度高く働くためのサポートを行っている ■X ■note ■YouTube