15 SEP/2023

ブランク8年・時短勤務で年収アップをかなえたエンジニアが20代で身に付けた稼ぐ力

私たちのエンジニアライフ

「女性のロールモデル」が少ないエンジニアの世界。 “好きな仕事”を続けている女性たちのインタビューから、自分らしいエンジニアライフを築いていくためのヒントを探してみよう。

いつか家庭を持つことになっても、第一線でキャリアを築き続けたい。

そう思っていても、会社によっては時短勤務により年収が下がったり、負荷の少ない仕事を割り振られるようになったりというケースに悩まされることもあるだろう。

とはいえ、ライフイベントと両立しながら続々登場する新しい技術を習得し続けられる自信もない……。

そんな人に参考にしてほしいのが、結婚・出産を機に一度IT業界を離れ、8年のブランクをへて時短勤務でエンジニアに復職したにもかかわらず、入社時点で以前よりも大幅な年収アップを実現している女性のストーリーだ。

入社から4年でマネジャーへの昇進も果たしているその女性は、SAP導入コンサルタント/エンジニアとして働くY・Tさん。

株式会社ライフ&ワークス

株式会社ライフ&ワークス
業務コンサルティング部 マネジャー Y・Tさん

2002年、新卒でユーザー系Slerに就職し、VBA開発、SAP BW導入のグローバルプロジェクトに参画。その後1年間カナダに留学。帰国後は、大手ITコンサルティング会社でSAP BWプロジェクトに従事。09年、結婚を機に韓国に渡り、日本語教師として8年働く。その間に二度出産を経験。18年に帰国し、ライフ&ワークスに入社。SAP導入コンサルタント/エンジニア職に就く。時短勤務で働きながら、21年にリーダーへ。22年にフルタイム勤務に変更した後、マネジャー職に昇進

彼女が勤務するのは、SAPコンサルティング事業を展開するライフ&ワークス。同社で働く社員の過半数が時短勤務を選択しているが、年収700万円を超えている人も珍しくない。

「IT業界から離れていた8年間は、WordやExcelにすら触れていなかったので、久々のITの現場に最初は緊張でいっぱいでした」

そんなY・Tさんが、ブランクや制限のある働き方をハンデにせず、年収アップ・キャリアアップを遂げられたのはなぜだったのだろうか。

正社員で好きな仕事を選べる、最後のチャンスかもしれない

もともとSAP導入・設計やITコンサルティングの仕事を担っていましたが、結婚して韓国に渡ったことをきっかけに、一度ITの仕事から離れました。

韓国では日本語教師として働きながら2人の子どもを出産。8年暮らした後、2017年に帰国しました。

日本に戻ってからは、子どもが幼稚園に行くことになったので、とりあえず派遣会社に登録して一般事務の仕事などに従事。

でも、ふと思いました。40歳を目前に控えている私にとって、正社員としての職を探すなら、今始めるべきなのではないか。

そこで、転職サイトに登録して転職活動を始めました。そんな時、ライフ&ワークスからスカウトメールが届いたんです。

スカウトメールを見て引かれたのは、SAPの経験を生かして正社員として働けること、なおかつ入社直後から時短勤務ができることでした。しかも、提示された待遇がかなり良くて。

「この年齢で小さな子どもがいても、正社員で時短勤務をしながら好きな仕事ができるんだ」と、安堵の気持ちで選考に進みました。

株式会社ライフ&ワークス

時短勤務は、育児をしている人だけの特権じゃない

入社後は、時短勤務でSAP導入コンサルタント/エンジニアとしてプロジェクトを手掛けてきました。

現在は、プロジェクトリーダーとして「SAP SuccessFactors」というタレントマネジメントのシステム導入プロジェクトを担当しています。

コンサルタントに作業を依頼したり、打ち合わせ時のファシリテートをしたりするのが主な業務。小規模プロジェクトの場合は、開発やテスト業務をすることもあります。

「SAPのプロジェクトは激務」というイメージを持つ人も多いかもしれませんが、当社では約半数の社員が時短勤務を選択しています。

時短勤務は子育てをしている人以外でも取得でき、「今月は時短にしよう」といった具合に、月単位で時短勤務に変更することも可能。中には週休3日で勤務している社員もいます。

また、フレックス制を導入しているので、関係者に事前に共有しておけば、「この時間は用事があるので、少し抜けます」なんてこともできます。

時短勤務者にとって気になる人事評価も、「生産性」を評価基準としているため、勤務時間に関係なく生産性が高ければランク・等級が上がり、年収も上がっていく仕組み。

ライフイベントと両立しながらでも、年収アップ・キャリアアップを実現していけます

株式会社ライフ&ワークス

さらにはフルリモートで、地方に住みながら東京のプロジェクトに参加する、なんていう働き方も可能なため、九州在住で一緒に働いている社員もいます。

なぜ、激務と言われることが多いSAPコンサルティングの仕事において、こんなに柔軟な働き方が可能なのかというと、大きく二つの理由が挙げられます。

一つ目は、ライフ&ワークスが仕事とプライベートの両立をモットーに設立された会社だから。

ライフ&ワークスの母体は、SAPを使った人事専門のコンサルティング会社、オデッセイです。

日本が抱える労働人口減少の問題に貢献するため、結婚や出産、介護などで制限のある働き方をせざるを得ない人や、年齢がネックになり再就職が難しい人などを積極的に採用する会社として、別法人化されたのが当社。

そもそも仕事とプライベートの両立をモットーに設立されているため、「プライベートありきの仕事」という考え方が他社よりも強いように思います。

二つ目の理由は、グループ会社のサポート。

ライフ&ワークスはグループ会社であるオデッセイのプロジェクトに参画することが多く、グループ会社のPMが当社の社員の稼働状況を把握して業務量を調整し、必要に応じてフォローアップしてくれます。

また、子どもの体調不良による急な欠勤や早退でフルタイムの同僚に肩代わりしてもらって心苦しく感じる……なんてことが起こらないよう、PMのフォローのもと、中抜けしたりフレックスを駆使したりして穴埋めできる制度もありがたいです。

これは、時短勤務でも自分でできるところはきちんと穴埋めするというやる気があってこそ、成り立つ仕組みだと思っています。

さらに、全社員に時短勤務を選択する権利があり、オデッセイのPMのフォローに助けられつつも、それを当たり前とは思わずベストを尽くすという覚悟を持って働いていますので、フルタイムの社員の手が回らない時は、逆にサポートする側に回ることもあります。

働き方に制限があっても後ろめたさを感じずに働けるのは、非常にうれしいポイントでした。

株式会社ライフ&ワークス

ちなみに、フルタイム・時短などの勤務スタイルは、ライフステージに合わせて変えていくことができます

そのため、子育てが落ち着いたらフルタイムに切り替えられるのはもちろん、「夫が時短勤務で妻がフルタイム」という働き方を選択するご夫婦もいます。

みんな、自分の家庭に合った働き方を選択しているんです。

私も子どもが小学校に入学し手が離れてきたタイミングで、フルタイムに切り替えましたが、子どもの中学受験を控えているため、追い込みのシーズンだけ時短勤務に切り替える予定を立てています。

「不変的な専門性」があれば、納得の収入・キャリアを得られる

気付けば、ライフ&ワークスに入社して6年。

韓国から帰国して転職活動をしていた頃の私は、自分でも気付かないうちに「アラフォーで、子育てもしている自分は高望みなんてできない」と勝手に自分の限界を決めていました。

でも、本当は育児をしながらでもしっかり稼いでキャリアアップしていきたいというのが私の望みだったのかもしれません。

自分の能力を最大限生かせる仕事で実績を残し、それを正当に評価してもらうことでキャリアアップしていく。

そんな経験を通して、知らず知らずのうちに蓋をしていた自分の素直な感情をストレートに出せるようになったことで、さらに責任のある仕事を任せてもらえる。今、そんな好循環を生み出せています。

株式会社ライフ&ワークス

私がマネジャーとしてキャリアを築き、収入アップも実現できたのは、会社の制度面はもちろん、汎用性があり時代に左右されにくい専門性を20代で身に付けていたことも大きいと感じています。

求められるスキルを持っていれば、働き方に制限があろうと「あの人にお願いしたい」と思ってもらえますから。

私が経験していたSAPで言うと、SAP認定コンサルタントという資格があり、一度取得すると有効期限はないため、持っているだけで一定の評価が得られます。

SAPは世界的なブランドなので、グローバルで通用する専門性があります。常にニーズがあるサービスでもあり、IT業界のトレンドがめまぐるしく変化していてもSAP経験者の求人は常にたくさん出ています。

そういう意味でも、時代に左右されにくい専門性と言えると思います。

また、SAPは出来上がっているシステムのカスタマイズになるので、技術が進化していてもベースの考え方が大きく変わることはありません。

そのため、「ブランクがあるから、もう付いていけない……」なんてことが起きにくいのも、ライフイベントを予定している人にはうれしいポイントですね。

株式会社ライフ&ワークス

私が今、ライフステージが変わっても納得のいく働き方ができているのは、トレンドに左右されない専門性を身に付けていたこともありますが、常にその時々の環境ですべきことに、自分で考えうるベストな向き合い方をしてきたからだと思っています。

一歩前に進んだ自分をイメージしながら、その時々の環境で自分ができることに真摯に取り組むことで、おのずと自分自身の価値を形作っていけるはずです。

「トレンドに流されない専門性」と、「どんな環境でも今を楽しめる余裕」。

きっとそれが納得できる働き方を体現するための第一歩になるはずです。

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取材・文/久保佳那 撮影/赤松洋太 編集/光谷麻里(編集部)