女性は年齢を重ねても年収が上がらない? 人生100年時代、自分らしく稼ぎ続けるためにできる3つのこと

「『100歳まで生きたい』は日本が最低」──9月にこんな意識調査が公表されました。
これは「100年生活者研究所」(Hakuhodo DY Matrix)が行ったもので、米国・中国・フィンランド・タイの4カ国の生活者を対象に人生100年に関する意識調査を実施し、同研究所が設立時に行った日本国内の調査結果と比較したそうです。
こちらの研究所が国内の会員を対象に行った調査によれば、「100歳まで生きることは不安が増えることですか、チャンスが増えることですか」と質問したところ、「不安が増える」と回答したのが71.8%に上り、多くの人が「長生きはリスク」と捉えていることがわかりました(下図)。

同研究所では「高齢者が多い日本では、年金2000万円問題や老々介護といった『長生きに伴う問題』についての情報が広く流通しており、他国と比べて『長生きの負の側面』が浮き彫りとなり、100歳まで生きたいと思う人が少なくなるという結果につながっているのかもしれない」と分析しています。
また、調査では9割弱の人が「100年人生で、みんなに迷惑をかけたくないという気持ちを感じる」と回答したそうで「長生きして迷惑をかけたくない」という日本人の意識が背景にはありそうだとも言います。
長生きに対してネガティブな感想を持つ人が増える中、厚生労働省が公表している調査によると、日本人女性の平均寿命は87.09年となっており、わずかに前年を下回っているものの、長いスパンで見ると右肩上がりに延び続けています。
「100歳まで生きる」のは「起こりうること」として捉えておいたほうがよさそうです。
女性の平均給与は男性の半分。50代になっても給与は横ばいか微減

長寿化の不安の一つとして、年金2000万円問題も挙げられていましたが、長生きと「お金」という観点では、見過ごせないデータもあります。
国税庁が9月27日に公表した「令和4年分 民間給与実態統計調査」によれば男性の平均給与は563万円に対して女性は314万円でおよそ男性の半分の給与にとどまっているほか、男性は 60 歳未満までは年齢が高くなるにしたがい平均給与も高くなり、55~59 歳の階層(702 万円)が最も高くなっているのに対し、女性は年齢を重ねても横ばいか微減する傾向が見られます(下図)。

背景には働く女性の数自体は増えているものの、短時間勤務やパート・派遣などの非正規雇用が多いこと、結果として女性が管理職などの上位職に就けていないことなどが挙げられます。
ではこうした状況をふまえた上で、女性が経済的不安を持たずに、人生100年時代を自分らしく生きていくために心がけたいことを3つお伝えします。
【非正規→正規など積極的な「シフト」を意識する】
一つは非正規雇用から正規雇用への転換を目指すなど、より報酬が得られるような働き方への「シフト」を意識して行動に移すということです。
勤務している会社で正規雇用への転換を目指す方法もありますし、こうした「シフト」を実現する手段として最近注目を集めているのが「リスキリング」です。

リスキリングとは「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」(出典:リクルートワークス研究所資料)。
実際、私が共同経営する会社では、新たな学びを通じて新たなスキルを身につけて、非正規の仕事から正規の仕事へと転職されていく方がいらっしゃいます。非IT系の方が未経験から新たなスキルを学んでIT業界へと転職される事例も多数出てきています。『女の転職type』でも未経験転職としてエンジニア職は最近人気があるそうです。
結婚・出産・育児・介護などさまざまなライフイベントに応じて非正規雇用や短時間勤務のパートの仕事に就く方もいることでしょう。
ただ、人生100年ということはそれだけ働く期間も長期化しているということ。状況が変わり、アクセルを踏めるようになったら、再び非正規から正規へ、また短時間勤務からフルタイムへと働き方を「シフト」させていきましょう。
【管理職にチャレンジしてみる】
もうひとつは管理職にチャレンジしてみることです。
現在、日本の女性管理職比率は12.7%(出典:厚生労働省「令和4年度雇用均等基本調査」)で、他の先進国に比べて圧倒的に低いことで知られています。
こうした状況を打開しようと政府が今年6月に公表した「女性版骨太の方針2023」では「女性の育成・登用を着実に進め、管理職、更には役員へという女性登用のパイプラインの構築に向けた取組の支援」を行うことなどが重点方針の一つとして盛り込まれています。
私が企業の人事関係者と話していても「女性管理職をどう育てたらいいのか」というお悩みの声が非常に多く聞こえてきます。
だからこそ管理職にチャレンジしたい女性たちにとっては今がチャンスです。管理職になることで、マネジメント経験が積めるほか、報酬などの待遇面もアップします。
「でも、今の職場で管理職になることはイメージが湧かない」……そういう方もいますよね。「長時間労働が改善される見込みがない」「職場の男女格差是正に経営陣が取り組む姿勢が見られない」といった状況に直面しているケースもあるかもしれません。
その場合は、転職というかたちで新たな活躍の場を探す方法もあります。
なぜなら今までにないくらい女性管理職あるいは管理職予備軍を求めている企業が増えているからです。
【「稼げる手段」を複数持っておく】
3つ目が「稼げる手段」を複数持っておくということです。
今は「働き方改革」の一環で「副業OK」の企業が増えつつあります。会社員をしながらフリーランスとしても活動中という人や、派遣社員をしながらフリーランスという人もいます。
私が先日お話しした人は自身で会社を経営しながら、時期によっては契約社員として働いたり、フリーランスで仕事をしたりもしていました。本当に働き方の「ボーダーレス化」が進んでいますね。
こうした複数の「稼ぐ手段」を組み合わせることによって、リスクが分散され、実際の収入も得られるほか、スキル・経験としてもより多様で深みのあるものが得られるようになり、それが将来の「稼ぐ力」にもつながっていきます。

人生100年時代、女性は年齢を重ねても「収入を上げにくい」のがこれまでの現実でした。でも、環境は大きく変わりつつあり、キャリアの選択肢も増えています。
自分らしい生き方・働き方を自分の手でつくりながら、ハッピーに年齢を重ねていきたいですね。
書籍情報

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私たちは100人いれば100通りの人生があります。これまでやってきたこと、取り組んできたこと…今まで経験したことが一人ひとり必ずありますよね。
大切なことは歩んできた道のりをしっかり振り返ること、その結果として自分の手の中に何があるかを正しく理解すること、そして今後どんな人生を歩みたいかを考えて行動へつなげていくことです。
すべてが今につながっているし、振り返ればたどってきた道がある。

【この記事を書いた人】
Waris共同代表・国家資格キャリアコンサルタント
田中美和
大学卒業後、2001年に日経ホーム出版社(現日経BP社)入社。編集記者として働く女性向け情報誌『日経ウーマン』を担当。フリーランスのライター・キャリアカウンセラーとしての活動を経て2013年多様な生き方・働き方を実現する人材エージェントWarisを共同創業。著書に『普通の会社員がフリーランスで稼ぐ』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。一般社団法人「プロフェッショナル&パラレルキャリア フリーランス協会」理事
『ニューノーマル時代のLive Your Life』の過去記事一覧はこちら
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