起業家&4人を育てるシングルマザー・MALIA.の「何も諦めない」生き方「十兎追えば、五兎はゲットできるんじゃない?」
やりたいことはあるけれど、できるか分からないことにチャレンジするのは気力も体力も必要。
「もう30歳になるし」「親や友達に止められそうだから」「時間があればやるんだけど」
そんな風についやらない理由を見つけて、最初から諦めてしまうこともあるだろう。
そんな女性たちに元気を与えてくれるのが、4回の結婚・離婚を経て、現在4人の子どもを育てるシングルマザー・MALIA.さんの生き方だ。

MALIA.(マリア)さん
1983年生まれ、横浜市出身。モデルとして『Fine』『ViVi』などで活躍した後、2009年に起業。アパレルブランド『ANELATOKYO』やブラジリアンワックス店『Moalani Wax』、ビューティーブランド『Anela Beauty』など数々のブランドを展開。23年より、自身が経営する企業をホールディングス化し、会長に就任。プライベートでは、4度の結婚・離婚を経て3男1女をもうける。現在は4人を育てるシングルマザー。22年には三男の教育環境を考慮し、ドバイに移住。ドバイでも会社を設立 ■Instagram ■YouTube ■ブログ
モデルとして活動する傍らで、脱毛サロンやアパレルブランド、コスメブランドなどを次々と立ち上げ、今年自らが手掛ける企業をホールディングス化。経営者としてまた新しいチャレンジに踏み出した。
その一方で、育児にも全力投球するMALIA.さん。プロサッカー選手となった長男のサポートのために東京と山口の二拠点生活を送ったり、三男の教育環境を考えてドバイに移住したり。子どもたちにもまっすぐ向き合っている姿が印象的だ。
「仕事の他に手が回らない」「育児だけで手いっぱい」になってもおかしくない状況にありながら、自分のやりたいことに貪欲で、いつもパワーがみなぎっている。彼女の活力はどこから湧き上がっているのだろう。
「無理」だと思ったら、そこが限界になっちゃう
よく、「何で4人も育てながら、仕事にも全力投球できるの?」なんて聞かれるんだけど、私からすると逆なんです。4人を一人で育てているから、やるしかなかっただけ。
もともとアグレッシブなタイプではあったけど、結婚していた時は主に主婦業にエネルギーを使ってた。
それがお仕事にシフトしたのは、2回目の離婚の後。26歳で3人の子どもを連れてシングルマザーになった時だった。
自分のキャパはギリギリだし精神的にも金銭的にも苦しかったけど、子どもたちを守らなきゃいけない。自分が無理だと思ったらそこで本当に無理になっちゃうから、自分にリミットをかけないようにするようになったのもこの頃から。

起業したのも、ちょうどこの頃。モデルをやってた『ピーチ・ジョン』で展開していたマタニティブランドを独立させて会社を立ち上げたんです。
「シングルマザーなのに、何でわざわざリスクの高い起業の道を選んだの?」とも聞かれるけど、それもやっぱり子どもたちがいたからなんだよね。
3人の子どもたちに不自由のない生活をさせてあげるには、リスクがあっても稼ぎが増える方を選ぶ必要があると思ったの。
もちろん、会社員として働くよりももらえる金額が減ってしまう可能性はある。でも、そこは考えなかった。会社員の収入だと上限があるので、そこが天井になっちゃうでしょ? 「 不安だ」と言ってる場合じゃない! って覚悟を決めたんだよね。
26歳で会社を立ち上げて、29歳でブラジリアンワックスのサロンを立ち上げたんだけど、これをやろうと思ったのは、「稼げるから」というより、単純に自分の「やりたいこと」だったから。
自分が心から良いと思うもの、広めたいと思えるものじゃないと、お客さんに良さを伝えられないし、好きだからこそ勉強できる。
つまり、「やりたいこと」をやることが、結果的に稼ぐことにもつながると信じてサロンをスタートしました。

ブラジリアンワックスは、もともと私自身がユーザーで、技術者でもあり良さを知っていたから、これを商材にしたいと思ったんですよね。
商材に愛着があったしこだわりも強かったから、起業する時は、誰からも出資を受けず、ビジネス書を読み漁りながら独学で会社を立ち上げた。自分が納得できる会社、サロンを作りたかったから、全部自分でやろうと思ったの。
こだわりだけは一人前だけど、経営はド素人。間違えたら違う方法を試して、また間違えたら違う方法で……って、手探りでずっとやってたな。
今となっては「予約の取れないサロン」なんて言ってもらえるようになったけど、軌道に乗るまではかなり時間がかかった。結果的に何とかなったっていうより、何とかしてきたっていう方が正しいかな(笑)
周囲の雑音は無視。そのせいで諦めるのは悲しいもん
ブラジリアンワックスのサロンを開いた翌年にはコスメブランド、そのさらに翌年にはドレスブランドとどんどん新しいブランドを立ち上げて、やりたいことは全部やった。
シングルマザーなのに仕事でガンガン好きなことをやっていく私に対して、嫌なことを言ってくる人もいたな。
私は好きな洋服も着るし、見た目も派手だから、批判したくなるようなタネはいっぱいあったんだと思う。

それこそ、ボディコンのドレスをプロデュースしている時代もあって。その頃はそれをよく着てたし、テレビもそれで出ていたから、頑張ってない人に見えたみたいで……。
「シングルマザーなのに……」みたいなイメージが先行しちゃって、つらい思いもした。
「シングルマザーは不幸であるべき」「苦労しているべき」みたいな風潮はどうしてもあって。そういうイメージとはかけ離れて見えただろうから、周囲の批判的な声はたくさん耳に入ってきたな。
すごく嫌だったしつらかったけど、「自分がやりたいことをやる」というのは絶対に辞めなかった。
SNSを見ない、周囲でそういう言葉を浴びせてくる人たちとは距離を置く、みたいな感じで、ある程度意地悪な声はブロックできるしね。
それよりも、そんな批判に負けてやりたいことを後回しにしちゃって、チャンスを逃す方が何倍も嫌だった。後でやっぱりやりたいなと思った時に取り返しがつかなくなったら絶対後悔するから。
昔、客室乗務員になりたいと思っていたことがあったんだけど、専門学校を出なきゃいけないことを知って。当時、高校も中退しちゃってたから「あ、ダメじゃん」ってそこで諦めたことがあったんだよね。
モデルとして稼げるようになってたから、そこまで強い思い入れがあったワケじゃなかったんだけど、もし本気でやりたいことだったらきっと今頃大後悔してると思う。
年齢とか体力とかタイミングとか、「今やらないと、もうチャンスがこない」ものってあると思うの。
周囲の雑音のせいで、10年後、20年後に「あー、これできなかったな」なんて後悔することになったら悲しい。
これはプライベートも同じ。息子がサッカー選手になって、15歳で家を出ることになったんだけど、「たった15年しか一緒に暮らせなかった。もう一緒に住むことは一生ないんだろうな……」と思ったら毎晩涙が止まらなかった。
ものごとにはタイムリミットがある。だから、後悔がないように今を過ごしたいんだよね。

二兎しか追わないから、一兎も捕まらないのかも
これを読んでる人の中には、「そりゃ私だって、やりたいことは全部やっておきたいよ。でも言うほど簡単じゃない」って思う人も多いんじゃないかな。
親や友達を含めて、周囲の人たちに反対されたり、好奇の目で見られたり……。そんな中でやりたいことを実行するのはかなり勇気がいるし、やんややんや言われながらやるのは、つらいよね。
それはすごく分かる。それでも、やりたいなら勇気を出してやってほしいと思う。
誰が何と言おうと、自分の人生は自分のものだし。後悔した時に「あの時、あの人があんなこと言わなければ……」なんて他人に責任転嫁するのも嫌じゃない?
今、勇気を出さなかったら、この先何度も思い出して後悔すると思う。

私がこういう価値観を持つようになったのって、母の影響も大きくて。私の母はもうすぐ80歳になるんだけど、すっごいアグレッシブな人で。一人で飛行機に乗って、私が今住んでるドバイにも来ちゃうし、自分が好きだと思うことは何でもやる。
歳を取ると、体調を崩したり、思うように動けなくなったりするお友達も増えてくるみたいで、「健康で元気でいられるうちに、やりたいことは全部やっておこう」と思っているみたい。そんな母の背中は、やっぱりカッコいいなと思う。
「二兎追う者は一兎も得ず」なんてことわざもあるけど、あれって、二兎しか追わないから一兎も捕まらないんじゃないかな。十兎追えば、五兎くらいはゲットできる気がする。(笑)
私はこれまで何兎も追ってきた。子どもが4人いる時点で四兎追ってるし、会社もサロンも他のブランドもぜーんぶ合わせると、十兎くらい追ってきたけど、なんとか捕まえてきた。
「そんなパワー、私には湧いてこない」っていう人もいるかもしれないけど、私も同じだよ。しょっちゅう「もう嫌だー!」と思うし、「ケータイの電源切ってやる!」と思うこともある。
そういう時はとりあえず寝るようにしてる。エネルギッシュに何でもやるには休息も必要だから。私はこの見た目だから夜更かしに見られがちだけど、実はめっちゃ早寝(笑)早いときは20時とかに三男くんと一緒に寝ちゃう。
疲れてたら洗い物も全部放置。疲れてイライラしながらやるくらいなら、元気がある朝にまとめてやった方がいいから。
ちゃんと休んでパワーをためて、後悔のないようにやりたいことは全部やる。この生き方は、きっと何歳になっても変わらないんじゃないかな。

書籍情報
子どもも自分も一緒に幸せになる 育児育自論(A-Works)
4児を育てるスーパーシングルマザー!
様々な経験、そして子どもたちが教えてくれた人生で大切にしなければならない16のこと。

取材・文・編集/光谷麻里(編集部)