店舗スタッフからプレスやバイヤーに! 販売経験者のキャリアの選択肢を大きく広げる/株式会社クロスカンパニー
10代~20代の若手女性に人気のブランド『アース ミュージック&エコロジー』を中心に国内外で1200を超える店舗を展開するクロスカンパニー。「生き方が多様化した現在、男女とも働き方も変わってしかるべき」という想いのもと、同社は多様な働き方や一人一人が望むキャリアを実現できるよう先進的な取り組みを進めている。2011年にスタートした公募(キャリアアクション)制度もその1つ。本社・本部、新ブランド店舗への異動を年に4回公募するもので、2014年度には18名が希望の部署への異動を果たしている。
興味のある仕事があっても直属の上司には言えない――
誰もがやりたい仕事に手を挙げられる職場を
自身も公募(キャリアアクション)制度を利用して人事部に異動してきたという小松薫奈さんは、本制度を作った経緯について以下のように語る。
「弊社は現場第一主義のため、本部のスタッフでも繁忙期などは店頭に立つことがあります。現場と多く接点を持つ中で、ファッションアドバイザーとして活躍するスタッフたちが将来を考えたとき、販売以外に興味のある仕事があっても直属の上司には言いづらいという現状が分かりました。やる気のある社員がチャレンジできないのはもったいない。そこで、誰もがやりたい仕事に手を挙げられる制度が作られたんです」
公募される職種にはプレス、バイヤー、人事などの人気職種も多い。多くの企業が中途採用でその道のプロフェッショナルを採用する中、現場スタッフから公募をする理由には同社の「現場主義」という考え方がある。
「当社では本社部門は現場のサポートに徹するというのが鉄則。ですから、本社部門のスタッフであれ、商品を買ってくださるお客さまや、現場スタッフのことをしっかりと理解しなければなりません。人事もプレスも広報も現場を理解していなければ務まらない。それであれば、現場で活躍しており、公募職種に対して熱意を持っている人を登用し、ゼロから育てていきたいと考えています。新卒や中途といった入社形態や社歴、配属ブランドに関係なく、全員が公募の対象なんですよ」
5回目のチャレンジで希望の仕事に!
熱意と行動で希望部署へのキャリアチェンジを実現
公募(キャリアアクション)制度を利用し、異動するには公募部門のマネジャーによる1次面接と、社長の最終面接に通過しなければならない。公募に合格したスタッフは皆、自分のやりたい職種への熱意はもちろん、その職種に必要な力を現場で意識的に鍛えてきた人が多いと、小松さんは説明する。
「例えば、店長を経て公募でプレスにキャリアチェンジした女性は、店舗ブログの閲覧数UPが評価されました。プレスになりたいと考えた彼女は、店舗でもブランドPRはできると考え、店舗ブログの閲覧数を上げることに注力。結果、全国のアース ミュージック&エコロジーの店舗の中で10位以下だった彼女の店舗のブログ閲覧数を2位まで引き上げました。本制度を活用した社員の中には5回目のチャレンジで希望の部署に登用されたというスタッフもいます。自分が望むキャリアステップを叶えるために、店舗で何ができるか考え実行すれば、その職種に就くことができる可能性も上がる。熱意を持って行動すれば希望がかなう仕組みです」
今後、「より利用される制度へとブラッシュアップしていきたい」と語る小松さん。
「最近はやりたいことがあっても、口に出すことができない人が増えているように感じます。可能性のある人が埋もれてしまうのは本当にもったいないこと。そんな人を少しでも減らせるよう、この制度を育てていきたいです」
~Staff’s Voice!~
このままずっと店頭にいるのだろうか―― 新制度で解消された将来への迷い
大学時代は環境問題について勉強していて、将来も環境に関わる仕事をしたいと考えていました。でも、NPOやNGOは社会人経験のある人を採用することが大半。そこでアルバイトを経験したことがあり、仕事にも興味があったアパレル業界の中でも社会貢献に力を入れているクロスカンパニーに入社をしたんです。将来的には社会貢献活動を担当する部門に異動できたらいいなと。
入社から1年経って店舗責任者に登用されたころ、私の中に迷いが生じてきました。このままずっと店頭にいるのだろうかと。店長という新しい立場で5年頑張り、それでも異動がかなわなければ転職も考えようと思っていましたね。公募 が始まったのは店長になって約1年半後。制度がスタートして初の公募でCSR(企業の社会的責任)担当者を募集するというチャンスが巡ってきました。もちろん、即座に手を挙げました。選ばれた理由は、日ごろからボランティア活動に参加したり、大学に通いCSRについて学んでいたことが認められたのだと思います。
CSRとしての最初の仕事は、東日本大震災を機に店舗に設置していた募金箱に集まったお金の行く先を決めること。もう少し募金額を増やせば、大きなことができる。そう考え、募金を増やす取り組みを行いました。具体的には、募金してくださったお客さまにお渡ししていた緑のクローバーバッジを11色に増やすこと。店舗で働いていた経験上、レジ横の募金箱にいつも同じ物が置いてあるとお客さまに飽きられてしまいます。目に留まりやすいようにカラーバリエーションを増やし、季節限定色を作ることでラインナップを定期的に変更しました。狙いは当たり、月間の募金金額は3倍に。最終的に南三陸町の女性に対する仕事支援として、『南三陸ミシン工房』の建設費用と運営資金に充てることができたんです。
実際にCSRを担当してみて、やりたかった仕事に就けているという実感があります。そして何より、クロスカンパニーで働き続けるというイメージを持つことができるようになりました。社会のため、会社のため、そして働く社員たちのため、これからも精力的に動いていきたいです。
取材/文 朝倉真弓 撮影/洞澤 佐智子(CROSSOVER)