転勤族の夫との結婚を機に営業からエンジニアに転身「会社員としてキャリアを築けることにホッとしています」

未経験からエンジニアになる女性が急増中! 実際にキャリアチェンジをした先にはどのような未来が待っているのだろう。先輩たちのリアルをのぞいてみよう
株式会社ユーザベースでエンジニアとして働く岩本直海さんは、転勤の多い夫との結婚を機に、それまで勤務していたハウスメーカーを退職。
転居を繰り返す「転勤族」の妻でも続けられて、さらにキャリアを伸ばしていける仕事を探す中で、「スキルを生かしてリモートで働けるエンジニア」にたどり着いた。
何も分からないゼロからのスタートだったが、今は心から仕事を楽しんでいるという岩本さん。エンジニアのどのようなところに引かれたのだろうか。
4カ月間、スクールに通ってゼロから技術を習得

通っていたスクールのイベントに登壇する岩本さん

株式会社ユーザベース 岩本直海さん
関西大学卒業後、ハウスメーカーに就職し、営業職として従事。結婚をきっかけに、ソフトウエアエンジニアへキャリアチェンジ。2023年3月に株式会社アルファドライブに入社し、4月から株式会社ユーザベースに転籍となり、現在SSOシステムなどを開発している
私がエンジニアへのキャリアチェンジを考えたのは、転勤族の夫との結婚がきっかけでした。
「転勤族でも続けられる仕事ってなんだろう?」と調べていく中で、資格やスキルがあった方が有利だと思い、まず思いついたのが看護師。
さらに調べていくうちに、エンジニアはリモートワークができて、スキルさえ身に付ければどこでも働けることを知り、とても魅力を感じたんです。
前職のハウスメーカーの営業時代は、顧客管理にSaaS系のサービスを利用していて。エンジニアになれば、多くの人が便利に使えるシステムの開発に携われるかもしれない。単純にすごいことだし、おもしろそう!と思いました。
それに、ハウスメーカーとエンジニアは「ものづくり」という点で共通しています。ハウスメーカーは家を設計し、エンジニアはソフトやサービスを開発する。そこもエンジニアに引かれた理由の一つです。
といっても、エンジニアとしての知識も技術も何もなかったので、まずは女性向けプログラミングスクールのオンライン講座のブートキャンプを約3カ月間受講することにしたんです。
週5日、朝9時から夕方6時までみっちり学び、基本スキルを一通り身に付けたことで、「エンジニアとしてやっていけるかも」とある程度自信を付けることができました。
ちなみに女性向けのスクールを選んだのは、心理的安全性が高そうだと思ったから。エンジニアは理系の男性が多いイメージでしたが、スクールでエンジニアを志す女性が他にもいると知ったことで、改めて「私でもなれそうだな」と思えたんです。
今の会社で働くことになったきっかけも、プログラミングスクールでした。成果発表会に来ていたCTOから会社の話を聞いて興味を持ったんです。現在は、情報プラットホーム『スピーダ』にSSOログインするための認証機能の開発をしています。
エンジニアというと、一日中プログラムを書いているイメージだったのですが、実際はチームで話し合って仕様を決めたり、新しい技術のリサーチをしたりと、プログラムを書く以外の時間も多いです。仕事に変化があり、単調ではないところも、私には合っていると思っています。
岩本さんが思う、エンジニアの3つの魅力
魅力1. つくったものが「誰かの役に立つ」実感が持てる
まず、システムやソフトウエアなどをつくること自体が楽しいです。
最初はどうやるのかも分からないところから始まり、実際に業務として手を動かしてさまざまなシステムやソフトの開発に関われるようになったこともうれしいですね。
スクール時代も、チームでプロダクトやシステムなどのものづくりを経験しましたが、業務になるとつくって終わりではなく、その先の運用までしなければならないのでさらに奥深いなと。
現在開発している認証機能は、ユーザーの利便性とセキュリティーに関わる重要な部分。安全性を担保しつつもユーザーの使いやすさを向上させられた時は、「営業しやすくなった」とビジネスサイドのメンバーからお礼を言われることもあります。
そのたびに、「頑張ってよかった」と手ごたえを感じられますし、自分がつくるものが誰かの役に立っていると実感できることが、最大のやりがいであり、魅力です。
魅力2. 転勤族でも企業に属してキャリアを築ける
岐阜から香川へ転居をしましたが、エンジニアに転職したことで、場所を選ばずに働けています。
チャットツールやビデオ通話をフル活用しているので、フルリモートでもコミュニケーションに不便は感じません。東京本社への出社が3カ月に一度くらいのペースであり、コミュニケーションを深める機会になっています。
ただ、この出社も必須ではないので、今後、家族が増えるなどのライフステージの変化があったとしても、調整しながら柔軟に働き続けられそうです。
転勤族になると分かった瞬間は、「仕事があるのだろうか」「この先、どうキャリアを築いていけばいいのだろうか」と不安だらけでしたが、今こうして企業に所属し、エンジニアとしてのキャリアを築けていることにホッとしています。
社内にはさまざまなバックグラウンドを持つエンジニアがいるので、フリーランスではなく、企業に所属してチームとして働くことに、とても良い刺激を受けているんです。
自分の実力に合ったポジションにアサインしてもらえるので、自分のペースで経験を積みながら、スキルアップできるのもとてもありがたいですね。
魅力3. 「コミュニケーション力が高いエンジニア」のニーズ増
エンジニアの将来性は明るいと思います。
最近では、AIがいろいろな仕事を奪うともいわれていますし、実際にプログラムを書くだけならAIが担えるのかもしれませんが、エンジニアの仕事はそれだけではありません。
ユーザーの求めるものを的確に把握し、それを製品に落とし込むには、技術力に加えて、コミュニケーション力も必要です。コミュニケーションをうまく取りながら、円滑に業務を進められるエンジニアへのニーズはますます高まってくると思います。
現在私は、サーバーサイドやフロントエンジニアなど、幅広い分野に挑戦させてもらえるポジションにいて、スクールで学んだことをベースに、さらに技術を深めている最中。経験を積む意味でも、まずはあらゆる分野に携わりたいです。
まだ経験1年ちょっとのジュニアエンジニアですが、前職で培ったコミュニケーション力と、これから身に付ける技術力、どちらも持ったエンジニアになりたい。それがきっと、私のエンジニアとしての強みになるのではないかと思っています。
「もっとこうしたらいいのに」の素人視点が役に立つ

岩本さんのデスク周り
自分自身のキャリアチェンジを振り返って思うのは、未知の分野へのチャレンジも、最初の一歩さえ踏み出せばどうにかなるんだということ。
私は前職の営業職でパソコン、スマホ、タブレットなどは業務で使っていましたが、エンジニアとしてのスキルはゼロ。当時はWebサイトとWebアプリが違うことすら分からないくらいでした。
スクールに入った当初も、専門用語が全く理解できず、何が分からないのかを言語化するのも大変で……。
でも、自分なりの工夫でどうにか乗り越えてきました。その一つが、言語化できるまで問題を小さくすること。そして、分かっていることも言語化すること。
「これは分かる」「これは分からない」と分類し、分からない部分を明確にすれば、一つずつ解決していけます。
あとは、「分からないことがあって当たり前」と開き直ることで気持ちがスーッとラクになりました。
今はもう知らない言葉が出てきてもアタフタすることなく、キャッチアップの道筋を立てて取り組めています。むしろ新しい経験を積むチャンスだと思えるほど、積極的に挑戦できるようになりました。
仕事でもプライベートでも、誰もが何かしらのツールやアプリを使っていますよね。使っていると「もっとこうしたらいいのに」と感じることがあると思うのですが、その視点はエンジニアになってからも役立ちます。
むしろ素人の視点を持っていることが、未経験からキャリアチェンジした人の強みになることもあるはず。
私は今、エンジニアという仕事が心から楽しくて仕方ありません。興味を持った方は、ぜひ一歩踏み出す勇気を持ってくれたらうれしいです。
岩本さん愛用アイテム『ブルーライトカット眼鏡』

目を酷使するエンジニアにとってブルーライトカットのめがねは必需品
視力は今でも2.0くらいあってとても良いのですが、パソコンやスマホの画面を見る時は、ブルーライトカットの眼鏡をかけるようにしています。使っているのは、ブルーライトカット率が高めのものです。
上の世代のエンジニアの方と話すと、「最近見えにくくなってきた」という話をよく聞きます。毎日、目を酷使しているので、早くから労わることが大事かなと。
使い始めてから、なぜか分からないのですが、肩周りもラクになったんです。無意識に力んでいたのかもしれませんね。今では仕事のときには欠かせないアイテムです。
取材・文/古屋江美子 編集/石本真樹(編集部) 写真/ご本人ご提供
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