採用担当者3名が教える「転職者の年齢」の懸念をクリアする三つのポイント
表立って聞きにくい「これってどうなの?」という転職にまつわる女性たちの疑問を中途採用担当者に直撃!人事のリアルな見解とは……?

転職は若い方が有利。そんなイメージを持つ人は多いだろう。
実際のところ、選考時に年齢はどのくらい影響するのか。
そんな疑問を3名の中途採用担当者にぶつけると、「年齢は気にするポイントではある」という答えが返ってきた。その理由を紹介しよう。
●大手アパレル企業の採用担当者・中野さん(仮名)
●スタートアップの採用担当者・石田さん(仮名)
年齢は「職場に合うか」を判断する材料の一つ
採用時に、転職者の年齢はどのくらい気にしますか?
年齢だけで全てを判断することはないですが、必ずチェックしますね。会社や部署、チーム、ポジションなどによって、マッチする年齢層はどうしてもありますから。
スタートアップの当社の場合だと、平均年齢が低いので、他のメンバーや社風とのマッチングの観点を踏まえて選考を行った結果、採用するのは20代〜30代前半になることが多いです。
選考では候補者の想定配属先をイメージしながら話を聞きます。
アパレルの販売員であれば、お客さまや店舗メンバーとの相性はどうか、ご本人がチームになじんで活躍できるのかを判断する際、年齢は重要な材料になりますね。
当社はスキル重視なので、年齢はそこまで気にしません。採用要件を満たしていれば、何歳だろうと採用の可能性はあります。
ただ、組織全体のバランスを考えた時に、若手を積極的に採用する必要があるのは事実です。
今後の人口動態を考えれば20代の割合は右肩下がり。つまり、若手の採用を積極的にやらない限り、会社はどんどん高齢化していくんですよ。
老若男女を対象としたサービスを展開しているのに、社内の平均年齢がどんどん上がってしまう。そんな危機感がありますね。
「転職者の経歴」という判断軸に加えて、「社内の年齢構成のバランス」という軸もあるわけですね。
ただ、経験やスキルによって50代でも歓迎されることは全然あります。
従業員が全員40歳以上という会社もありますし、反対に平均年齢が低い会社が経験豊富な年長者をマネジャーとして迎え入れるケースもある。
年齢が上がると全ての会社で採用されるのが難しくなるわけではないというのは、強調したいですね。
企業が「年齢が高い人」の採用に慎重になる理由

転職者の年齢が上がるほど、企業の見る目も厳しくなるイメージがあります。
年齢を重ねている分、求めるスキルや経験のレベルは高くなりますね。
加えて、年齢が上がるほど「アンラーンできるか」が選考では重視されます。
アンラーン(unlearn)は、新しい学びを得るために、これまで自分が身に付けてきた知識や技術、経験、価値観などを振り返って整理し、思考をリセットさせることですね。
社会人を長くやっていれば、仕事の進め方や人格はある程度形成されていきますから、一般的に年齢を重ねるほどアンラーンは難しくなると言われます。
転職すれば、環境や求められることは大きく変わる。その中でちゃんとパフォーマンスを発揮できるのか。
その観点で見た時に、年齢が上がるほど難しいと判断されることは増えていきます。それが「見る目が厳しい」のもう一つの理由かなと。
なるほど。年齢を重ねる中で積み重ねたものが「変化への適応」という面でマイナスになってしまうこともあるのですね。
「アンラーンできるか」はどうやって見極めているんですか?
新規事業を立ち上げる際、30〜40代を中心に、堅実さが求められる業界の出身者を多数採用したことがあります。
そのときは、積極性を重視して選考をしましたね。
なぜ積極性が重要なんですか?
転職経験がなく、1社で長く働いている人も多かったので、当社のような環境がコロコロ変わるメガベンチャーに適応できるのか、判断する意味で重視していました。
年齢が上がるほどコンフォートゾーンから出ることが減りますし、特に1社で長く働いている人の場合は環境の変化も少ないことがほとんど。
なので、過去のプロジェクトにどういう姿勢で臨んでいたのか、トラブルをどう乗り越えたのかといった質問から、「受け身でないこと」を重視して選考を行っていましたね。
主体的に変化できるかを見ているわけですね。
ただ、社会人経験が長いほど世渡り上手になる方も多いんですよね。面接で見極めるのはめっちゃ難しいな……と思いました。
年齢への懸念、どうクリアする?

組織のバランスなど踏まえた上で年齢が懸念となる場合、どのような要素があればプラスに働きますか?
「この人が入社してくれたら良い影響がある」というイメージが湧く人は採用しやすいですね。
「突出したスキルがある」「この部署にハマる」「社員の〇〇さんとの組み合わせが良さそう」など、入社後のポジティブな想像ができれば、採用することはあります。
期待したいと思えるポイントが年齢に対する懸念を上回れば、採用の可能性はありますよね。
「業界に精通していて人脈が豊富」
「これから参入しようとしている領域を過去に経験している」
こういった事業や売り上げに直結する何かを持ってる人は特に良いなと思います。
漠然とした期待ではなく、明確な期待を持てることが大事なのですね。
個人的に気になるのは、候補者が「年齢が高いけど採用されるかな?」ばかりを気にして、入社後のことをあまり考えていないケースです。
メガベンチャーの場合、20代が経営者として関連会社を率いることも珍しくありません。
上司が年下になる可能性は高いですが、そこを想像できている人は少ない印象です。
わかります。
配属先の上司が候補者より年下になりそうな場合、選考では候補者の現職のチーム構成と本人の役割、年下のメンバーにどう接しているかなど、立ち回り方やコミュニケーションについて深掘りしますね。
当社の場合は、候補者の興味や使っているアプリを聞いています。特にスマホのスクリーン画面にあるアプリを見れば、情報感度は一目瞭然ですから。
暗号通貨に関心がある人と、『スマートEX』の利用経験がない人であれば、やはり前者の方が若いメンバーともなじめそうかなと思ってしまいますね。
年齢とともに経験を重ねているはずなので、その分の厚みがほしいのは大前提。
その上で、若手メンバーと一緒に働いている姿がイメージできるか、アンラーンして変化に対応する柔軟性があるか、その辺りが選考で確認できると採用はしやすいかなと思います。
企画・取材・文・編集/天野夏海
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