客先常駐で“時短・当日欠勤・フルリモート”を解決したSES社長が語る「ママだから諦めなきゃ」のもったいなさ
客先常駐で働くSESでは、クライアント優先の働き方が求められることも多く、かつては「子育て中は続けられない」という女性エンジニアの声も目立った。
しかし、「客先常駐=働き方の自由度が低い」という常識は、徐々に変わりつつある。
「子どもがいるからといって、エンジニアとしての成長を諦めるのはもったいない」
そう話すのは、クライアント企業のソフトウエアやシステムの開発・保守・運用を担うSES事業を展開するリンク・プロフィット・システム株式会社代表の真野悟さんだ。
同社は、「フルリモート・残業なし」「フォーム申請一つで急な休暇取得もOK」など、子育て中の社員が安心して仕事を続けられる制度づくりに取り組んできた。
客先常駐のクライアントワークが中心のSESで、なぜそのような働き方が可能なのだろうか。
真野さんと、同社で働く子育て中の女性エンジニア二人に話を聞くと、「キャリアを諦めなければならない」と考える女性エンジニアに欠けている視点が見えてきた。
客先常駐で「急に休む」なんて迷惑じゃない……?
SESでは、クライアントに労働力を派遣するというビジネスの構造上、「エンジニアがお客さまに迷惑をかけてはいけない」という暗黙の了解がある。
子どもの体調不良などで突発的に休まざるを得ない場合も、「迷惑がかかるからできるだけ避けたい」「休みますと言いづらい」と考えるエンジニアは多い。
しかし、リンク・プロフィット・システムでは、そうした心理的な負荷を取り除く工夫をしているという。
当社では、子どもの病気などで急に休む必要が出た場合、Googleフォームからの申請一つで休暇がとれるようにしているんです。
そうすることで、やむを得ない理由で休みをとらなければいけなくなった人が「申し訳ない」「すみません」と毎回謝る必要がなくなります。
育児に限らず、突発的に仕事を休まないといけなくなることは誰にでもありますよね。ですから、クライアントには「うちはそういう考え方でやっています」と事前に伝えているんです。
もちろん、こうした説明を受け入れてもらえるのは、クオリティーの高い仕事を提供してこそ。エンジニアには、裁量のある働き方ができる環境と、スキルアップを続けられる環境の両方を提供しているのだ。
そして真野さん自身も四児の父として、仕事と育児の両立の難しさは身を持って経験している。
子育て中の社員が働きやすい会社を目指すのは自然なことだったが、本腰を入れて取り組んだのはパートナーから言われたある言葉がきっかけだったそうだ。
妻が何気なく「エンジニアはスキルがあれば続けられる仕事なのに、途中で辞める女性が多いのって、もったいないよね」と言ったんです。
たしかに、優秀なエンジニアが「お母さんだから」という理由だけでキャリアを諦めざるを得ないなんて、おかしなことだと思いました。
さらに子育て中の女性エンジニアが活躍することは、子どもを持たない社員の働き方改革にもつながると、真野さんは断言する。
子育て中の社員が働きやすい環境は、介護や自身の体調不良時はもちろん、趣味に熱中したい時などに「融通がきく働き方」ができるということ。
つまり、全ての人に働きやすさを提供できると考えています。
コロナ禍を経てクライアントの意識も変化
また、コロナ禍を機に、クライアントの考え方にも変化が起きていると真野さんは言う。
実は、コロナ禍以前はクライアントから「フル出社で働ける人ではないと無理だ」というご要望をいただくことが多かったんです。
当時は、「エンジニアがリモートワークをするなんて論外」「時短勤務は困る」といった反応がほとんどでした。
するとどうしても子育て中のエンジニアを派遣できる会社が限られてしまい、同社でも頭を悩ませていたと続ける。風向きが変わったのは、コロナ禍の到来だ。
状況が一変し、「リモートワークでも、仕事の進捗には影響がない」ことが明らかになりましたよね。特にIT業界ではその傾向が顕著で、スキルさえあればフルリモートを認める企業も増えました。
さらに、業界の人材不足を背景に「時短でもいいから人がほしい」という企業も増え、「エンジニアの柔軟な働き方」の実現に追い風が吹いてきたのです。
その後、同社ではエンジニア採用の対象者を拡大。リモートワークや時短勤務なら「エンジニアとして成長できる」と考える女性たちが入社しているという。
また、「働く時間や働き方の制限さえなくなれば、給与や評価などの面でも男女差がなくなり、スキルで勝負することが可能になる」と真野さん。「子育て中だからという理由で、キャリアを妥協しないでほしい」と呼びかける。
せっかく働くのなら、子育て中であってもスキルを磨くチャレンジを続けた方が絶対にいい。
エンジニアとして市場価値が上がるような仕事を続けていければ、子育てが終わった後のキャリアにも活かされるでしょう。
ぜひ、そういう選択肢があることを、皆さんに知ってほしいですね。
「自由と責任」のもと、開発業務に挑戦
現在、同社で金融系システムの開発案件に携わっている長野さんは、二児の母。自宅からフルリモートで働いている。
私が転職を決意したのは、エンジニアとして新しい業務範囲に挑戦したかったのと、プライベートも大切にしたかったから。
うちには小学生が二人いるのですが、子どもの病気など、突発的な事情で休んだり早退したりすることがあります。
でも、業務の納期とクオリティーさえ守れば、働き方に関しては融通がきくので助かっています。
ただ、その分、仕事の責任も伴います。クライアントへの説明、期限厳守は当然のこと。日頃からクオリティーの高い仕事を提供できるようになるためのスキルアップは欠かせません。
そんな長野さんが感じているのは意外にも、「時短勤務だからこその強み」だ。
私のように時短勤務で働くママエンジニアは、限られた時間をやりくりして集中して業務に取り組み、勉強する時間も効率よく捻出できている人が多いです。
働く時間が短いことはマイナスではなく、逆にそれが自分の強みになることもあると実感していますね。
子育て中でも「スキルアップ」は目指せる
未経験から「プログラミングスキルを身に付けたい」とリンク・プロフィット・システムに入社した渡辺さんも、一児の母だ。
数あるSESの中でも、リンク・プロフィット・システムは「女性エンジニアのキャリアと仕事とプライベートの両立を大切にしていることが入社の決め手だった」と話す。
また、渡辺さんは業務未経験で入社したにもかかわらず、働き方はフルリモート。入社したばかりの頃は仕事を覚えられるのか不安だったが、「いざやってみたら問題なかった」と笑顔で語る。
同じ案件にアサインされている先輩や、同じ案件で常駐する他社のエンジニアの方にも気軽に質問できる環境だったので、安心してスキルを身に付けることができました。
転職前の自分のITスキルは、事務作業の効率化のためにマクロを組んだことがある程度。ですが、今では自分でコードを書いてシステム開発ができるようになりました。
エンジニアとしての成長を感じられたときは、とてもうれしかったですね。
サービス業、事務職、エンジニア……とライフステージに合わせて職業・職場を変えてきた渡辺さん。
自身の経験から、「新しい挑戦はいつだってできると思う」と話す。
エンジニアに限らず、「ママになると転職が難しい」と考える人もまだ多いと思います。
でも、広い視野を持ちながら「自分にはどんな挑戦ができるんだろう?」と意欲を持って動き出せば、新しいことに挑戦するチャンスは必ずめぐってくる。
ライフステージが変わっても、キャリアアップしたり、成長したりできるんだと、多くの人に実感してもらいたいです。
子育て中も、自分らしく働き続ける長野さんと渡辺さん。自身の「キャリアアップ」したいという意欲に合った会社のスタンスや働き方次第で、それは叶えられるのだと、彼女たちの姿が証明してくれた。
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取材・文/キャベトンコ 撮影/吉永和久