11 NOV/2024

「姿勢はポジティブに、仕事はネガティブに」27歳の新任営業マネージャーの意識を変えた一言【サイバーエージェント】

不安でも、強くなくてもいいんじゃない?
“等身大”の女性リーダーたち

女性管理職登用に注力する企業が増加する一方で、当の女性の中には「自分に管理職が務まるか自信がない、イメージが持てない」と不安を抱く人も少なくない。そこで本特集では、当事者のインタビューや識者の解説を通して、“等身大のリーダー像”を徹底考察。自分なりのリーダー像や、管理職のロールモデルを見つけてみよう!

マネージャーは、みんなの元気玉で未来をつくるような仕事

そう元気いっぱいに話すのは、インターネット広告事業などを展開する株式会社サイバーエージェントで管理職として働く服部京佳さん。

入社5年目を迎えた昨年マネージャーに昇進し、現在は10人のチームメンバーを率いて、東京と関西圏のクライアントにインターネット広告の提案を行っている。

「以前は、マネジャーの仕事を『メンバーを管理すること』だと思っていて、自分にそれができるイメージが湧かない時期もあった」と明かす服部さん。

なぜ、そんな彼女がマネジメントの仕事を楽しめるようになったのだろうか? 管理職に対するイメージを変えるきっかけとなった、彼女の原体験を聞いた。

株式会社サイバーエージェント

株式会社サイバーエージェント
インターネット広告事業本部マネージャー
服部京佳さん

内定者インターンを経て、2020年同社に新卒入社。インターネット広告事業本部でアカウントプランナーとして経験を積み、2023年より現職

「マネージャーは未来をつくる人」価値観を変えた上司との出会い

編集部

服部さんは、現在どんなチームでマネージャーをされているのでしょうか?

服部さん

インターネットを活用したマーケティングにおいて総合的なソリューションを提供するインターネット広告事業本部で、クライアントの広告効果を最大化するアカウントプランナーが所属する約10名の組織を率いています。他社でいうと、営業部のマネージャーのようなイメージですね。

編集部

新卒入社5年目で早くもマネージャーになられたんですよね。もともと管理職を目指していたのですか?

服部さん

当社は比較的若くして管理職になる人が多いので、同期も何人か昇進していますし、私が特別早いというわけではないんですよ。

そして私は最初から明確に「管理職になりたい」と思っていたわけではありませんでした。

管理職って、上下関係があって、部下を「管理する人」といったイメージがあって。そういう肩書きにこだわりたくないな、と考えていました。

編集部

何となくネガティブなイメージがあったのですね。

服部さん

そうなんです。私自身は「皆の上に立つ」存在になるイメージは湧かなくって。

でも同時に、私一人で仕事を進めていては絶対に達成できないアウトプットがあるとも考えていました。

チームで動けば、クライアントに対してももっと大きな提案ができるし、成果にもつながる。そんな思いを当時の上長に伝えたら、昇進のチャンスをもらえたのです。

マネージャーは「上の人」ではなくて、「未来をつくる人」と考える服部さん
編集部

チーム戦で大きな仕事に取り組みたかったと。

服部さん

はい。それこそ優秀なメンバーたちと、映画のスーパーヒーローたちが集まる「アベンジャーズ」のようなチームができたら最強だなと考えていました。

編集部

それは素敵ですね。 でもアベンジャーズのようなチームを率いるリーダーになるのではなく、「最強の戦士」の一人になる選択肢はなかったのでしょうか?

服部さん

私には憧れている女性の上司がいて、その方を見ていると、マネージャーは「上の人」ではなくて、「未来をつくる人」なんだと思えたんです。

彼女のように戦略や未来を描いてチームの先頭に立つ人になりたいと、自分の理想のマネージャー像が具体的にイメージできたので、昇進を受け入れました。

編集部

身近なロールモデルがいたのですね。

服部さん

メンバーにこんなふうに思わせるリーダーってすごいなと思いますし、上司の存在が「自分もチームを作ってやってみたい」という好奇心にもつながりました。

あとはこの仕事って、インターネット広告一つで、お客さまのマーケットが変わる瞬間があるんですよ。そこに立ち会えた瞬間は震えるほどうれしいですから、私がリーダーになることでこの喜びをチームのメンバーにも多く味わってほしいと思いました。

チームは「オフェンス」だけでは成り立たない

チームは「オフェンス」だけでは成り立たないと語る服部さん
編集部

実際にマネージャーになってみて、苦労はありましたか?

服部さん

自分がプレイヤーのときは「イケイケドンドン」のような猪突猛進型で、攻めのスタイルで仕事を進めていたんです。時には力技で押し切ることもありました。

でも管理職になって、オフェンスだけではなく、ディフェンスも考えないと、チームとしての方向性がずれていってしまうことを痛感しましたね。

編集部

これまでの仕事の仕方ではダメだったと。

服部さん

ええ。自分が一人で進めばいいだけの時と、チーム全体を動かすことには大きな違いがありました。その難しさを感じている時に、ある先輩が「姿勢はポジティブに、仕事はネガティブにいこう」と教えてくれたんです。

編集部

仕事はネガティブに?

服部さん

今までのように100%ポジティブなまま突っ走るのではなく、起こりうるリスクを予測して、柔軟に対応できるように準備を怠らない姿勢が重要だということです。

そしてリーダーがリスクに気を配ることで、メンバーの成長を諦めずに「一人も置いていかないチーム」を作れるようにすることが大切だと教えてくれました。

そういう意識を持つことで、より一層メンバーに気を配れるようになりましたし、チーム全体の成果の最大化にもつながっているように思います。

「アベンジャーズ」を率いて「元気玉」をつくりたい

「アベンジャーズ」を率いて「元気玉」をつくりたいと考える服部さん
編集部

メンバーマネジメントで気を付けていることは何ですか?

服部さん

若手には真正面から向き合うこと、逆に私よりも年次が上のメンバーには「やり遂げたいことがあるので、あなたの力を貸してほしい」という思いで接することを大切にしています。

リーダーシップをとらなきゃいけないと固くなりすぎずに、「こういった成果を出したいけれど、ここが分からないからあなたを頼りたい」「相談させてほしい」と、素直に頼る。そうすると皆が協力してくれて、成果につながるように思います。

編集部

一人でできないことは周りに頼る、そんな素直さは大切ですよね。

服部さん

もちろん頼りっぱなしではダメで、前提として私の戦略の精度を上げることが大切です。

私が良い戦略を描いて、チームが実現に向けて動いて、お客さまの成果につなげていく。そういった良いサイクルができれば、お客さまもメンバーも幸せになると思うんですよ。それがやりがいであり、私の喜びでもあります。

あとはマネジメントは大前提、メンバーに対する愛が大切だと思います。

編集部

愛、ですか?

服部さん

心からメンバーを応援し、成果を喜ぶマネジャーになることです。

それは私自身もメンバー時代に上司や先輩にやってもらっていたので、受けた恩を先輩に返すのではなく、後輩となるメンバーに託していく「ペイ・フォワード」の精神を大切にしています。

編集部

先輩からやってもらったことを、次は後輩に受け継いでいく。良い組織ですね。

服部さん

メンバーが強くなれば、お客さまにももっと貢献できますから、そうやってメンバーへの愛をもって、一人一人の強みをスケールアップできるようなリーダーでありたいですね。

マネージャーの仕事は、メンバー全員の力やアイデア、モチベーションを集めて、それを戦略的に使って成果を出すことです。だから私は『ドラゴンボール』に登場する「元気玉」を作るようなイメージをしているんですよ(笑)

今後は「アベンジャーズ」のようなチームを率いるために、もっと大きな「元気玉」をつくっていけるといいなと思っています。

編集部

ペイ・フォワードの精神を大切にしながら、元気玉で未来をつくる。それが服部さんの「等身大のリーダー像」ですね。ありがとうございました!

文/宮崎まきこ