ITコンサル採用で女性SEの需要高騰、「売り手市場」にこそ知っておきたいミスマッチ転職を招く三大要素とは

ITコンサル転職でミスマッチ入社を防ぐには?会社選びのポイントを識者が解説

いま、コンサルティング業界で女性採用が盛況だ。

かつては激務や長時間労働のイメージが強い時代もあったが、働き方改革やコロナ禍に進んだリモートワークの導入などで、コンサルタントの労働環境は様変わり。

仕事で得られる成長もワークライフバランスも大事にしたい女性たちが、コンサルタントに転身する事例が増えている。

女性×ITコンサルタント採用に「かつてない追い風」

女性の転職・キャリアに詳しいオールラウンダーエージェントの森本千賀子さんは、「DX(デジタルトランスフォーメーション)推進に取り組む企業の増加によって、ITコンサルタントの需要がますます高まっている」と話す。

森本千賀子さん

morich代表取締役 兼 オールラウンダーエージェント
森本 千賀子 さん

転職エージェントとしてCxOクラスの採用支援を中心に、社外取締役・アドバイザー等の立場でのスタートアップ支援をライフワークにパラレルキャリアを体現。NHK『プロフェッショナル~仕事の流儀~』『ガイアの夜明け』等、各種メディア出演多数。最新著に『「選ばれる人」の新常識 リミットレス時代の転職術』(日本経済新聞出版)がある

いまや大手企業のみならず、中堅中小企業においてもビジネスのデジタル化は急務。「デジタルツールの活用を推進したい」「テクノロジーでイノベーションを起こしたい」など、コンサルティングファームに寄せられる相談の多くがDXに関するものだという。

森本さん

2025年以降も、DX推進やAI活用へのニーズは高まり続けていくでしょう。それと同時に、テクノロジーに造詣が深く、ビジネスに精通したITコンサルタントの需要も高騰していきます。

SIer等で顧客折衝を経験したことのあるエンジニアなら、転職市場で引く手あまたの状態。

コンサルタント未経験であっても、これまでの経験を生かしてキャリアアップしやすい状況です。

複雑化する経営課題の解決には、多様な視点を持ったコンサルタントの存在が不可欠。女性コンサルタントの視点を取り入れることで既存のコンサルティングを見直し、新しい発想を生み出そうと試みる企業も多い。

また、ESG経営(※)の重要性が叫ばれる中で、各社が女性活躍推進を加速させている。その結果、「コンサルタントへの転身を検討している女性にとっては、かつてないほど追い風が吹いている状況」だと森本さんは言う。

(※)ESGとは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス)の頭文字。環境や社会への配慮、健全な管理体制の構築などによって持続可能な発展を目指す経営

「こんなはずじゃなかった」ミスマッチ転職を招く三大要素

一方、転職者が直面するのは、数あるコンサルティングファームの中から「自分に合う一社」を見極める難しさだ。

会社規模や得意領域、働き方や社風など、コンサルティングファームの特徴は千差万別。異業種からの転職で後悔しないためには、自分の価値観とマッチする会社を見極める必要がある。

DX推進やシステムアドバイザリーなどを通して中堅中小企業の経営支援を行う青山システムコンサルティング代表取締役の野口浩之さんは、長年にわたりITコンサルタントの採用を手掛けてきた一人だ。

未経験からコンサルタントに転身した人材を数多く育成してきた野口さんによれば、会社選びでミスマッチを起こす人には、大きく分けて三つの共通点があるという。

青山システムコンサルティング代表取締役 野口浩之さん

青山システムコンサルティング代表取締役
野口浩之さん

情報システムのライフサイクルであるシステム化計画からシステム開発・保守運用まで、幅広い知識と経験を持つ。IT部門におけるITガバナンスからシステム利用部門の業務改善に至るまで、企業のIT環境を最適化するコンサルティングを強みとする https://www.asckk.co.jp/

【ミスマッチ転職を招く三大要素】
1.知名度重視の会社選び
2.職種理解が不足している
3.会社への期待値が高い

1.知名度重視の会社選び

野口さん

未経験の方に特に多いのが、「有名な会社」を「いい会社」だと信じ込んでしまうこと。転職サイトの中で目立つ求人だけを見て応募先を選ぶ人は少なくありません。

ただ、常に求人を出し続けている会社は、組織の拡大に人員配置や制度づくりが追いついていないことも。知名度が高い企業であっても、離職者が多いために採用し続けなければいけないケースもある。

野口さん

逆に、これまで自分が知らなかった会社の中に長く働ける「いい会社」が隠れていることもあります。

大事なのは、知名度よりも自分の経験・価値観とのマッチングを重視すること。

企業探しの段階では自分の視野を広げることを意識して、各社の採用情報をフラットに見てみることをおすすめします。

企業選びの視野を広げるために有効なのは、コンサルティング業界で働いている知人に話を聞いてみたり、カジュアル面談を通して社員の話を聞いてみたりすること。

「地道な情報収集をおろそかにせず、試してみてほしい」と野口さんは呼び掛ける。

青山システムコンサルティング代表取締役 野口浩之さん

2.職種理解が不足している

実は、コンサルティング業界の中でも「コンサルタント」の定義はあいまいだ。

経営アドバイザリーをコンサルティングとしてとらえている企業もあれば、システム開発やシステム導入の支援をすることをコンサルティングと称している企業もある。

野口さん

まずは、自分はそもそもどんなコンサルタントを目指したいのか、コンサルタントとしてどんな仕事がしたいのかを明確にすること。

そして、採用企業が自社のコンサルタントに求めている成長や業務内容は何なのか、面談や面接の段階で聞いてみて確かめること。

その双方を入社前に照らし合わせることが大切です。

3.会社への期待値が高い

未経験でコンサルティング業界に転職する場合、入社後に「会社に育ててもらおう」というスタンスになってしまう人も少なくない。

また、求人でPRされている「いい話」だけをうのみにして期待値を高めて入社した結果、現実とのギャップに苦しむケースもある。

野口さん

何とかして人材を採用するために、「育成環境が整っていること」や「待遇が充実していること」などいい面ばかりを打ち出すコンサルティングファームも多いのが実情です。

ただ、どんな会社にもウィークポイントは必ずあるもの。

その会社で長く働き続けられるかどうかは、そのウィークポイントを「受け入れられる」か「自分で改善できる」と思えるのかにかかっていると思います。

会社のウィークポイントは求人票を見ただけでは分からないことが多いので、カジュアル面談や面接の場で採用担当にぜひ確認してみてください。

青山システムコンサルティング代表取締役 野口浩之さん

さらに、未経験でコンサルティング業界への転職を目指す場合、「分からないことがあって当然」だと野口さんは言う。

野口さん

先ほどもお伝えした通り、コンサルティングの概念自体が企業によってばらばらだったり、業務内容も企業ごとに違うからこそ、転職者にとっては「分からないこと」がたくさんあると思います。

とはいえ、面接の場で「分からない」と言う勇気が持てず、「知ったかぶり」をしてしまった結果、入社後に「こんなはずじゃなかった」と苦しむケースも少なくありません。

面談や面接の場では、分からないことは分からないと言うことも重要。

やったことのない仕事に挑戦するわけですから、「分からない」ことを認識すること自体がスタート地点です。

等身大の自分を見せた上で「ゼロから学ぶ」ための行動がとれた人の方が、結果的に転職後も長く活躍できる印象ですね。

公正中立な立場で、クライアントの経営課題を解決に導く

野口さんが代表を務める青山システムコンサルティングでも現在、女性ITコンサルタントの採用に力を入れている。「チームに多様な視点を取り入れて、クライアントに提供する価値を最大化していきたい」と期待を寄せる。

同社の最大の特徴は、「独立した組織であること(独立資本)」「システム開発をしないこと」「代理店ビジネスをしないこと」この三つの基本理念として、コンサルティング・ファームとして本来あるべき「公正中立」の立場を貫く点だ。

中堅中小企業のIT環境を最適化するコンサルティングに強みを持ち、1995年の創業以来、少数精鋭の組織で堅実に利益を拡大。

全社員の「顔が見える」マネジメントにこだわり、20名程度の社員数をキープしながら、会社の成長と合わせてコンサルタント一人一人への利益分配を最大化することに務めてきた。

青山システムコンサルティング代表取締役 野口浩之さん
野口さん

われわれ自身はシステムやプログラム開発はやりませんが、システム開発に携わるプロジェクト自体は多いので、SE経験者が多く活躍しています。

クライアントは中堅中小企業がほとんどなので、コンサルタントが提案を行ったり、普段やりとりをさせていただいたりするのは経営者の方々がメインです。

各社が抱える問題に対し、しがらみにとらわれずに課題解決の方法を考えられる。そして、本質的な提案ができる。そこに魅力ややりがいを感じてくださる方が多いですね。

野口さんが重視するのは、クライアントに提供する価値を最大化すること、この一点だ。そのため、コンサルタント一人一人の裁量が大きく、自由度の高い働き方がかなう環境づくりにも力を注いでいる。

野口さん

われわれのプロジェクトは、コンサルタント1〜2名で担当するものが多いので、自分でスケジュールを調整すれば、時間の使い方も働く場所も基本自由です。

リモートワークメインの人もいるし、出社と在宅を織り交ぜてハイブリッドワークにしている人もいます。クライアントのご要望を重視しつつ、自分が働きやすい環境を選んでもらっています。

社内には子育て世代も多いので、育休を取ったりお子さんの看護で休暇を取得したりする男性社員もいます。クライアントとの約束を果たせれば、どのように成果を出すかは社員に委ねていますね。

また、コンサルタントに支給される給与も、個人と会社全体の業績に連動。頑張りが収入に反映される仕組みはモチベーションの向上につながりやすい。

野口さん

学び続けることが好きな人や、自分で仕事を組み立てて裁量を持って働きたい人、頑張りに応じた報酬を得たい人や企業の経営課題を本質的なところから解決していきたい人であれば、大きなやりがいを感じてもらえると思います。

エンジニアからコンサルタントへの転身を検討している人は、自分と企業の価値観がマッチするのか確かめてみるために、詳しく話を聞いてみてはいかがだろうか。

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青山システムコンサルティング代表取締役 野口浩之さん

取材・文/栗原千明(編集部)撮影/吉永和久