【新人リーダーへ送る六つの教訓】リモート下の組織づくりは何が大事? 先輩管理職に学ぶマネジメント術/SmartHR
女性管理職登用に注力する企業が増加し、リーダーや管理職に任命される20、30代の女性も増えてきた。しかし、会社から抜擢されても「スキルも経験も足りないのに、私が管理職なんて……」と不安に感じてしまうこともあるだろう。
そこで今回は、急成長中のベンチャー企業3社の女性マネージャーにインタビューを実施。彼女たちの失敗談や、経験から得たマネジメントノウハウの中から、新米管理職が今すぐに実践できる教訓を学んでいこう。
今回お話を聞いたのは、SmartHRのブランディング統括本部で12名のデザイナーやディレクターのチームを率いる元田有紀さん。
元田さんはもともとマーケティングやコンテンツ編集の部署出身。デザイナーとして働いた経験はなく、現在の部署の仕事は管理職として配属される以前は専門外だったという。
さらに元田さんは、リモートワークが中心の働き方。全員がばらばらの場所で働く中で、どのようにメンバーとコミュニケーションをとり、チームの士気を高めているのだろうか?
元田さんが管理職として学んだ六つの教訓を紹介しよう。
「手を動かさず、旗振り役になる」ことに戸惑った新人マネージャー時代
——元田さん自身がマネージャーになって、はじめに不安に感じたことは何ですか?
今の部署ではないのですが、マネージャーになると自分で手を動かすことが減るので、私がいなくてもチームが回ることには漠然とした不安がありました。
組織として成果を最大化するために自分に何ができるのか、イメージがあまり湧かない中で、自分が先頭に立って旗を振り、「ここに向かっていくぞ」と示すことがすごく苦手でしたね。
——メンバー時代は、旗に向かってとにかく走ればよかったけれど、その役割が変わると戸惑いますよね。どうやって乗り越えたのでしょうか?
まずは現場のメンバーが考えていることや私への期待、上司や会社が考えているチームに対する期待を、言語化することを徹底しました。
チームの存在意義、ミッションやビジョンなどの共通認識をつくるためにも、ここは時間をかけて丁寧にやるようにしましたね。
それと並行して、社内のワークショップやコーチングを通して、自分がどうあるべきかを考える時間をとるなど、模索していきました。
——メンバーや上司との対話と内省を繰り返すことで、自分やチームに向けられている期待を言語化したと。
はい。その過程はチームや職種が変わっても徹底するようにしています。
自分やチームに向けられている「期待」を言語化しよう
——デザイナーやディレクターの皆さんが所属する現在の部署は、ご自身の専門外の職種ですよね。そこにやりづらさは感じませんか?
実は、そこまでやりづらさを感じたことはありません。
なぜなら、大前提として、スキルやクオリティーの担保は、デザインやディレクションスキルが高いリーダーがおり、任せられるチームだったからです。
そんな中で私ができるのは、チームの課題を見つけて、その解決に向けて動くこと。
もちろん業務で分からないこともありますが、それは直接メンバーに聞いちゃっていますね。マネージャーだとしても、分からないことは本当に分からないので。
そしてそのときメンバーにも分からないことがあれば、そこに何かボトルネックがあるのかもしれないと、深掘りを続けていくと課題が見つかることもあります。
専門的なスキルが足りなかったとしても、まずはそうやって現状を理解していくことが大切だと思いますよ。
はじめは現場の皆さんが出席するミーティングにはとにかく同席したり、メンバーとの1on1の頻度を上げたりして皆さんの声を聞いていました。
特定の専門スキルが足りなくても、現状の深堀りから見つけられる課題がある
Slackコミュニケーションは、率先してふざけていい
——今はリモートワーク中心の働き方とのことですが、オンライン上のマネジメントで意識していることはありますか?
当社はもともとSlackを使ったテキストコミュニケーション文化が根付いていて、絵文字だけで何千個もあるくらい盛り上がっているんですよ。
その中でも、私は率先してふざけるようにしています(笑)
——ふざける…!?
はい。もちろん業務は真剣にやっていますが、まずはメンバーにとってSlackを心理的安全性の高い場所にすることが大切ですから。
「明日は推しのライブに行ってくるので今日一日頑張ります!!」とか雑談したり、面白いスタンプをつくったり、盛り上がるようなコミュニケーションは、対面よりも意識していますね。
あとメンバーの好きなことや生活スタイルなどを知る意味でも、雑談的なコミュニケーションには重点を置いています。
テキストコミュニケーションは自ら率先して盛り上げよう
——他に、リモート下でのマネジメントで気を付けていることはありますか?
メンバーが他部署との仕事をする際のハードルがある場合に、なるべく自分が「最初の接点」になるように意識しています。
いま当社は社員数が増えていて、誰が何の仕事をしているのか見えづらくなっているんですよ。
オンラインで顔も見えない中で、仕事のキーマンが誰か分からず、手が止まってしまうメンバーも少なくないと思います。
だからこそ私が率先してメンバーをつなげるよう導いてあげて、あとの実業務は本人に任せるようにしたら、皆がやりやすいかなと思っています。
メンバーをつなぐ最初の接点になろう
——メンバーの業務の最初のハードルを、一つ取り除いてあげているんですね。
あとは、メンバーの成功をチームだけではなく社内の他部署にシェアすることも、意識的にやっています。
このメンバーはどんなことができる人で、どんな成果を出しているのかを、周りに知ってもらうための「社内広報隊長」として動いている感じですね。
——社内広報隊長! なぜわざわざ他部署に伝えるのでしょうか?
成果が周囲に知られたら、「この人たちと仕事をすると面白いことができそう」と思ってもらえるでしょうし、社内での信頼ができることでメンバーに新たなチャンスが生まれるはずです。
そうやって部署間の垣根をなるべくなくすことで、チームのより大きな成果につながるのではないかと、最近は特に意識をしています。
メンバーの成果は社内に積極的にPRしよう
リーダーへの不安よりも「選ばれた事実」に目を向けてみて
——いま、女性管理職登用を推進している企業が増えていますが、その傾向をどう思いますか?
仕事内容に性差はないはずなので、数合わせのための女性管理職登用と言われると違和感はありますが……。
でも、多くの場合はやっぱりその会社の中で信頼されたり評価されたりしているからこそ管理職に抜擢されるものだと思っています。
マネージャーになるとチャレンジできることの幅は広がりますし、得られるやりがいも大きいと個人的には感じているので、もし「やってみない?」と言われたら、挑戦してみる価値のある仕事だと思います。
——中には「リーダーになる自信なんてない…」という人も多そうです。
もし自信がなくても、まずは「やってみる」でいいんじゃないかな。私もずっと自分のことを無能だと思っていますが、それでも何とかやれているので(笑)
会社でリーダーや管理職に選ばれたという「事実」は、誰かが自分の頑張りを見ていてくれたということ。
それは周りの信頼を得て、評価されている証拠なので、自信を持って仕事に向き合っていけばいいんだと思います。
ちなみに、私は就職氷河期世代なので、仕事のチャンスってそうそう来ないものだと思って働いてきました。だからこそ機会があったら絶対に逃さず、つかんでしまえばあとはやるしかないと思っていて。
やってしまえば何とかなりますから、これから管理職に挑戦しようとする皆さんには、ぜひ不安よりも、「任されたという事実」に自信を持ってほしいなと思います。
不安よりも「リーダーを任された事実」に自信を持とう
取材・文/大室倫子(編集部)