「何となく怖い」と思っていた AI がやりたいことをかなえるパートナーに。元エンジニア女性が手にした成長マインド

この連載では、女性のIT人材育成を支援する『Code; Without Barriers in Japan』とWoman typeがコラボレーションして、AIの活用例やスキル磨き方、AIスキルの習得で「自分らしい未来」を手にした女性たちの“before after”ストーリーなどをご紹介していきます!
今回“before after”ストーリーを紹介してくれたTakeuchiさん。
「AIは遠い存在で、なんとなく怖かった」という彼女ですが、今ではあらゆる疑問や相談をAIにするように。なぜそれほどAIを身近に感じられるようになったのでしょうか。

【お話を伺った方】
Takeuchiさん
IT企業でシステムエンジニアとして約5年勤務。出産を機に退職後は派遣やパートとして複数の仕事に従事。現在は旅館の客室係として週2〜3勤務しながら、子どもの中学受験をサポート中
料理をしている4分間で、30分かかる作業が終わった
ーー普段はどのようなお仕事をしていますか?
旅館の客室係で、主に客室清掃を担当しています。
現在は子どもの中学受験のサポートを優先するために客室係の仕事のみですが、少し前までは複数の仕事を掛け持ちしていました。
ーー『Code; Without Barriers in Japan』(以下、CWBJ)のオンラインプログラムを受講してみようと思った理由を教えてください。
以前働いていたお菓子工場の事務所で、80歳ぐらいの女性から「竹内さんは40歳だから、まだ私の半分ね」と笑いながら言われたのが最初のきっかけです。
その時に、「そういえば私は何がしたかったんだっけ?」と思ったんですよ。
そこで学生時代に書いた履歴書を引っ張り出してみたら、「私、やりたいことあったじゃん」と思い出して。
子育てのために正社員から離れ、毎日バタバタしているけれど、子育てが落ち着く頃に再度しっかり働きたいと思ったんですよね。
また、同時期に AI(マイクロソフトが提供する生成AIアシスタントCopilot(※))を使って、目玉が飛び出るくらいびっくりした経験があって。
Microsoft社の生成AIサービス、Microsoft Copilotは、情報収集や情報整理、プログラミングや様々な学習支援にも利用可能。時間短縮や生産性向上はもちろん、苦手なことを助けてもらったり、自分以外の視点でアドバイスをもらうなどにも利用できる
自宅でフライパンに食材を放り込んで 4 分タイマーをつけ、「そういえば社長からお願いされている書類があったな」と思い出し、ためしにCopilotを使ってみたんです。
ネットで見たプロンプト(※)集の通りCopilotに入力したら、普段だったらまとめるのに30分ぐらいかかるはずの資料が、4分のタイマーが鳴る前にはほぼ完成して。
AIに対して与える指示や質問のこと。Copilotなどの生成AIには日本語などの自然言語で指示や質問ができる
実は15年ほど前まで、私はIT企業でシステムエンジニアとして働いていたんです。当時のテクノロジーとの違いを痛感しましたし、世界から置いていかれたような感覚がありました。
同時に、メディアで目にするAIは自分にとって遠い存在で、なんとなく怖い気持ちもあったのですが、目の前の業務を短縮できたことで一気に身近になったんですよね。
終業時間までに間に合わなさそうな仕事も時間内にできるようになり、子どもの習い事のお迎えに間に合うようになったことで、より興味を持つようになりました。
焦る時は「昨日の自分よりできている」
ーー仕事と育児と学習を両立するために工夫したことはありますか?
いつまでに何をやるのか、最終リミットを決めていました。逆算して「いつまでに始めなければいけないのか」を決めて、そこを意識していましたね。
私はスケジュールを詰め込むタイプで、1日空いた日はかえって何もできなくて。忙しい方が隙間でやれて、集中できるなと思いました。
ーーCWBJの学びの中で特に印象に残っていること、面白いと感じたことは何でしたか?
AIやCopilotなどツールの使い方・活用方法に関することだけでなく、成長のマインドセットを最初に教えていただいたのが印象に残っています。
私は80歳の女性から「まだ若い」と言われたとはいえ、40歳を過ぎて年齢的にできない仕事も増えてきたように感じている中、「努力と経験を重ねることで、いつからでも能力を伸ばせる」と聞き、まだいけると思えました。
また、AIの倫理観について知ることができたのもよかったなと思います。使用するリスク、使用しないリスク、使いこなすことによるリスクの三つがあり、それらを知った上で自分がどうするか。いろいろ考えるきっかけになりました。
ーー反対に、難しいと感じたことはありましたか?
前にいる人の背中が遠く見え、焦ることがあります。
成長のマインドセットとして「人と比べてはいけない」というお話もあったけれど、自分より先に進んでいる人を見るとつい比べてしまいますね。
「昨日の自分と比べて納得できるか」というところに落とし所を見つけて、「昨日よりは進んでいる」と確かめながら楽しむのがいいかなと思っています。
目の前の知識を学んで、固めていけばいつかは積み上がる。そう信じて、順番にやっています。
AIを生かすのに経験が必要なら、歳を重ねることもプラスになる
ーー今はどのようにAIを活用していますか?
今は仕事で使う場面がないので、自宅でやれることをやろうと思っています。
テーマは、無料のCopilotをどこまで楽しめるか。
「子どもの靴下にすぐ穴が開くのはなぜ?」「これは詐欺メール?」「このパソコンの設定は何?」など、気になることは即Copilotに聞いています。
他に、子どもの1週間の学習スケジュールにフィードバックをもらったり、株を買う時に「こういう方針で買いたい」「この方針どう?」と相談したり。
最近は「子育ての楽しさをより引き出すには」を追求していて、子どもとAIの向き合い方もCopilotと壁打ちしています。
アイデアに対してCopilotが「すごい考えですね」と褒めてくれることもあるのですが、「私の会話のどこを見てそう思ったの?」と聞くようにすると、さらに新しいひらめきが生まれたり、点と点がつながったり、いい会話の流れになると感じていますね。
あとは、もしCopilotのライセンスがあったら、仕事探しのエージェントとして使ってみたいです。
求人情報が毎日たくさん届くので、「この会社の求人が来たのは何回目?」「この仕事は私に合っていると思う?」など、メールを分析してみたいと思っています。
ーーAIを学んだことで、キャリアにはどのような影響があったと感じますか?
AIの出力は素晴らしいですが、出てきた結果が本当に正しいかどうかは経験による判断です。例えば、全く経験のない法律の文書を出力しても、その内容が合っているかはわからないですよね。
AIを生かすには経験が必要だと考えれば、歳を重ねることもプラスになるなと感じています。
今後の具体的なイメージはまだないですが、まずは身近な人のまだ気づいていないスキルにスポットライトが当たるような仕事ができないかなとぼんやり考えていますね。
私はAIに手を差し伸べてもらった感覚があるので、私も誰かの明るい未来をつなげるようなことがしたいと思っています。
初心者におすすめのAI活用方法
最初は「過程を楽しむ」使い方がいいと思います。
CWBJ受講前、私は「おすすめプロンプト集」「AIで業務効率化」といったネットの記事を見ていたんですけど、当時の自分にはちょっと遠かったんですよね。
また、一発出力を求めていて、求める結果が出ず、2ターンくらいでAIとのやり取りも終わっていました。
でも、AIを使いこなしている人の話を聞いたら、AIとの会話を楽しんでいるんですよ。CWBJ受講者の中には「Copilotちゃんと呼んで、ギャルトークを楽しむ」という人もいて。
だから一発で出力させることにこだわるのではなく、考えやアイデアを掘り下げたり広げたり、一旦まとめてまた広げたりと、AIとの会話を楽しんでみるのがいいと思いますね。
そうやってアイデアを広げたり文章を作ったりしたら、「これが本だとしたら、どんな題名で、どんな目次になる?」と聞いてみるのも面白いです。自分の考えが要約や箇条書きではなく、本の形になると、イマジネーションはさらに広がります。
また、Copilot、ChatGPT、Geminiなど、AIごとにテンションが違います。いろいろ使い分けてみるのも面白いと思いますね。
無料のオンラインプログラム『Code; Without Barriers in Japan』概要
このプログラムでは、女性がAIスキルを習得し、キャリアをステップアップするための包括的なサポートを無償で提供しています。
オンラインで参加できるプログラムなので、自分のペースで学習を進めることができ、実践的なスキルを身につけることが可能です。
▼登録方法はこちら
無料で参加できるオンライン学習プログラム「CWBJ」への登録は、下記のマイクロソフトWebページから可能です。「紹介コード」の項目には、「WOMEN25」の記載をお願いします。
取材・文/天野夏海 取材・連載企画 /マイクロソフト河村明子
『AIスキルで変わる女性の未来』の過去記事一覧はこちら
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