「休み過ぎて申し訳ない」妊活に専念するため退職すべき? 販売職女性の悩みにキャリアコンサルタントが回答【妊活・仕事の両立Q&A】

妊活・不妊治療当事者のキャリア形成を支援する『妊活キャリア』代表・国家資格キャリアコンサルタントの田所ゆかりさんが、「妊活&仕事」の両立に悩む働く女性から寄せられたお悩みに回答していきます。妊活中の転職、キャリアアップ……どう考えたらいいの!?
こんにちは、妊活キャリア代表の田所ゆかりです。
国家資格キャリアコンサルタントとして、『妊活キャリア』を通じて妊活・不妊治療当事者の女性たちのキャリア形成支援を行っています。
実は、私自身も20代後半~30代にかけて二度の不妊治療を経験しています。そしてその間に、異業種に転職、起業もしました。
不妊に直面し、自分の思い描いたようなライフプランが描けないことが分かったときの絶望的な気持ち。理想のキャリアを描こうにも、妊活中で身動きがとれないモヤモヤ……。
不妊治療中に経験したあれこれがきっかけとなり、自分が「あったらいいな」と思って立ち上げたのが『妊活キャリア』です。
この連載では、キャリアコンサルタントとして、いち不妊治療経験者として……皆さんの妊活・仕事の両立にまつわるお悩みに回答していきたいと思います。

【Profile】
ルポンコンサルティング代表/国家資格キャリアコンサルタント
田所ゆかり
日産自動車にて電気自動車の開発やベンチャー事業の立ち上げ等に従事した後、デロイト トーマツ コンサルティングに転職。その後、キャリアコンサルティング事業、企業の新規事業化支援などを手掛けるルポンコンサルティングを起業。会社員時代に不妊治療を経験して誰にも相談できず悩んだ経験から、キャリア形成支援の必要性を痛感し「妊活キャリア」事業を立ち上げる。不妊治療中に転職、起業を実現した経験から、不妊治療を言い訳にしない攻めのキャリア構築を得意としている
お悩み:不妊治療に専念するため仕事を辞めるべき?
「不妊治療の通院のため、早退や中抜け、急にお休みをいただくことが増え、職場の人に迷惑をかけているような気がしてしまいます。
みんな面と向かっては悪く言ってきませんが、迷惑だと感じているのではないかと不安ですし、急にシフトを代わってもらうのが申し訳なく会社を辞めようかと思っています。
金銭的な不安はありますが、ストレスを避けたいのもあり妊活に専念するため会社を辞めるか、今の職場で働き続けるか悩んでいます。
<回答>
焦って決断する前に、「自分の気持ち」を軸に考えてみよう
Aさんからいただいたお悩みは、『妊活キャリア』にお越しになる相談者の皆さんからも、よくいただくご相談です。
「会社を辞めた方がいいのではないか」という選択肢が出てくるほどですから、精神的な負担はかなり大きい状況ですよね。
しかし、その決断が「職場の人たちに迷惑をかけているかもしれない」という不安から来ているのであれば、焦って「辞める」判断をする前に一度立ち止まって考えてみましょう。

「周囲に迷惑をかけているかも」というのは、あくまで本当のところは分かり得ない他人の気持ちです。
実は自分が気にしているほど周りは気にしていないどころか、むしろ心配したり、応援したりしてくれているということも場合によってはあります。
ですから、まず何より大事にすべきは、いまの仕事を続けたいのか、仕事と治療を両立していきたいのかという自分の気持ち。
自分の本当の願いをないがしろにして、「かもしれない」他人の気持ちを優先して生き方・働き方を決めてしまうと、あとで後悔するリスクが高まってしまいます。
会社を辞めるメリット・デメリット両方に目を向けよう
また、Aさんは仕事と妊活を両立するストレスを避けたいと思う一方で、金銭的な不安など、「辞めるべきじゃないかもしれない」という気持ちもお持ちです。
不妊治療をしているだけでもかなりストレスはたまりますから、「仕事を辞めたい」と思ってしまう気持ちもよくわかります。
しかし、「妊活に専念する」ために仕事を辞めるという選択は、Aさんにとって本当にストレスを軽減することにつながるのか。
まずは、仕事を辞めるメリットだけでなく、デメリットになりそうなことにもしっかりと目を向けてから決断してほしいなと思います。

例えば、治療の結果は自分ではコントロールできない領域です。
もしも治療がうまくいかない期間が長引いた場合、治療のストレスに加えて、仕事を辞めたことによる経済的な不安がますますのしかかるでしょう。
また、仕事によるやりがいや社会とのつながりを失ったことによる新たなストレスや自己肯定感の低下に直面する可能性もあります。
一方で、仕事は自分の努力や工夫によってある程度コントロールできる領域です。
特に、やりがいを感じられる仕事ができていれば、治療がつらい時の心の支えとなり、メンタルの安定にも役立つという側面も。
職場で自分の状況を話した際にうまく理解を得られれば、仕事の面だけでなく精神的に支えてくれる仲間も見つかるかもしれません。
ですから、「不妊治療と仕事の両立は無理だ」という思い込みだけで判断せず、退職してから後悔することのないように会社を辞めた後のメリット・デメリットを慎重に考える必要があります。
「辞める」以外の選択肢にも目を向けてみる
さらに、販売職であるAさんは、会社を辞めるべきか・残るべきかという二択で悩んでいらっしゃいます。
ですが、そもそも働き方さえ柔軟にできれば、仕事自体を辞める必要はないという可能性もあります。
例えば、シフト制などで時間の自由度が低いがゆえに治療と両立しづらい面があるのであれば、時間や場所に融通が利く職種に転換するという選択肢もあります。
今の職場で柔軟な働き方の実現に向け、相談ができるのであれば、異動により時間の自由度が高い職種へ転換するのも一つの手です。

もしくは同じ販売職のままでも、会社や業界によって働きやすさは異なりますので、職種を変えずとも転職することで、自由度の高い働き方を実現する方法もあります。
他にも、販売経験がある方であれば、リモートワークでできるカスタマーサポートやカスタマーサクセスの仕事など、営業系まで職種の選択肢を広げれば、より柔軟な働き方をかなえやすくなるかもしれません。
ですから、「辞めるか・続けるか」の二択ではなく、時には現在働いている職場や勤めている会社以外の選択肢を広く探すことで、気持ちも行動も前に進めるはず。
妊活中に転職活動をしていいの? という疑問もあるかもしれませんが、妊娠・出産は望んだところで「いつ」かなうかはコントロールできません。
であれば、「妊娠した」ときにどうすればいいか考えてその時に最善の選択ができればいいので、仕事・キャリアの面で自分がどうしたいかをベースに行動した方が後悔しないはずです。

情報提供:『妊活キャリア』
妊活キャリアは、妊活・不妊治療当事者のキャリア形成を支援します。国家資格キャリアコンサルタントによるキャリア相談、e-learning講座、法人向けサービスなどを提供中
■公式サイト
書籍紹介

本書は、不妊治療と仕事に悩む女性が新しい自分を見つけるまでの物語を、キャリアコンサルタントとの対話形式で描いた一冊。サキ子と佐々木の軽快な掛け合いを通じて、キャリア形成の基礎や仕事とライフイベントのバランスの取り方、自分らしい人生を築くための考え方を、物語の一員になった感覚で学ぶことができる。
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『妊活&仕事の両立Q&A』の過去記事一覧はこちら
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