育休明け、時短だから同期に比べて昇進できない、責任ある仕事を任せてもらえない…法律観点で問題はある?【弁護士監修】

育休明け、時短だから同期に比べて昇進できない、責任ある仕事を任せてもらえない…法律観点で問題はある?【弁護士監修】
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セクハラ、パワハラ、不当な扱い。もしかしてコレって違法では……? 働く女性が抱える仕事・職場のモヤモヤを、弁護士が法律のプロの視点から徹底解説。長く心地よく働き続けるための知識を身に付けよう!

今回、回答してくれたのは、ベリーベスト法律事務所の横井浩平弁護士。育休から復帰してキャリアアップの機会が減った気がする…という相談者のお悩みに答えながら、仕事と子育てを両立する女性が備えておきたい法律知識を教えてくれました。

35歳/IT関連

育休から復帰して3カ月。以前と違うプロジェクトのサポート業務を担当しています。時短なので仕方ないと思いつつも、責任のある仕事を任せてもらえず、キャリアアップの機会が減った気がしています。

同期は昇進しているのに、自分だけ取り残されているようなモヤモヤを感じています。「子持ちの女性はこんなものなのかな」と考えると、なんだか納得できません。

横井浩平氏

回答してくれた弁護士
ベリーベスト法律事務所
横井浩平 弁護士

早稲田大学法学部卒業、名古屋大学法科大学院修了。労働問題に特に注力しており、労働案件(交渉、労働審判、訴訟)を多数担当。またその実績から「人事労務」に関する記事を多数監修している。

育休明け・時短で「責任ある仕事を任せてもらえない」は不当?

——今回のケースは、法律的な観点から見て問題はありますか?

仮に同期の方だけが昇進したことが法違反に当たるとすると、男女雇用機会均等法違反(6条1号)や、育児介護休業法違反(10条)が考えられます。

前者は、労働者の性別を理由として、昇進について差別的取扱いをすることが禁止されており、後者では、育児休業をしたことを理由として不利益な取扱いをすることが禁止されています。

しかし、同期の方だけ昇進したことが、性別や育休取得を理由とした差別であると言えない限りは、これらの法違反には当たりません。

また、同期の方だけが昇進したことが、実際に就労をした中での実績に基づいた評価によるものである場合、現実に就労をしていない期間が発生する育休取得者は、法違反に当たることなく事実上昇進が遅れてしまうということは考えられるでしょう。

育休明け・時短で「責任ある仕事を任せてもらえない」は不当?

——「時短だから責任ある仕事を任せてもらえない」ことで、さらに昇進が遅れるのでは、という焦りも出てくるかと思います。

短時間勤務の方についても、パートタイム・有期雇用労働法において、時短でない人と比べての不合理な差別、差別的取扱いが禁止されています(8条、9条)。

具体的には、あなたと同期の方と職務の内容、配置の変更の範囲等を比較して、あなたが責任ある仕事を任せてもらえないのが不合理であるということになれば、違法となる可能性があります。

更に、厚労省の指針では、育休取得者の復帰後の処遇について、通常の人事異動のルールからは十分に説明できない職務または就業場所の変更を行うことにより、当該労働者に相当程度の経済的または精神的な不利益を生じさせることは、「不利益な配置の変更を行うこと」に該当するものとされているので(※)、復帰後にこのような職務の変更等があったのであれば、それも育児介護休業法10条に違反する可能性があります。

※「育児休業又は介護休業をした労働者について、休業期間を超える一定期間昇進・昇格の選考対象としない人事評価制度とすること」についての具体例

——「不利益な配置の変更」になるのかがポイントなのですね。

このように、性別それ自体、育休取得それ自体を理由に差別を受けた、「時短勤務であること」自体を理由に、時短勤務であることに伴って生じるであろう差異を超えた差別を受けた、ということであれば法違反が成立しうるところです。

ただし、同期の方との間で生じている昇進の差異が、何によって生じたかの判断は簡単ではないと言えるでしょう。厚労省が一定の判断基準を示していますので、参考になります。

※妊娠・出産・育児休業等を理由とする不利益取扱いについて

まずは差別の原因、他の要因も考えられないかを確認してみよう

まずは差別の原因、他の要因も考えられないかを確認してみよう

——今回の相談者が「モヤモヤ」を払拭するために取るべき行動は何でしょう?

今回の同期の方のみの昇進や、任せられている仕事の違いに関しては、ご自身と同期の方との勤務実績や、現実の職務内容、配置の変更の範囲の違いを、自身の雇用契約書や、就業規則等を見て確認し、性別や育休取得、時短勤務それ自体以外の原因が何か考えられないかを確認すると良いでしょう。

そして、そのような確認を経た上でもなお通常の人事異動のルールからは十分に説明できないほどの違和感を感じるようであれば、会社に信頼できる上司がいればそのような上司に、あるいは適切な相談窓口があるようであればそのような所で、外部であれば、労基署等にある総合労働相談コーナー等で相談してみると良いでしょう。

そして、労基署・労働局には、性差別や、育休取得に対する不利益取扱いの件等を管轄する雇用環境・均等部(室)もあるので、より直接的な相談ができるでしょう。もちろん、弁護士に相談することも有用です。

——まずは不当かどうかを確認しながら、周りに相談することからですね。

そうですね。今回のケースに関しては、まずは就業規則等を確認し、必要であれば各所に相談すると良いでしょう。

育休を取得していない方と比べると、どうしても取得期間中に就労をしていなかった事実は消えませんし、夜の時間帯に働くことが求められる、あるいは有益である業務につき就労しづらいというハンデがあることは否めません。

しかし、責任のある仕事が全てそうであるということは滅多にないでしょうし、やりたい仕事があれば、積極的に上司に相談をしていくことも有益であると思います。

また、育休を取得した後復帰し、責任のある仕事で活躍されている方は多くいらっしゃいますし、時短でも可能な仕事もあります。今は育休に理解のある職場も少なくありません。法も不合理な差別は認めていませんので、前を向いてお仕事頑張ってください。

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