「AIに仕事を取られる時代こそ、ITを手に職に」知識ゼロから無料で“一生モノ”のスキルを得る方法【専門家監修記事】

「AIに仕事を取られる時代こそ、ITを手に職に」知識ゼロから無料で“一生モノ”のスキルを得る方法【専門家監修記事】

長く働くために「手に職」を付けたいけれど、何をやったらいいのだろう。どの仕事がAIに取られるか分からないし……。

多くの女性が抱えるそんな悩みについて、「ITエンジニアの知識・スキルを学ぶといい」と話すのは、女性のキャリア支援の専門家・田中美和さん。

AIがプログラミングできるようになっているという話も聞くが、なぜ今「ITエンジニア」なのか。

田中さんに解説してもらうと同時に、東京都の「女性ITエンジニア育成事業」で未経験からITエンジニアになった女性たちに、エンジニアデビューのリアルについても聞いた。

株式会社Waris共同代表/共同創業者 国家資格キャリアコンサルタント 田中美和さん

株式会社Waris共同代表/共同創業者
国家資格キャリアコンサルタント
田中美和さん

慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、日経BP社で雑誌「日経ウーマン」の編集記者として3万人以上の女性の声に耳を傾けてきた。2013年に株式会社Waris(ワリス)を共同創業し、フリーランスとして働きたい女性への仕事紹介、リスキリングによる女性の転職・就職支援、女性役員・管理職紹介等の事業を展開。女性のキャリア支援の専門家としてNHK、日経新聞などメディア出演多数。著書に『自分らしく働くための39のヒント』(KADOKAWA)がある。一般社団法人フリーランス協会理事■X

時代が変わっても武器になるスキルの条件

編集部

長く働き続けるために「手に職」を付けたいと思っていても、これから先、どの仕事がAIに代替され、どの仕事の需要が高まるのか。見通しづらいと感じている方は多いですよね。

田中さん

そうですね。特定のスキルや資格があれば安心、という時代ではなくなってきているのは確かです。

編集部

やはり……。では、長く働き続けたい女性たちは、どうしたら市場価値を高められるのでしょうか?

田中さん

まず、「複数のスキルを掛け合わせる」ことを意識していただくといいと思います。

たとえば、「小売業界の知識」×「ITスキル」×「接客力」のように、掛け合わせるスキルが増えれば増えるほど、希少性のある人材になれますから。

編集部

なるほど。その中でも、どんなスキルを選べばいいのでしょう?

田中さん

これからはどの業界でもAIの活用が前提になるので、「AIスキル」との掛け合わせを意識して考えるといいですね。

おすすめは、「現職の業務知識」×「人間にしかできない業務」×「需要のある領域」×「AI」という組み合わせです。

市場価値を高めるスキル選定で意識すべき視点

【1】現職の業務知識
どの業界でもAI活用が進む中で、現場を深く理解していること自体が専門性になります。

【2】人間にしかできない業務
共感や、複雑な調整などは、現時点では人間にしかできないと言われており、「人間ならではの力」が求められる領域を意識することが重要です。

【3】需要のある領域
人材不足の業界や、女性が少ない分野など、市場の需給バランスを見極め、求められている場所に身を置くことも大切です。

編集部

例えば接客業を続けていて「自分には専門スキルがない」と不安を感じている人もいますが、接客業の現場を知っていることも、立派な武器になるんですね。

田中さん

その通りです。これまで培ってきた経験を活かす前提で「人間ならではの力」と「需要のある領域」の両方を満たすスキルを選べるといいと思います。

その条件を満たす代表的な仕事の一つが、ITエンジニアです。

編集部

AIがプログラミングを行う時代でも、「人間にしかできない業務」にITエンジニアは当てはまるのでしょうか?

田中さん

たしかに、非エンジニアやAIでもコードを書ける時代になってきていますが、ITエンジニアに求められる役割も変わってきているんです。

これからのITエンジニアは「コードを書く人」ではなく、「価値を創造する人」になっていきます。

編集部

価値を創造する人?

田中さん

システムを作る際に「ユーザーはどう感じるか」を踏まえて要件を考えたり、構築に際して発生する関係各所との複雑な調整を行ったり。

ITの仕組みを理解した上で、「人間ならではの価値」を発揮しながら、技術でビジネス課題を解決できる。そんなエンジニアが、市場で求められるようになっていくでしょう。

インタビューに答える株式会社Waris共同代表/共同創業者の田中美和さん
編集部

ITの知識やスキルをプログラミングに使うのではなく、ビジネス課題を解決するために活かすのが、今のエンジニアなんですね。

ちなみに、ITエンジニアは需要もある領域なのでしょうか?

田中さん

IT人材は2030年に向けて数十万人規模で不足すると予測されているので、需要の大きい領域であることは間違いありません。

また、女性の少ない業界なので、サービスやプロダクト開発に女性視点を入れるために、女性エンジニアを採用したい企業も多いですよ。

編集部

なるほど。IT業界は「女性である」こと自体も希少価値を高めるんですね。

これからの時代、ITを学んでおくとキャリアの選択肢が広がりそうなイメージが湧きました。

田中さん

これからAIやITは、英語と同じような「共通言語」になっていくはずです。

誰もが持つべきスキルになるからこそ今のうちに習得して、業務知識と掛け合わせながら課題解決ができる人材になっておくことが大切

そうすれば、出産などのライフイベントを経た後も、「ポータブルスキル(どの職場でも通用する汎用的なスキル)」として、女性のキャリアを支えてくれますよ。

東京都が無料で女性のITエンジニアデビューを支援

「未経験からITエンジニアを目指したい」と思っても、プログラミングスクールは高額だし、仕事や育児と両立しながら学ぶのは大変だし……。

そう思って一歩を踏み出せない人たちをサポートする事業がある。東京都の「女性ITエンジニア育成事業」だ。

未経験からITエンジニアを目指す女性を対象に、プログラミングやITインフラの基礎の訓練から、就職支援までを一体化させた事業だ。

東京都の「女性ITエンジニア育成事業」告知ページのサムネイル

プログラミングコース・インフラクラウドコースから希望するコースを選び、6カ月間学べる。いつでもどこでも学習できる「eラーニング」と、就職を目指す仲間たちと共に学べる「集合型訓練」を組み合わせたプログラム構成になっている。訓練期間中は専任のキャリアアドバイザーが付き、求人紹介から履歴書・職務経歴書の作成、面接対策と、就職支援まで一貫して行うプログラムだ。東京都の支援事業になるため、プログラムは全て無料で受けられる。

>>詳細・応募はこちらから

経済的な負担がなくチャレンジできるのは嬉しいポイントだが、「知識ゼロからでも本当に大丈夫?」「仕事や育児と両立するのは大変じゃない?」など、不安を抱く人もいるだろう。

そこで、実際に参加した女性たちの声をご紹介しよう。

IT未経験からプログラムに参加し、6カ月間基礎から学んだ後に東京都の企業にITエンジニアとして就職した佐原由実さん(仮名)と白石あかりさん(仮名)に、プログラムの感想と、エンジニアデビューのリアルについて聞いた。

東京都の「女性ITエンジニア育成事業」に参加して東京都の企業に就職した佐原由実さん(仮名)のイラスト

佐原由実さん(仮名)

前職は営業職。結婚・出産を機に退職し、専業主婦に。8年ほど家事・育児に専念した後、パートでコールセンターのオペレーターとして働く。正社員として就職を考える中でIT業界に興味を持ち、「女性ITエンジニア育成事業」に応募。6カ月の育成プログラムをへて、2025年に東京都内のIT企業にエンジニアとして就職

東京都の「女性ITエンジニア育成事業」に参加して東京都の企業に就職した白石あかりさん(仮名)のイラスト

白石あかりさん(仮名)

前職は都内ホテルの調理師。約8年間勤務した後、派遣社員として不動産会社の情報システム部に入社し、3年ほど事務職に従事。その後、「女性ITエンジニア育成事業」に参加し、現在はITエンジニアとしてシステム運用業務を手掛ける

編集部

東京都の「女性ITエンジニア育成事業」に参加した理由を教えてください。

佐原さん

新卒で入社した会社では営業職として働いていたのですが、結婚・出産のタイミングで退職し、その後はずっと専業主婦として子育てに専念していました。

子どもが少し手を離れてからコールセンターでパートを始めたのですが、次第に「正社員として働きたい」という思いが強くなってきて。

営業時代にデータ作成や分析が好きだったこともあり、「IT業界で手に職を付けられたらいいな」と思って仕事を探していたところ、Instagramで東京都の「女性ITエンジニア育成事業」の広告を見つけて、応募しました。

白石さん

私は調理師として働いていましたが、この先何十年も働き続けることを考えたとき、「調理以外のスキルがなくて大丈夫かな……」と不安を感じるようになりました。

もともとIT分野には興味があったものの、未経験からの転職は難しいだろうなと思い、なかなか一歩を踏み出せずにいて。そんな中で知ったのが、女性ITエンジニア育成事業です。

「これはチャンスだ!」と思い参加を決めました。

編集部

訓練では、どのように知識・スキルを身に付けていったのでしょうか?

佐原さん

まず、パソコンを自宅に届けていただき、オンラインで動画を見ながら基礎を学びました。講義を視聴しつつ、実際に手を動かして理解を深めていくスタイルです。

月に2回は対面講習もあり、直接講師の方に質問できる機会があるのも心強かったですね。

白石さん

まったく知らない用語や仕組みが多く、エラーが出ても「何でエラーが起きてるのかが分からない……」という状態だったので最初は大変でしたが、月2回の対面講習で質問できたので、しっかり解決しながら先に進めたのはありがたかったです。

佐原さん

対面講習会では、保育士資格を持った方が常駐している託児サービスも用意されているので、子どもがいる方もじっくり講義を受けられて。多くの方が利用されていましたよ。

私も子どもがいるので、同年代の同じような境遇の方たちと連絡先を交換し合い、その後も教え合ったりサポートし合ったりできたのはすごく心強かったです。

東京都の「女性ITエンジニア育成事業」でITスキル習得の訓練を受ける女性たちの写真
白石さん

対面講習会以外にも、オンラインで講師の方に質問できる仕組みもありますよね。

講師の方が不在でも、質問を残しておけば後日回答をいただけますし、質問しやすい環境で助かりました。

おかげで疑問を抱えたままにならずに済み、安心して学習を続けることができました。

編集部

オンラインがメインでも、質問がしやすく、孤独感もないのは安心ですね。その他、プログラムに参加して良かったと感じるポイントはありますか?

佐原さん

自分のペースで進められる点ですね。子どもの行事がある時は事前に進めておいたり、時間がある時は先まで進めたり……と、スケジュール調整がしやすかったです。

白石さん

分かります。仕事と両立しながら参加していたので、空き時間をうまく使えたのはありがたかったです。

講義内容も、LinuxやAWSなど実務に直結する内容が多かったので、すごく有意義だなと感じました。

佐原さん

あとは、就職支援までしていただけたことでしょうか。月に一回必ず面談があり、就職活動の進め方や学習進捗を見てくださいました

キャリアアドバイザーの方から「ITパスポートではなく、基本情報技術者試験を受けた方が良い」と助言をいただいたのですが、この資格にチャレンジしたことが、現在勤めている会社からの評価ポイントの一つになったと感じていて。

適切なアドバイスをくださって本当に感謝しています。

白石さん

書類作成から面接対策まで、すごく親身にサポートしてもらえますよね。

これまで一人で転職活動をしていた際は失敗も多かったのですが、丁寧なフォローのおかげで納得のいく転職活動ができたと感じています。

>>詳細・応募はこちらから

東京都の「女性ITエンジニア育成事業」でITスキル習得の訓練を受ける女性たちの写真
編集部

すごく手厚いプログラムですね。今はお二人ともエンジニアとして働いていますが、プログラムで学んだことは現場で活きていると感じますか?

佐原さん

私は今、Salesforceというソフトウエアを活用したシステム構築や、業務改善のサポートを行っています。

プログラムで学んだものとは異なるシステムですが、プログラムで網羅的に基礎知識を身に付けられたので、応用が利いているのを感じます。

白石さん

私はシステム運用のチームに所属しているのですが、プログラムの中で触れていたツールを業務でも使っており、スムーズにスタートが切れました。

日常的に使用するコマンドも講義で習ったものが多く、「今何をしている作業なのか」を理解しながら進められており、学んだ内容が活きていると実感しています。

編集部

エンジニアになって、働き方や年収に変化はありましたか?

佐原さん

コールセンターで働いていた時は、スマホの持ち込みが禁止だったこともあり、子どもが急病のときもすぐに中抜けできなかったり、学校行事も参加できないものがあったりして。

一方、今はフルリモート、フルフレックスで働けているので、生活は大きく変わりました

子どもが体調不良でも自宅で様子を見ながら働けますし、中抜けして授業参観に行ったりもできて、心理的負担がかなり減りました。

年収についても、パート時代と比べると5倍ほど増えました。子どもの習い事や旅行にもお金を掛けられるようになり、本当に人生が変わったなと思っています。

白石さん

私はスタート地点では年収は大きく変わっていないのですが、スキルを身に付けたり資格を取得したりすると大幅に収入が上がる可能性があるので、すごく魅力的だなと感じています!

編集部

最後に、今後のキャリアプランについても教えてください!

佐原さん

Salesforceの新しい資格を取得し、もっと究めていきたいなと思っています。

ITの資格は一度取って終わりではなく、アップデートしていく必要があるんですが、常に学び続けることで自分の市場価値も高め続けられているのを感じます。

白石さん

私はプログラムの中でAWSに興味を持ったので、今はAWSクラウドプラクティショナーの資格取得に向けて勉強を進めています。

今後はさらに上位の資格にも挑戦して、AWS案件に携われるエンジニアになるのが目標です!

>>詳細・応募はこちらから

女性ITエンジニア育成事業詳細

【事業概要】

■訓練内容
<プログラミングコース>6カ月
ITの基礎知識からJavaを中心としたプログラミングスキルを身につける
・基礎知識・HTML/CSS・Java講座・開発演習・資格対策

<インフラクラウドコース>6カ月
ITの基礎知識からサーバ、データベース、AWS等のインフラ知識を身につける
・基礎知識・サーバ・クラウド・構築演習・資格対策

■集合型訓練
eラーニングの学習に合わせ、毎月2回の集合型訓練で振り返りや開発・構築演習を実施します。

■就職支援
<キャリアカウンセリング>
専任キャリアアドバイザーが一緒に、目指したいキャリアや自分の大事にしたいことなどを棚卸ししながら理解を深めます。

<履歴書・職務経歴書作成、面接対策>
書類選考に向けて、応募書類の添削を実施します。また、面接の基本から、想定される質問や効果的な回答など、面接に向けて大事なノウハウをレクチャーします。

<職業紹介・マッチング>
ご自身の希望に合ったITエンジニア等の求人を紹介します。

【対象者】

下記の(1)~(4)の全てに該当する方
(1)原則39歳以下の女性の方
(2)求職中または非正規雇用で就業中の方
(3)都内のIT関連業界等に正社員として就職希望の方
(4)学生ではない方

【募集開始日】

令和8年4月30日(水)
※受講開始日等の詳細は公式HPをご確認ください。

【申込方法】

公式HPからお申し込みください。
https://women-tokyo-en.metro.tokyo.lg.jp/

【問い合わせ先】

「女性ITエンジニア育成事業」運営事務局
電話:0120-630-023
〔受付時間〕火~金曜日10:00~18:00
        土曜日10:00~17:00
※日月祝・年末年始12/29~1/3を除く

取材・文/光谷麻里(編集部)