【求人票の見え方が劇的に変わる】プロが教える「自分に向いてる仕事」を見つける“本質的な自己分析”の方程式

【求人票の見え方が劇的に変わる】プロが教える「自分に向いてる仕事」を見つける“本質的な自己分析”の方程式

自分に向いてる仕事ってなんだろう?

転職活動を始めると、誰もが一度はぶつかるこの問い。

強みや適性が分からず、たくさんの求人を前に「自分迷子」になってしまう。

そんな多くの女性が抱える悩みを解決すべく、2025年7月5日に『女の転職type』が開催した「長く働きたい女性のための転職イベント」内で特別セミナー「本当に自分らしいキャリアの見つけ方―仕事選びの前に“わたしらしさ”を言語化しよう―」が行われた。

登壇したのは、「自己理解」のメソッドでキャリア支援を行う株式会社ジコリカイ取締役CEOの阿部和也さん。

セミナー内で語られた「“わたしらしさ”を言語化し、心から納得できる仕事と出会うためのメソッド」の一部を紹介しよう。

株式会社ジコリカイ<br />
取締役CEO 阿部和也 さん

株式会社ジコリカイ
取締役CEO 阿部和也さん

早稲田大学政治経済学部卒業後、ユニリーバ・ジャパンで営業・営業企画に従事。マースジャパンでファイナンス職を経験後、人の成長に関心を持ちグロービスへ転職。その経験を経て再びマースで事業推進に従事。転職後のミスマッチと子どもの誕生を機に、自己理解の重要性を実感。株式会社ジコリカイとビジョンが重なり2023年に入社、25年より取締役CEOに就任。「自己理解が当たり前の社会」の実現を目指す。

「好きを仕事に」で挫折する人が見落としていること

「今のお仕事、“わたしらしく”働けていますか?」

この問いに、自信を持って「はい」と答えられる方は少ないのではないでしょうか。

しかし、そのモヤモヤの正体は決してスキルや経験不足ではありません。

根本的な原因は、そもそも「わたしらしさ」が何なのかを自分自身で理解できていないこと。つまり「自己理解の不足」、ただそれだけなのです。

実は私も、この“わたしらしさ”が分からなくて、転職で大きな挫折をした経験があります。

理由は明確で、自分の「好き」という気持ちを優先して会社を選び、転職してしまったから。

私の価値観とは真逆の競争主義の社風、そして得意なはずの才能が活かせない仕事内容……当然ミスマッチが起こり、私はすぐに会社を辞めることになってしまったのです。

多くの人が一度は憧れる「好きを仕事に」という考え方ですが、心から納得できる自分らしいキャリアのためには、「好き」という気持ちだけではなく、より多角的な自己理解が必要不可欠なのだと痛感しました。

“わたしらしさ”を言語化する公式

では、その「自己理解」とは、一体どうすれば分かるのでしょうか。その核心は、以下の三つを明確にすることで見えてきます。


1.好きなこと(What):興味のある「分野」

時間を忘れて没頭してしまうテーマや、自然と「なんでだろう?」と知りたくなること。
(例:心理学、ファッション、デザインなど「名詞」で表現されること)

2.得意なこと(How):自然とできる「才能」

頑張らなくても無意識にやっている、やっていて心地いいこと。英語やプログラミングといった後から身につける「スキル」とは違う、生まれつきの才能のこと。
(例:相手の立場に立って考える、情報を集めて分析する、人と人をつなぐ、など「動詞」で表現されること)

3. 大事なこと(Why):ありたい「状態」

自分がどうありたいか。「何のために生きるか」という人生の目的や、「何のために働くか」という仕事の目的にも繋がる。
(例:自由に生きたい、安心できる環境で働きたい、夢中になって生きたいといった「価値観」のこと)
ジコリカイ・阿部氏

この三つの軸が分かると、自分らしいキャリアの核心に近づくための、二つの大切な公式が見えてきます。

1. やりたいこと = 好きなこと × 得意なこと

まず、「好きなこと」と「得意なこと」を掛け合わせることで、具体的な「やりたいこと」が姿を現します。

例えば、私のように「自己理解が好き」という人でも、「得意なこと」が違えば「やりたいこと」は全く別のものになります。

もし自分の得意なことが「体系立てて伝えること」なら、やりたいことは「自己理解について体系立てて伝えること」です。

一方で、得意なことが「人の話を聞いて引き出すこと」なら、「人の話を聞いて自己理解を促すこと」がやりたいことになるでしょう。

このように、「何を(What)」だけでなく「どのように(How)」関わるかを考えることで、ぼんやりとしていた「好き」が、具体的な仕事のイメージへと変わっていくのです。

2. 本当にやりたいこと = やりたいこと × 大事なこと

しかし、これだけではまだ不十分です。その「やりたいこと」に、自分の「大事なこと(価値観)」を掛け合わせることで、初めて「本当にやりたいこと」が見つかります。

これは、自分の仕事に「なぜ(Why)」という目的を与える、最も重要なステップです。

先ほどの例で言えば、「自己理解について体系立てて伝える」という「やりたいこと」に、「人に夢中になってほしい」という「大事なこと」が加わるとどうでしょう。

「人に夢中になってほしいから、自己理解を体系立てて伝える」

これが、自分の「本当にやりたいこと」になります。こうすることで、自分だけの情熱と目的が宿った、あなたの特別な仕事になるのです。

「好き」なことを自分の「得意」なやり方で、自分の「大事」な価値観を満たしながら行う。これこそが、心から納得できる自分らしいキャリアの核心です。

ジコリカイ・阿部氏

多くの方は、自分のやりたいことを考えたときに、英語の勉強や転職といった「実現手段」に走りがちです。

しかしこの「本当にやりたいこと」という目的、つまり自分のコンパスを持つ前に動き出してしまうと、また道に迷ってしまいます。まずは、この目的をしっかりと定めることが何よりも大切なのです。

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【実践ワーク】二つの質問で自分の「隠れた才能」を見つけよう

これら三つの軸を知るためにはいろいろな方法がありますが、ここでは簡単に「得意なこと」を見つけるためのワークをご紹介します。

紙とペンを用意して、二つの質問に答えてみてください。

ジコリカイ・阿部氏

セミナー参加者全員でワークを実践。回答をお互いに発表し合うペアワークで、会場内は大いに盛り上がっていた

質問1.「なんでこんなこともできないの?」と他人にイラッとした経験は?

「なんでこんなこともできないの?」と人にイラッとするのは、自分にとっては無意識に・当たり前にできることを、相手ができないからです。その「イラッ」の裏側に、あなたの才能が隠れています。

例:
相手の立場を考えない人にイラッとする → あなたは「相手の立場に立って考える」のが得意。
同じ失敗を繰り返す人にイラッとする → あなたは「問題が起きた時に根本解決する」のが得意。

質問2.あなたの短所を「だからこそ…」で言い換えるとどうなりますか?

短所と長所は表裏一体です。「だから(できない)」ではなく、「だからこそ(できる)」と変換することで、ポジティブな才能が見えてきます。

例:
「人見知りだ」→「だからこそ、一人でじっくり考える時間をとれる」
「つい強い言葉で言ってしまう」→「だからこそ、言葉で人の背中を押すことができる」

こう考えると、少しずつ自分の「得意なこと」の輪郭が見えてくるのではないでしょうか。

ジコリカイ・阿部氏

「得意なことが『人並み』だったとしても、組み合わせれば『あなただけの突き抜けた才能』に変わる」と阿部さん

ここで紹介したのは一例に過ぎませんから、他にもじっくり一人で考えてみたり、他人に聞いてみたりして、さまざまな方法で自分の「三つの軸」を見つけてみてください。

「三つの軸」で求人票の見え方が変わる

この「好き・得意・大事」の三軸は、転職活動において「求人票の見方」を劇的に変えてくれるはずです。

求人が自分にとって本当にフィットするのかどうか、例えば以下のような観点で、解像度高く見極められるようになります。

1.「好きなこと」で、仕事への情熱の源泉を見る

まず、自分の「好きなこと(興味のある分野)」と、企業の「事業内容」や「業界・職種」をマッチングさせます。

全く興味が湧かないことを仕事にするのはつらいものですから、「興味が持てるか」「知りたいという好奇心が湧くか」という視点で見ていくと良いでしょう。ここがクリアできると、仕事へのモチベーションの源泉になります。

2.「得意なこと」で、業務内容との相性を見る

次に、自分の「得意なこと(才能)」と、企業の「具体的な業務内容」を比べます。

ここでは表面的な言葉に惑わされないことが大切です。

例えば、多くの求人にある「コミュニケーション能力」という言葉。これはあまりに曖昧です。

自分の得意なことが「初対面の人と信頼関係を築くこと」なのか、「相手に寄り添い、本音を引き出すこと」なのか、「情報を分かりやすく整理して伝えること」なのかで、活かせる場面は全く違います。

業務内容を読み解き、「この仕事で求められているのは、具体的にどんな行動だろう?」と想像してみてください。

大勢の前でプレゼンすることが多いのか、1対1でじっくり話を聞くことが多いのか。

そうした「人との関わり方」まで見ていくことで、自分の才能が本当に活かせるのかが見えてきます。

3.「大事なこと」で、働く環境との相性を見る

最後に、自分の「大事なこと(価値観)」と、企業の「理念・社風・働き方」を照らし合わせます。

お伝えしておきたいのは、三つの中で「大事なこと」と「得意なこと」は、キャリアの土台となる特に重要な要素だということです。

なぜなら、「好きなこと」は時間と共に変化しやすい一方、「大事なこと」や「得意なこと」といった根源的な部分は、なかなか変わらないからです。

私の失敗談でもお話しした通り、実際の社風や働き方が自分の価値観と逆行していては元も子もありません。

そこで求人票の「求める人物像」や「社員インタビュー」などから、その会社が本当に大切にしている空気感を読み取り、自分の価値観と照らし合わせてみてください。

「チームワークを重視」と書かれていても、それが「競争し合いながら高め合うチーム」なのか、「お互いを尊重し、助け合うチーム」なのかでは、全く意味が異なります。

ジコリカイ・阿部氏

この三つの視点で企業を分析できるようになると、書類選考や面接でのアピールの質も格段に変わります

「なんとなく」ではなく、「私の〇〇という価値観が、御社の△△という理念に合致しており、□□という得意なことを、この業務でこのように活かせると考えています」と、自信を持って伝えられるようになるのです。

好き・得意・大事を「活かせる環境」を見つけよう

「自分らしさ」という漠然とした問いも、今日お伝えした「好き・得意・大事」という明確なものさしで分解すれば、きっとその輪郭が見えてくるはずです。

魚は決して、陸では泳げません。水という環境を手に入れることで、初めて生き生きと泳げるのです。

皆さんも、自分を深く理解し、好き・得意・大事を活かせる環境を見つけること。これこそが、長く自分らしく働くためのカギなのです。

ここから、皆さんが「わたしらしいキャリア」を踏み出せることを、応援しています。

文/大室倫子(編集部) 撮影/佐藤諒

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