
診断するほど陥る自己分析沼…自分を表すキーワードを「本当にやりたいこと」に変える4ステップ【ジコリカイCEO阿部和也】
20代~30代の女性が抱える仕事・キャリア・転職のお悩みに、その道のプロが本音でアドバイス! 「私らしい働き方」の発見や「いい転職」をかなえるためのヒントを提供します
今回寄せられたのは、「自己分析をすればするほど、逆に自分が分からなくなる」という女性のお悩み。自分を表すキーワードがたくさん分かっても「結局何がやりたいんだっけ……」と自分迷子になってしまう人は少なくないはずです。
そこで今回答えてくれたのは、「自己理解」のメソッドでキャリア支援を行う株式会社ジコリカイ取締役CEOの阿部和也さん。
自己理解のプロが語る、本質的な自己分析の進め方とは?

株式会社ジコリカイ
取締役CEO 阿部和也さん
早稲田大学政治経済学部卒業後、ユニリーバ・ジャパンで営業・営業企画に従事。マースジャパンでファイナンス職を経験後、人の成長に関心を持ちグロービスへ転職。その経験を経て再びマースで事業推進に従事。転職後のミスマッチと子どもの誕生を機に、自己理解の重要性を実感。株式会社ジコリカイとビジョンが重なり2023年に入社、25年より取締役CEOに就任。「自己理解が当たり前の社会」の実現を目指す。
お悩み:自己分析をすればするほど、逆に自分が分からなくなる
転職を考え、『ストレングス・ファインダー』や『MBTI』を診断したり、自己分析本を読んで過去の経験を書き出したりしました。
結果、『社交性、学習意欲、慎重さ』など、たくさんのキーワードは出てくるのですが、情報が多すぎて「で、結局私はどういう人間で、何がしたいの?」と、以前より混乱してしまいました。
自己分析疲れです…。どうすればよかったのでしょうか?
自己分析で疲れてしまうのはなぜ?
転職を考えるとき、多くの人がまず取り組むのが「自己分析」です。クリフトンストレングス(旧ストレングス・ファインダー)やMBTIを受けたり、自己分析の本を読んで過去の経験を書き出したり。一見すると前向きな行動ですが、ここに“自己分析疲れ”を招く落とし穴があります。
なぜなら、こうしたツールや診断が扱っているのは、あくまで「傾向値」にすぎないからです。
「社交性」や「学習欲」といった資質は、「確かにそんな感じ」と納得感を与えてくれますが、それだけではキャリアの答えにはなりません。
大切なのは、「どんな場面でその資質が発揮され、どのような価値を生んだのか」を自分の言葉で語れることです。
面接や転職活動で必要なのは、診断結果そのものではなく、それをどう解釈して活かしてきたか、という具体的なストーリーなのです。

また、キーワードが増えれば増えるほど混乱が深まるのも自然なことです。診断結果は“あなたらしさの種”にすぎず、そのまま並べても全体像は見えてきません。
例えば「社交性」は、クリフトンストレングスにおいては「新しい人と出会い、関係を広げていくことを楽しむ資質」と定義されています。しかし、そこからさらに一歩進んで「その社交性を、どんな状況でどう発揮し、周囲にどんな影響を与えてきたのか」を掘り下げて初めて、“あなたならでは”の強みに変わります。
ここで重要なのが、「自己分析」と「自己理解」の違いです。
自己理解:その点に意味を与え、文脈をつなぎ、他者に語れる”線”にすること
自己分析の段階で止まってしまうと、「結局私は何者なのか?」という問いに答えられず、混乱が強まります。一方で、自己理解に進むと、「私はこういう人で、だからこういう環境で力を発揮できる」と自信を持って語れるようになります。
つまり、自己分析疲れを乗り越えるカギは、診断結果やキーワードを「当たっている」で終わらせず、自分にとっての意味を深掘りし、言葉に変えることです。そこから初めて、本当の自己理解が始まります。
「情報の山」から自分の軸を見つける方法

自己分析が「点の情報の集まり」で終わってしまうと、どうしても混乱は深まります。大切なのは、その点をつなぎ合わせて「自分の軸」という“線”にしていくこと。
ここからは、診断や過去の経験から出てきた断片的なキーワードを整理し、あなたらしさを言葉に変えるための具体的な方法を紹介します。
ステップ1:抽出 ― キーワードを出し切る
まずは診断ツールや過去の経験から、自分に関わるキーワードをできる限り出していきます。「学習欲」「慎重さ」「チームワーク」など資質のラベルに加え、「部活でキャプテンを務めた」「後輩指導がやりがいになった」といった具体的なエピソードも含めて、とにかく“点”を集める段階です。
ステップ2:整理 ― 「大事・得意・好き」の3軸で仕分ける
出てきたキーワードはそのままでは断片にすぎません。ここで 「大事(価値観)」「得意(才能)」「好き(興味)」の3つに仕分けして整理します。
例:夢中に生きる人を増やしていきたい、成長する喜びを知ってほしい など
得意なこと(才能)「自然とできてやっていて苦なく成果が出せること」
例:1対1で相手に寄り添いながら支援する、人をまとめる、丁寧に教える など
好きなこと(興味)「やっていると夢中になる分野」「問題意識を感じる分野」
例:スポーツ、心理学、教育 など
この仕分けをすると「自分は何を大切にして、どんな場面で強みを発揮し、どんなことにワクワクするのか」という立体的な姿が浮かび上がってきます。
ステップ3:統合 ― 「私らしさを言語化する公式」で線にする
次は、整理した内容を一つのストーリーに統合していきます。ここで活用できるのが「私らしさを言語化する公式」です。
大事なこと × 得意なこと × 好きなこと = あなたらしさ(あなたが本当にやりたいこと)
この公式に沿って、抽出したキーワードを組み合わせると、次のような形になります。
大事なこと=自信を持てる人を増やしたい
得意なこと=1対1で相手の力を引き出すサポート
好きなこと=心理学
→(私は)「自信を持てる人を増やしたいから、心理学の分野を使って、1対1で相手の力を引き出す」ことがしたい(人間だ)
こうして点を線にすることで、「私はどういう人間で、何をしていきたいのか」が言葉として形になります。

ステップ4:充実 ― 経験と結びつけて“線”を”面”に
ステップ3で「私らしさの線」を言語化できても、そのままでは自分自身に対しても、相手に説明するときも「本当にそうなの?たまたまじゃないの?」という不安が残ることがあります。
ここで大切なのは、その線を裏づける複数の経験を探し出し、厚みを持たせることです。ステップ1で抽出したキーワードや過去の経験の中から、3つ程度の場面を紐づけられると良いでしょう。
先ほどの「自信を持てる人を増やしたいから、心理学の分野を使って、1対1で相手の力を引き出す」を例にみてみましょう。
経験1:学生時代の後輩指導
成果が出せずに落ち込んでいた後輩をサポートし、自信を取り戻した姿を見て「人を支える喜び」を感じた。
経験2:仕事での新人サポート
新しい業務に不安を抱えていた新人に、心理学で学んだ傾聴を活かして寄り添ったところ、安心して挑戦できるようになった。
経験3:友人関係での相談役
プライベートでも悩みを抱える友人の相談に乗り、心理学的な知識をもとに整理を手伝った結果、前向きな行動につながった。
このように「線」を裏づける3つのエピソードを重ねることで、自分にとっても「やっぱりこれが私らしい」と確信を持てるようになりますし、面接や職務経歴書で語るときにも説得力がぐっと増します。
迷いは“あなたらしさ”を見つける途中にあるもの

ここまで取り組んできて「混乱している」と感じるのは、決してマイナスではありません。むしろそれは、あなたが表面的な診断結果やラベルで終わらせず、もっと深く自分を理解したいと本気で向き合っている証拠です。
自己分析は点を集める作業にとどまりがちですが、そこから整理をすることで、あなたのキャリアの“軸”は必ず見えてきます。
これからやるべきことはシンプルです。
まずは出てきたキーワードを「大事・得意・好き」の3つに仕分けてみる。そして「私らしさを言語化する公式」にあてはめ、一文で自分を表す“線”を描いてみる。
その線に具体的な経験を重ねることで、自己理解は“面”へと広がり、あなた自身も納得でき、相手にもしっかり伝わる形になります。
「混乱している今」は、まだ点を出し切ったばかりの段階です。この先、整理し、統合し、補強していくことで、あなたは自分らしい未来を言葉にできるようになります。
焦らず一歩ずつ進めていけば大丈夫。迷いは必ず、納得のキャリアへとつながっていきます。
自分一人で頑張りすぎないために
ここまでのステップを実践するだけでも、自己理解はぐっと進みます。ただし実際には、自分一人でやり切るのは難しいことも多いんです。
なぜなら、価値観や才能、興味といった大切な部分は、自分にとってあまりにも「当たり前」に感じている行動や感覚に隠れているから。
だからこそ、伴走してくれる存在がいると気付けることが増えます。コーチとの対話を通じて、自分の強みや方向性がより鮮明になっていくのです。
もし一人で壁を感じたら、私たちのプログラムもぜひ検討してみてください。まずは無料相談から、お気軽にお話しできます。

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