【柴咲コウ】俳優、アーティスト、経営者。全ての結果に繋がるシンプルな心掛け「周りに学びながら、走り続けています」

【柴咲コウ】俳優、アーティスト、経営者。全ての結果に繋がるシンプルな心掛け「周りに学びながら、走り続けています」

俳優デビュー以来、数々の映画やドラマでヒット作を生み出し、アーティストとしてもミリオンセラーを記録するなど、多くの人の心に残る名作を世に送り出してきた柴咲コウさん。

2016年にはサステナブルな社会の実現を目指すレトロワグラース株式会社を設立し、経営者としても活動の幅を広げている。

俳優、アーティスト、そして経営者。なぜ彼女は、こんなにも多岐にわたる分野で目覚ましい活躍を遂げ、それぞれで結果を残し続けることができるのだろうか。

最新主演映画『兄を持ち運べるサイズに』で主演を務めた彼女の仕事へのスタンスから、「どんな場所でも結果を出す人」のヒントを探る。

柴咲コウさん

柴咲コウさん

2001年公開の映画『GO』での演技が高く評価され、数々の映画賞を受賞。以降、俳優として映画『世界の中心で、愛をさけぶ』、ドラマ『Dr.コトー診療所』シリーズなど多くのヒット作に出演。02年からは歌手としても活動を開始し『月のしずく』などが大ヒットを記録。16年にはレトロワグラース株式会社を設立し、CEOを務める。環境省「環境特別広報大使」に任命されるなど、活動は多岐にわたる

人生はマーブル模様のように繋がっている

最新作『兄を持ち運べるサイズに』で柴咲さんが演じたのは、疎遠だった兄の死をきっかけに、兄の元妻や子どもたちと再会し、複雑な感情を抱えながら“家族関係の後始末”に向き合う女性。

脚本を初めて読んだとき、「こういう実直な家族の物語は逆に新鮮だ」と感じたという。

柴咲さん

私は兄がいないのですが、オダギリジョーさん演じる“兄”にはすごく共感できました。外では愛想が良いけれど、家族には負担を掛けている。ういう“あるある”にすごくリアルさを感じたんです。

撮影中は無意識のうちに「自分の家族に対する態度は正解なのだろうか」と考える時間が多く、自分自身を見つめ直すことにつながりました

映画『兄を持ち運べるサイズに』の場面写真

共演者や監督との関わりも刺激的だった。オダギリジョーさんの“語らずとも伝わる存在感”、満島ひかりさんの意志の強さ、中野量太監督の率直で細やかな演出。すべてが柴咲さんの感性を刺激し、改めて「人との距離感」「家族との関わり方」を考える契機になったという。

柴咲さん

私は「人に迷惑をかけたくない」という思いが強いんです。でもその一方で、心の中では「好きにさせてよ」という勝手な部分もあって。

そんな矛盾を抱えながら生きているのが人間であり、だからこそ役を通して自分自身にも重なる部分が多かったですね。

映画『兄を持ち運べるサイズに』の場面写真

彼女が演じた理子は作家として、仕事の想像力がプライベートにも生きる役どころだ。柴咲さん自身もまた、仕事とプライベートは結びついている感覚があるという。

柴咲さん

私の場合は、仕事も、プライベートも、完全に連動しています。全部がマーブル模様みたいに混ざり合っていて、きちんと分けられるものじゃない。

プライベートの時間でも役のことを考えたり、次の作品のことを思ったり、作詞をしたり。日常の中に仕事が入り込んでいて、常に影響し合っています。

プロとして「個性」よりも大切なこと

柴咲コウさん

公私が見事に混ざり合う、その“マーブル模様”のような活動。その全ての根底に流れているのが、「期待に応える」という柴咲さんのプロとしての哲学だ。

柴咲さん

俳優も歌も、まずは要望に応えること。それがプロの仕事なのだと思います。そこに個性が乗ってくることはあっても、全ての仕事は「期待に応える」ことが大前提です。

その上で、個性をどう仕事に活かすのか。彼女はそれを“引き出し”という言葉で表現する。

柴咲さん

役者であれば、生きてきた中で培ったたくさんの引き出しの中から、その役に合うものを開けて増幅させていく。日常の本当にちょっとした機微をストックできる感性を持っていることが、すごく大切だと考えています。


期待に応えるという責任感と、自分だけの感性から生まれる表現力。この両輪が、彼女のプロフェッショナルとしての仕事観を支えている。

では、その不可欠な「引き出し」は、どうすれば増やせるのだろうか。

柴咲さん

私は10代でこの特殊な業界に飛び込んだので、初めは何が正解かも、右も左も分からなかった。演劇学校で基本を習ってから現場に出ているわけではなかったので、本当に現場に入りながら学んでいった感じですね。

柴咲コウさん

手探りのスタートだったからこそ、一つ一つの経験が血肉となった。時には、厳しい言葉が彼女を強くした経験もあるという。

柴咲さん

過去にお仕事をした監督さんから、思いっきりダメ出しをされたり、「下手くそ」と言われたりしたことが、逆に私の心に火をつけました。

怒られるということは、何か自分を変えるべき点があるということ。その経験で反骨精神が鍛えられた気がしていて、そういう方と出会えてよかったなと思っています。

逆境から目を背けず、自分を省みる力。その積み重ねこそが、彼女の引き出しを増やし、プロとしての揺るぎない土台をつくってきたのだ。

チームで成果を出すシンプルな心掛け

柴咲コウさん

個人としての力を磨き続ける一方で、柴咲さんは「一人でものを作っているわけではない」と、チームで働くことの重要性を強調する。そこには、結果を最大化するための、彼女ならではのシンプルで、かつ合理的なルールがあった。

まず徹底しているのが、「和を乱さない」「時間を守る」という基本姿勢だ。

柴咲さん

撮影現場には1分たりとも遅れたくない。期間限定のチームだからこそ、集中してやりたいんです。地方の現場は自分で運転していくのですが、マップを見て渋滞を予想して、必ず時間通りに到着できるようにしています。

主演として現場に立つときも、「私が引っ張っていかなきゃ」と気負うことはない。むしろ大切にしているのは、「頼ること」と「助け合うこと」だという。

柴咲さん

肩に力を入れすぎても良くないな、と。映画は特に監督の作品という側面が強いと思うので、監督が満足できる良いものが撮れていると思ってもらえるように、お芝居を通じて努力します。

あとは現場では「お互いさま」の精神で助け合うこと。スタッフの方には率先して話し掛ける、現場の撤収作業を一緒にやるとか、自分ができることは率先してやることで助け合える関係を意識していますね。

年齢やキャリアに関係なく、優れた点は謙虚に吸収する。周囲を信じ、頼り、学び合う。それこそが柴咲さんの考える、チームで最高の結果を出すための方法なのだ。

「誠実な積み重ね」が線になる

その姿勢は、会社経営にも生きている。彼女が2016年に立ち上げたレトロワグラース株式会社では、サステナブルな社会の実現を目指し、アパレルやプロジェクトを展開。企業とのコラボレーションを積極的に仕掛け、共にかたちにすることを大切にしてきた。

柴咲さん

最初は「会社はこうあるべき」と力みすぎていたんですが、結局はやりながら学ぶしかない。私って結局、「走りながら学んでいく人生」なんだと思います。

大企業の社長というわけではないので、自分に合ったスタイルで。アーティストとして表に立つ人間だからこそできる取り組みがあると信じて、進んでいきたいと思っています。

柴咲コウさん

そうしてたどり着いた、自分らしい経営のスタイル。今は、これまで蒔いてきた種を、大切に育てていくフェーズなのだという。

柴咲さん

たくさん種を蒔いてきて、それに関わってくれる人も増えてきました。だから今は、新しいことに挑戦するというよりも、これまで育ててきたものを大切に育てていきたい

アパレルブランドも、企業とのコラボも、サステナビューティープロジェクトも、一つ一つをつなげて形にしていくこと。それが今の挑戦ですね。

一つ一つの仕事で実直に期待に応え、学び、チームに貢献する。その誠実な積み重ねが線となり、誰も真似できないキャリアとなる。柴咲さんの仕事へのスタンスは、どんな場所でも結果を出し続けるための、普遍的なヒントに満ちていた。

映画情報『兄を持ち運べるサイズに』11月28日(金)全国ロードショー

映画『兄を持ち運べるサイズに』ポスタービジュアル

『湯を沸かすほどの熱い愛」『浅田家!」で知られる中野量太監督の5年ぶりとなる監督作。作家・村井理子が自身の体験をもとにつづったノンフィクションエッセイ「兄の終い」を原作に、疎遠だった兄の突然の訃報から始まる、家族のてんてこまいな4日間を描く。

マイペースで自分勝手な兄に、幼いころから振り回されてきた主人公・理子を柴咲コウが演じる。家族を振り回す原因となるダメな兄をオダギリジョー、兄の元妻・加奈子を満島ひかりが演じた。兄と加奈子の娘で、両親の離婚後は母と暮らす満里奈役にnicola専属モデルの青山姫乃、最後まで兄と暮らしたもうひとりの子ども・良一役に、ドラマ「3000万」の味元耀大が起用された。

映画『兄を持ち運べるサイズに』
公開日:2025年11月28日(金)
原作:「兄の終い」村井理子(CEメディアハウス刊)
脚本・監督:中野量太
出演:柴咲コウ、オダギリジョー、満島ひかり、青山姫乃、味元耀大
公式サイト:https://www.culture-pub.jp/ani-movie/
X:https://x.com/ani_movie1128
Instagram:https://www.instagram.com/ani_movie1128/
©2025 「兄を持ち運べるサイズに」製作委員会