【葛藤10年以上】MEGUMIが「自分の生きたい生き方」へと舵を切れるまで

【葛藤10年以上】MEGUMIが「自分の生きたい生き方」へと舵を切れるまで

俳優、タレント、映像プロデューサー、実業家。さまざまな顔を持ち、活躍の幅を広げ続けるMEGUMIさん。

主体的に自らのキャリアを選び取り、強く凛として生きる姿は、多くの女性たちのロールモデルとなっている。

いまや「女性が憧れる女性像」を体現している彼女だが、かつては「周囲から求められる自分の役割」と「自分が本当にやりたいこと」の狭間で悩んだ時期があった。葛藤の日々は、10年以上に及んだという。

悩み抜いた末に、MEGUMIさんが「自分軸」で生きられるようになれたのはなぜなのだろうか。その軌跡を聞くと、私たち働く女性が「自分の人生を自分で舵取り」するためのヒントが見えてきた。

カメラに向かってポーズを取るMEGUMIさん

MEGUMIさん

1981年生まれ、岡山県出身。女優。プロデューサー。『台風家族』『ひとよ』(19)への出演でブルーリボ ン賞助演女優賞を受賞。映像のプロデュースも手掛け、映像集団「BABEL LABEL」にプロデューサーとして参加。映画『零落』(23年/竹中直人監督)、ショートムービー『LAYES』(22年/内山拓也監督)のプロデュースを手掛ける。女性応援ドラマ『完全に詰んだイチ子はもうカリスマになるしかないの』『くすぶり女とすん止め女』(22~23年・テレビ東京)も話題に。国際文化交流イベント「JAPAN NIGHT 」ファウンダー

役作りから見えた「人生の決定権」を他人にゆだねる代償

MEGUMIさん

私は俳優として役をいただく時、その人物の“年表”を必ず作るようにしているんです。

自分が演じる一人の女性に思いをめぐらせ、どうして今こういう状況になったのか、彼女の幼少期や環境、経緯といった背景にある物語を深く考えてみる。役をいただいたからには、私はその役に“添い遂げたい”と思っています。

そう俳優としてのプロ意識を見せてくれたMEGUMIさんが最新作として挑んだのは、過去を捨てた元ヤクザの漁師と目の見えない少年との十数年を描いた映画『港のひかり』(11月14日公開)だ。

MEGUMIさんが演じたのは、事故で両親を亡くし、自身も視力を失った主人公の少年・幸太を引き取る叔母の大森美和子。男性に依存し、自分の人生の舵取りを他人に委ねることで負の連鎖に陥ってしまう女性だ。

MEGUMIさんと対照的な人物像に思えるが、共感できる点もあったと話す。

MEGUMIさん

美和子は、自分の子どもではない幸太を押し付けられ、「仕事はどうしよう」「何で私ばっかり!」と直面する現実に対してもどかしさや憤りを感じ、苦しみます。

私自身も、美和子のように自分を取り巻く環境に対して歯がゆさを感じたこともあるので、彼女の気持ちは理解できました。

ただ、その時に腐らずに次の目標を見つけて努力できたから、今があるのかなと思います。

MEGUMIさん

美和子も、環境のせいで人生が狂ってしまったのは確かだけれど、彼女は環境のせいにしすぎて、動けなくなってしまった

男性に依存することでさらに思い通りに生きられなくなる──。そんな悪循環の中で、「自分は変われない」「ここから抜け出すことはできない」と、結果的に自分の人生を諦めてしまった女性なんだと思います。

映画『港のひかり』場面写真

「やりたくない仕事もやった方がいいのか…」自問自答を続けた30代

人生の舵取りができず、他人軸で生きてしまう——。

そんな美和子の姿に、「自分の人生の舵取りを誰かに任せると、すり減っちゃうと思うんです」と続けるMEGUMIさん。

その言葉の裏には、仕事において「やりたいこと」と「求められていること」の狭間で葛藤し、自分軸を見失いかけた過去がある。

19歳でグラビアアイドルとしてデビューした後、キレのあるトークや親しみやすいキャラクターから、バラエティータレントとしても活動の幅を広げてきた彼女。

周囲のニーズと自分の本当にやりたいことのズレを特に強く感じたのは出産後だったという。

MEGUMIさん

出産後はママタレとしてのオファーがすごく増えたんですが、「私が本当にやりたいことはこれなんだっけ?」っていう思いが頭をよぎったんです。

一方で、周囲から求めてもらえることをやった方がいいんじゃないかという思いもあって。「どうしようかな、やった方がいいのかな」「これはやめた方がいいかな、でも稼がなきゃいけないし……」と、自問自答を繰り返すばかりでした。

カメラに向かってポーズを取るMEGUMIさん

悩みながらも、周囲から求められる仕事に全力で取り組んでいたMEGUMIさんだったが、自分の心に正直でない生き方は、彼女の心身をどんどんすり減らしていった。

MEGUMIさん

求めてもらえている仕事でも、やりたくないことをやっていると、パワーを使うので疲れるようになり、パフォーマンスも下がってしまって。

そうなると一緒に働く人たちにも良い影響を与えられなくなっていくんですよね。何より、自分自身が傷つきながら働いているので、続けること自体がつらくなっていく。

30代は息子が生まれて幸せだったけど、仕事においては思うようにいかない時期でもありました。

この時期を切り抜け、MEGUMIさんが「自分軸」で生きる女性へと変わることができたのはなぜなのか。

その裏には、彼女の二つの行動があった。

MEGUMIさん

一つ目は、「少しずつシフトチェンジ」すること。

なかなかやりたいことができない苦しさはあったけれど、その中で「この番組だったらやってもいいかな」と少しずつ折り合いをつけながら、やりたくない仕事を減らしていきました。

カメラに向かってポーズを取るMEGUMIさん

いきなりスパッと方針転換するのは勇気がいるが、自分の素直な気持ちと相談しながら徐々にシフトしていくのであれば、恐怖も和らぐ。

彼女がもう一つ意識していたのは、「やりたい仕事をするために、できることを全てやっているのか?」と自分に突きつけることだった。

MEGUMIさん

当時の私は、「やりたい」って言いながらも行動に移せていない部分も多かった。俳優をやりたいと言いながら、映画をたくさん観ているのかと言えばそうでもなかったし、演技の勉強をしていたのかと言えば、それもやっていない。

その事実を自分に突きつけては、演技のレッスンに行ったり、頼み込んで撮影現場を見学させてもらいに行ったりしました。そうするうちに、少しずつ俳優のオファーもいただけるようになったんです。

MEGUMIさん

自分ができていないことを突きつける時間は苦しかったけれど、あれをやっていなかったら今も役作りの仕方も分からなかっただろうし、今回の作品のようなお仕事とも縁がないままだったんじゃないかな。

苦しさから逃げずに、少しずつでも行動に移せたからこそ、腐らずにここまで来られたんだと思います。

「日本の女性をエンパワーメントする」ことが全ての活動の軸

自分が本当にやりたいと思う仕事を選び取り、活動するようになったMEGUMIさんだが、彼女の幅広い活動には一本の軸がある。

それは、「日本人女性をエンパワーメントする」という強い思いだ。

MEGUMIさん

ある時、「日本人女性の自己肯定感が世界最下位」というニュースを見て、衝撃を受けたんです。同時に、「ああ、そうかもな」と納得する部分もあって。

子どもを産んだ瞬間から「ちゃんとした母親にならなきゃ」という意識が芽生えたり、働くことへの罪悪感を抱くようになったり。生き生きと自分の好きなことをやりながら子育てをするのが難しい国なのかもしれないなと思うんです。

MEGUMIさん

だから、私の活動はすべて「女性をエンパワーメントする」というコンセプトで取り組んでいます。一見、やっていることがバラバラに見えるかもしれないんですが、私が発信している美容も、演技も、タレント活動も、全てこのテーマに繋がっているんです。

カメラに向かってポーズを取るMEGUMIさん

そんな彼女が今挑戦したいと考えているのは、映画のプロデュースだ。これまで生きてきた中で伝えたいと感じたことを映画にし、それを海外の映画祭に出品する。そんな目標を語る彼女の瞳は力強い光を放つ。

MEGUMIさん

自分がプロデュースした映画を、世界中の人たちと一緒に見ながら共鳴すること。それが今の私の大きな夢です。

もちろんこの夢の根底にあるのも、女性のエンパワーメント。私が企画するものは全て主人公を女性にしています。

さまざまな壁にぶつかりながらも成長し、最終的には乗り越えていく。そんな女性の姿を描くんだと決めています。

長い葛藤の時を経て「自分軸で生きる」力を得たMEGUMIさん。インタビューの最後、かつての自分のように迷い、悩みながら生きる働く女性たちに、温かいエールを送ってくれた。

MEGUMIさん

最初から完璧じゃなくたっていいんです。格好悪くても「もがいてみる時間」がすごく大切なんじゃないかな。

きっと自分の人生に本気で向き合って悩んだり失敗したりした時間は決してむだにならない。私の人生がその証です。

カメラに向かってポーズを取るMEGUMIさん

取材・文/安心院 彩 撮影/洞澤 佐智子(CROSSOVER) 編集/光谷麻里(編集部)

作品情報

恋映画『港のひかり』全国の劇場にて大ヒット公開中

映画『港のひかり』キービジュアル

過去を捨てた元ヤクザの漁師と
目の見えない少年との十数年を描く、
年の差を超えた友情と再会のものがたり。

■監督・脚本:藤井道人
■企画:河村光庸
■撮影:木村大作 ■美術:原田満生 ■音楽:岩代太郎
■出演:舘ひろし 眞栄田郷敦 尾上眞秀 黒島結菜 斎藤工 ピエール瀧 一ノ瀬ワタル MEGUMI 赤堀雅秋 市村正親 宇崎竜童 笹野高史 椎名桔平
■配給:東映 スターサンズ

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