7割が「なりたくない」のに、8割が「なってよかった」? 女性管理職の“見えない壁”を越えるヒント【NTT東日本 女性対話会レポ】
「女性活躍」と言われても、「私には関係ない」「責任が重そう」と感じていませんか?
実は女の転職typeのアンケートで管理職に「なりたくない」と答えた女性は実に70%以上。昇進や管理職への打診を前に、立ち止まってしまう女性は少なくありません。不安の正体は、一体どこにあるのでしょうか。
先日、NTT東日本 デジタル革新本部が主催した女性対話会では、まさにこの「見えない壁」の正体に迫る議論が交わされました。
『女の転職type』編集長の小林佳代子も登壇したイベントレポートから、私たちが新しいチャレンジへ踏み出すための具体的なヒントを抜き出します。
「参加者100人全員が男性」IT業界のリアルな危機感
まず、デジタル革新本部長である山名さんから提示されたのは、IT業界における女性進出への強い危機感でした。
以前、IT企業の役員が一同に集う100名の会合で、参加者全員が男性だったのです。IT分野は欧米でも女性比率がまだまだ低い。改善のためには自分たちが変化を起こすことが大切です。
続いて、ダイバーシティ推進室長の武藤さんは、変革の鍵は「公平性(Equity)」にあると解説します。
育児や介護の負担が女性に偏りがちな社会構造では、男女はそもそも同じスタートラインに立っていません。そこで必要になるのが、マイノリティーである側に、必要な分だけサポートを提供する「公平なアプローチ」だと考えます。
「育児中だから」「復帰直後だから」といった無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)を組織からなくし、誰もが自信を持ってキャリアを築ける土壌づくりにも本気で取り組んでいきます。
女性のリーダーシップを前向きに捉える:7割の女性が感じる「管理職へのためらい」
次いで編集長・小林は、女の転職typeが持つ転職データや意識調査を基に、女性管理職の現状について話しました。
日本の女性管理職比率は先進国の中でも最下位レベル。また、女性の非正規雇用率は男性の倍以上。日本の女性活躍における大きな課題です。
なぜ女性は管理職をためらうのか。『女の転職type』のアンケートを用いて解説が続きます。
『女の転職type』のアンケート結果では、女性の約7割が「責任が重い」「ハードワーク」を理由に管理職を敬遠しています。しかし、実際に管理職になった女性の約8割が「なってよかった」と回答している。ここに非常に大きなギャップが存在します。
出典:女の転職type データで知る「管理職ってどう?」
このギャップの背景にあるのが、女性に多く見られる「インポスター症候群」(自分の成功を素直に認められない傾向)だと小林は指摘します。
「インポスター症候群」とは、自分の成功を素直に認められず、自己評価が低くなってしまう傾向のこと。完璧主義でまじめな方ほど陥りやすいと言われています。
例えば、「自分の成功は実力ではなく運」と思い込んでしまうなら、成功体験を客観的な事実として受け止めてみましょう。また、「完璧主義」でできなかったことばかり見てしまうときは、上司の評価や周囲のモチベーション向上といった、仕事を通じた成長に目を向けられるといいですね。
管理職のメリットは「給与アップ」だけでなく「やりがい」や、「部下の成長を支える喜び」といった内面的な成長にあります。この成長こそが自分の市場価値を高め、人生の選択肢を広げてくれます。
【女の転職type編集長が回答】「両立がきつい」「年上部下が…」女性管理職のリアルな悩みQ&A
終盤では、事前に参加者から寄せられた具体的なキャリアの悩みに対し、小林自身の経験を交えて回答しました。
Q1. 管理職と家庭の両立に悩んでいます。たまにしんどいです…。
管理職になっても現場の仕事をやり続けたい、という方が多くオーバーワークになりがちですが、ぜひ「権限委譲」を積極的に。「後ろめたい」と思わず、メンバーの成長の機会と捉えましょう。
また、家庭における家事・育児のバランスを見直すのも大切。私も以前は家事も育児も自分がしなければと、抱え込んでいました。ふと「お互い働いているのに、これって公平じゃないな」と思い夫と話し合って変えていきました。いきなりは無理でも、少しずつお願いしていくのが良いと思います。
Q2. 「専門性が高い年上部下」への指導が難しいです。
勘違いされがちですが、上司の方が部下よりも能力が高くなければいけない、なんてことはありません。
管理職が発揮すべきリーダーシップとは「意思決定」と「能力を引き出すこと」です。技術で戦おうとせず、組織や人とのコミュニケーションでバリューを発揮することが大切です。
Q3. 成長意欲がない「静かな退職」状態のメンバーはどうするべき?
まずは「理由の把握」から始めることをおすすめします。話してみたら解決できる原因だったという場合もあります。もし本当に成長意欲がない方の場合、「明確な目標設定」を行って求める成果を明確にしましょう。
管理職になったらおすすめなのが、社内外に自分の「メンター」を持つこと。孤独になりがちな管理職ですが、悩みを一人で抱え込まない仕組みを作ることやいろいろな視点・引き出しを持つことがとても大切です。
絶対的なロールモデルは不要。自ら道を切り開く「面白さ」
講演の最後に、小林は「ロールモデルがいないからキャリアが描けない」という声に対し、強いメッセージを送りました。
絶対的なロールモデルを探すのはやめましょう。変化の時代、自分と全く同じ環境の人はいないからです。
小さな理想をいろいろな人に見出して「メンバーとのコミュニケーションの取り方はこの人」「家庭との両立の仕方はこの人」など周りにいる方を部分的なロールモデルとして参考にすること。
力の抜き方、入れ方は人それぞれですし、時期によっても異なりますが、大事なのはどんなときも人生の舵を自分で取る意思。自分にとっていいバランスを探していきましょう。
その後は、参加者同士でのワークショップが開催され、部署を超えてキャリアの悩みや職場での気付きを共有しました。
今後も、『女の転職type』は、こうした企業とのコラボレーションやイベント、コンテンツを通して、女性活躍や、女性が自分らしいキャリアを築くためのヒントを発信していきます。
取材・文/神武のぞみ(女の転職type編集部)


