リモート、フレックス、手厚い研修で「エンジニアデビューする会社」を選ぶのは危険? 女性が長く働くための“一社目”選びのススメ

リモート、フレックス、手厚い研修で「エンジニアデビューする会社」を選ぶのは危険? 女性が長く働くための“一社目”選びのススメ

時間や場所に縛られずに働けて、給与水準も高いことから、「長く働きたい」と考える女性に人気のエンジニア職。

では、どういった視点で「エンジニアデビュー1社目」を選ぶと、長期的なキャリア形成に繋がるのだろうか。

「リモートワークができるか、フレックスタイム制があるか、eラーニングなどの研修制度が充実しているか……そんな視点で会社を選ぶのは危険です」

そう話すのは、IT企業、株式会社システム・リノベイトの採用責任者である三星悟さん。

未経験者を中心に採用・育成している同社のエンジニアの9割は、異業種出身の未経験者だ。

同社で長年採用に携わる中で、未経験からエンジニアとして活躍するようになった人材、早期にIT業界から離れてしまった人材のどちらも見てきた三星さんに、「女性がIT業界で長く活躍し続けるため」にはどのような視点で、エンジニアデビューする会社を見極めればいいのかを聞いた。

株式会社システム・リノベイト 執行役員/採用責任者 三星 悟さん

株式会社システム・リノベイト
執行役員/採用責任者
三星 悟さん

1998年に大学を卒業後、東京のSI企業に就職しNotes事業に携わる。SI部門のリーダー、マネジャー職を経て東京技術責任者として活躍。 2016年システム・リノベイトに入社し、経営企画室・室長に就任。 18年9月、執行役員に就任。19年より採用責任者として、同社の新卒・中途採用をけん引している

IT業界で長く活躍できる女性、活躍できない女性の特徴

編集部

システム・リノベイトは、エンジニアの9割が異業種出身の未経験者なんですね。

三星さん

ええ。私はこれまで当社で10年にわたり、100名以上の未経験者を採用・育成してきました。

その中で責任あるポジションで活躍するようになった女性エンジニアもいれば、大手SIerに転職して大規模プロジェクトの中核として活躍するようになっている女性もいます。

もちろん当社で長く活躍し続けてくれるのが一番うれしいですが、転職することになってもIT業界でエンジニアとして可能性を広げ続けている姿を見るのはうれしいですね。

編集部

長く活躍するようになった女性エンジニアたちに共通点はありますか?

三星さん

皆に共通しているのは、「バランス感覚」が良いことでしょうか。

編集部

バランス感覚?

三星さん

「今何を求められているか」を理解し、どうするべきかを瞬時に判断できる。

そんなバランス感覚から生まれるコミュニケーション力を持っている人です。

そうやって相手に合わせて適切な距離感でコミュニケーションを取れる方は、IT業界で活躍の幅を広げている印象です。

インタビューに答える、システム・リノベイト採用責任者の三星悟さん
編集部

技術力よりもコミュニケーション力がキャリアの幅を広げているんですね。意外です。

三星さん

もちろん技術力も突き抜ければ大きな武器になります。

深く技術を極めていれば、それだけお客さまにも深い知識に基づいた提案ができるようになりますから。

一方で、深く技術を極めていなくても顧客折衝力が高い人は、プロジェクトの全体像を見渡した提案ができます。こういった力を持つ人もIT業界では重宝されます。

どちらの「コミュニケーション力」も、エンジニアとしての市場価値を高めるための武器になるはずですよ。

編集部

技術を究めた先にあるのも、「お客さまとのコミュニケーション」なんですね。

三星さん

おっしゃる通りです。当社で未経験から育成してきた女性エンジニアたちを見ると、IT業界で長く活躍している人は皆、「お客さまとのコミュニケーション力」が非常に長けています

一社目で「働きやすさ」を重視しすぎるリスク

編集部

三星さんは、「エンジニアデビュー1社目」はどのような基準で選ぶといいと思いますか?

三星さん

やはり、社内外問わず、若手のうちから多くの人とコミュニケーションを取る機会が多い企業を選ぶといいと思います。

特に、顧客折衝等の上流工程でお客さまとコミュニケーションを取る経験を積める環境を選べるといいですね。

三星さん

お客さまはITに詳しくないケースもありますから、ITリテラシーのレベルに合わせて話し方を変えたり、相手が意見しやすい言葉で伝えたりできる人は、どこに行っても活躍できると感じます。

人に合わせたコミュニケーションを取りながらプロジェクトを推進していく力を始めのうちから付けておくと、IT業界で求められる人材へと成長できるはずですよ。

インタビューに答える、システム・リノベイト採用責任者の三星悟さん
編集部

なるほど。そういった力を身に付けられて、尚かつフルリモート、フレックスなど柔軟な働き方もできる環境であれば、長く働き続けられそうです。

三星さん

長く働くために「リモートワークがしたい」「フレックスで働きたい」という動機でエンジニアを目指す人は多いですが、1社目からそういった会社を選ぶのは少し危険です。

編集部

え!それはなぜでしょうか?

三星さん

たとえば、フルリモートで働くと、意識的に社内外の人と繋がりを持たなければ、人とコミュニケーションを取る機会が減ってしまいます。

エンジニアとしてのキャリアを築き始めた初期段階にこそコミュニケーション力を磨く必要があるのに、そこを伸ばせない環境は将来的に可能性を狭めてしまうリスクがあります

三星さん

もう一点、社内外の人との繋がりを作っておくと人間関係の幅が広がり、結婚・出産などのライフイベントをへても戻ってきやすいというメリットもあります。

編集部

長く働き続けていくためには、初期のうちから人間関係を大切にした方がいいんですね。

三星さん

私自身の話をすると、システム・リノベイトが4社目になるのですが、転職活動をしたことはないんです。全て「人との繋がり」での転職でした。

仕事の中でさまざまな人との繋がりをつくり、「この人と働きたい」と思ってくれる人を増やしていくと、たとえブランクが空いたり、時間の制約がある働き方をすることになったりしても、「一緒に働こう」と声を掛けてくれる人が増えるんです。

編集部

なるほど。人との繋がりを増やしておくと、例えば産休・育休を経た後に「戻ってくる場所」の選択肢も増えると。

三星さん

そうですね。初心者のうちに人間関係をつくっておけば、その後に「リモートワークやフレックスで働きたい」といった希望も通りやすくなるはず。働き方の条件を重視した環境を選ぶのは、経験を積んだタイミングでも遅くないと思います。

インタビューに答える、システム・リノベイト採用責任者の三星悟さん

「実践での生きたコミュニケーション」は最高の研修

編集部

未経験者を中心に採用しているシステム・リノベイトでも、コミュニケーション力を磨くことを重視した育成を行っているのでしょうか?

三星さん

ええ。未経験者も一年目からお客さまと対話しながらプロジェクトを推進していく経験を積んでいます。

顧客折衝の場には上司や先輩が付き添い、対話後に「あの時、お客さまはこう言っていたけれど何でだと思う?」「何が難しかった?」など、コミュニケーションの取り方について丁寧にフィードバックをしています。

編集部

「エンジニア=パソコンとひたすら向き合う仕事」と思ってエンジニアデビューした人は、ギャップを感じそうですね。

三星さん

中にはストレスに感じる人もいるので、そういう人はまずは手を動かすことがメインの仕事をお任せし、少しずつ顧客折衝の場へと移行していますね。

最初は不満を感じていた人も、経験を積むにつれて「やっておいて良かった」と言う人が多いですよ。

インタビューに答える、システム・リノベイト採用責任者の三星悟さん
三星さん

向き不向きもあるので、無理にやらせることはないですが、やはり活躍するエンジニアに成長している人は、早期からお客さまとコミュニケーションを取る経験を積める環境をポジティブに捉えていた人が多いですね。

例えばもともと保険営業をしていた女性は、自ら積極的に顧客とコミュニケーションを取るタイプで、今では顧客の意向を汲み取って円滑にプロジェクトをリードできるサブリーダーに成長しています。

三星さん

もう一人例を挙げると、栄養士出身の女性は「技術とだけ向き合う仕事じゃなかったんだ!」と、エンジニアの仕事の意外な一面に面白さを見いだして、現在サブリーダーとして活躍中です。

編集部

社内で評価されている人も、コミュニケーション力を武器にキャリアを広げているのが伝わってきます。

三星さん

彼女たちは、女性エンジニアがより働きやすくなるように、生理休暇などの福利厚生をブラッシュアップしたり、イベントに出展する際に生成AIを使ってキャラクターを作ってみたりと、本業+αでも活躍しています。

編集部

会社の仕組みづくりにも積極的なんですね。こういった経験を積んでおくのも、将来の選択肢を広げそうですね。

三星さん

そう思います。一般的に、技術者というと「手に職がつく」「技術を極める」というイメージを持たれやすいと思いますが、実はそのルートがすべてではありません。

お客さまにしろ、社内にしろ、IT業界でも人間関係は非常に大切です。

三星さん

エンジニアデビューする企業には、eラーニングなどの研修制度が充実している企業が良いと考える人も多いですよね。

ただ、座学だとこういった生きたコミュニケーションやビジネススキルは学びづらいですし、一社目選びは「いかに周りの人とコミュニケーションを取っていけるか」を重視することが、女性がIT業界で長期的にキャリア形成していくための第一歩になると思います。

カメラ目線で微笑む、システム・リノベイト採用責任者の三星悟さん

取材・文/光谷麻里(編集部) 撮影/笹井タカマサ

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