NiziU MAYA「本当の自分が分からなくなってた」時期を救った“正解を探さない”生き方
社会現象を巻き起こしたオーディション『Nizi Project』から誕生し、今や国民的ガールズグループとしての地位を築いたNiziU。その中で“白鳥”のような優雅さとあたたかな人柄で愛されているのがMAYAさんだ。
デビュー5周年を迎えた2025年、彼女が新たな表現の場として選んだのは「絵本」の世界。
12月24日に発売される自身初の著書『まっしろなちょうちょ』(KADOKAWA)は、一匹の蝶・ナビが「本当の自分の色」を探す旅に出る物語だ。
実はこの物語には、アーティストとして輝かしいキャリアを築く裏で、MAYAさん自身が抱えてきた「正解」を求めすぎて自分を見失いかけた葛藤が投影されているという。
彼女はなぜ今、絵筆を執ることでその思いを表現しようとしたのか。制作の背景にある、プレッシャーとの向き合い方と「自分らしく働くためのヒント」を聞いた。
NiziU MAYA(マヤ)さん
2002年、石川県生まれ。9人組ガールズグループ「NIziU」のメンバー。メインカラーは紫。「Nizi Project」を経て2020年デビュー。高い表現力と安定感のあるパフォーマンスでグループを支える一方、料理上手で面倒見の良い一面から「NiziUの白鳥」「お母さん」とも呼ばれる。25年12月、初の著書となる絵本『まっしろなちょうちょ』を出版。 ■X ■Instagram
「趣味」を仕事にする怖さとワクワク
小さい頃から絵を描くことや物語を読むことが大好きだったので、今回このような素敵な機会をいただけて、本当に嬉しい気持ちでいっぱいです!
そう目を輝かせるMAYAさん。一方で、ずっと趣味として楽しんできたものをプロとして世に出すことには、大きなプレッシャーもあった。
自分の趣味でやっていたことが、こうして正式に形になるのは、やっぱり「大丈夫なのかな」って不安でした。 文章と絵だけで自分の伝えたいことを表現する難しさに、一番苦戦したんじゃないかなと思います。
多忙なワールドツアーや移動の合間を縫って、iPadで少しずつ描き進めたという本作。「歌とダンスとは別の表現で、自分の思いを届けられる」喜びが、不安を上回る原動力になったという。
根本にある「表現したい」という部分は、パフォーマンスも絵本も同じなんです。 新しいアイデアが浮かぶと「こうしたらもっと良くなりそう」という向上心が湧いてきて。この制作期間は、自分の中でもすごく勉強になる、成長の過程でした。
「皆のお母さん役」と「本当の自分」の間で揺れた日々
絵本の主人公・ナビは、どんな色にも染まれる一方で、自分の色が分からない“まっしろなちょうちょ”。MAYAさんは「ナビちゃんは私の分身のような存在」と語る。
この絵本は「ありのままの自分でいいんだ」と、自分を肯定できるようなストーリーにしたいと思い、制作しました。
そう願った背景には、MAYAさん自身が周りの期待に応えようとするあまり、息苦しさを感じた経験がある。
「NiziUのお母さん」と呼ばれることが多かったデビュー当時。落ち着いた雰囲気と面倒見の良さから自然とその役割を担い、いつしか“しっかりした自分”を演じ続けるようになっていた。
周りから「お母さんみたい」と言われることが多くて、私自身も「しっかりしなきゃ」という気持ちが大きかったんです。
本当はおちゃめなことも大好きで、メンバーとふざけ合うのも好きなのに、そういう自分よりも「ちゃんとした姿」を見せなきゃいけないって、勝手に背負っていた時期がありました。
「自分はこれで合っているのか」「正解は何なのか」。 真面目さゆえに「正解」を探し続け、自分の色を見失いかけた――それは、役割を求められる多くの働く女性と重なる葛藤でもある。
答えのない“正解”を探し続けて、本当の自分は何が好きなのか、何が大切なのか分からなくなってしまった時期でもありました。
でも今思えば、そのもがいていた時期も大切な経験の一つ。 それを乗り越えて「ありのままの自分」でいることの大切さに気付けたから、あの時の迷いも無駄じゃなかったんだなって思えます。
メンバーの「手のぬくもり」が教えてくれたもの
そんなMAYAさんが「ありのままでいい」と思えるようになった大きな理由が、NiziUのメンバーの存在だ。
いつもそばにいてくれるメンバーや家族、友達、そして応援してくれるファンの皆さんなど、多くの方々が「一番大切なのは自分らしくいること」だと教えてくれました。
絵本に登場する、ナビの心を色づかせるキャラクターたち。実はそれぞれNiziUのメンバーがモデルになっているという。
私がいっぱいいっぱいになって、心がすり減っちゃうような時、言葉にするよりも先にメンバーが気付いてくれるんです。最近もツアー中に自分の中で不安があって……そんな時、メンバーがただ「ぎゅっ」て手を握ってくれたことがありました。
そのぬくもりだけで、「あ、一人じゃないから大丈夫だ」って思えたんです。 言葉がなくても、こんなに愛を感じるんだなって。本当に「いてくれてありがとう」って思いました。
「しっかりしなきゃ」と力んでいた自分を、「そのままでいい」と受け止めてくれる仲間たち。その存在が、MAYAさんの中に「弱さも含めて自分でいい」と思える強さを育ててくれた。
物語は「めでたしめでたし」で終わらなくていい
絵本の結末について、MAYAさんはあえて「明確な答え」を描かなかったと語る。
私は「めでたしめでたし」で終わるよりも、「これから何が待ってるか分からない」と想像できるエンディングが好きなんです。だから今回も、ナビが今後どんな色になっていくのか、読んでくださった皆さんに考えてほしくて、あえて結末を決めずに終わらせました。
仕事も人生も、はっきりと色がつかない「グレーの時期」がある。でもそれも、自分を形づくる大切な色の一つ。厳しい芸能界で挑戦し続ける彼女だからこそ描けた、優しくて芯のあるメッセージだ。
自分の可能性は、歌とダンスだけじゃなかった。だからこそ、これからもいろんな形で自分を表現できる場所が増えていったらいいなと思います。
迷ってもいい、何色になってもいい。MAYAさんが描いた“まっしろなちょうちょ”の旅路は、正解を探して疲れ気味な私たちの心に、「そのままで大丈夫」という温かなエールを届けてくれるはずだ。
取材・文/大室倫子(編集部) 撮影/赤松洋太
書籍情報 『まっしろなちょうちょ』(KADOKAWA)12月24日発売
NiziU・MAYAがはじめて描いた、自分らしさに出会える絵本。 一匹の蝶・ナビが「本当の自分の色」を探して旅に出る中で、出会いや気づきを重ね、迷いながらも前へ進む姿を描いた、心温まる成長の物語。
著者:NiziU MAYA
定価:1,980円(10%税込)
発売:2025年12月24日(水)
発売・発行:株式会社KADOKAWA
『Another Action Starter』の過去記事一覧はこちら
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