30代から広がる女性のキャリア格差。女の転職type編集長が語る「長く働くための三つの視点」【厚生労働省イベントレポート】

30代から広がる女性のキャリア格差。女の転職type編集長が語る「長く働くための三つの視点」【厚生労働省イベントレポート】

「今の職場で働き続けて、理想のキャリアを築ける?」
「結婚や出産と、今の仕事は両立できるんだろうか?」

働き方やキャリアの選択肢が広がる一方で、そんな迷いや不安を感じる女性は少なくありません。

自分はこれから、どう働き続けていけばいいのか──。そのヒントになるのが、2026年2月10日に厚生労働省が主催したオンラインセミナー『仕事とくらしのリアルトーク 自分らしい働き方を見つけよう』。

仕事とくらしのリアルトーク 自分らしい働き方を見つけよう

基調講演には『女の転職type』編集長・小林佳代子が登壇し、自身の経験や最新データを交えながら、「正解のない時代」を生き抜くキャリアの考え方を語りました。

本記事では、「長く幸せにキャリアを築く“仕事地図”」をテーマにした講演の一部を紹介します。

女の転職type 編集長 小林 佳代子

女の転職type 編集長 小林 佳代子

東京女子大学卒業後、新卒で(株)キャリアデザインセンターに入社。転職情報誌及び転職サイト「type」、「女の転職type」の求人広告制作に携わる制作部に配属され、1,000社以上の企業の求人広告制作に携わる。その後、新卒採用担当、働く女性のためのWebマガジン「Woman type」編集長を経て、2018年「女の転職type」編集長に就任。20年にわたり、多くの働く女性の、迷いや悩みを広い視点で捉えつつ、常に深く寄り添い続けてきた

女性の30代から始まる「L字カーブ」の衝撃

講演の冒頭、小林は現代のキャリアを「オープンワールド型のゲーム」に例えて説明しました。

小林

かつてのキャリアは、決められた進行方向に進めばゴールに辿り着けるようなものでした。しかし今は、どこへ進んでもよく、人によって楽しみ方もゴールも違う“オープンワールド”のような状態です。

明確な正解がない時代だからこそ、自分の人生にオーナーシップ(当事者意識)を持ち、進むべき方向を示す「自分だけのコンパス」を持つことが大切です。

全員に共通する「正解ルート」はないけれど、それぞれが自分で自由にキャリアを歩めるようになった現代。

ただし選択肢が広がる一方で、「働く女性を取り巻く現実はまだ厳しい面もある」と小林は指摘します。

例えば、日本のジェンダーギャップ指数は世界146カ国中118位(2024年発表時)。この数字は、私たちが日々の生活の中で感じる「働きづらさ」の正体を物語っています。

また特に注目すべきは、男女別の雇用形態の推移です。

仕事とくらしのリアルトーク 自分らしい働き方を見つけよう
小林

20代のうちは男女で正規雇用率に大きな差はありませんが、ライフステージの変化を迎える30代以降になると、女性の正規雇用率が急激に下がり始めます。これがいわゆる「L字カーブ」と呼ばれる現象です。

実際、40代では男性の正規雇用率が約90%であるのに対し、女性は38%と、大きな差が生まれています。

小林

こうした働き方の違いは、結果として生涯年収にも影響します。男女ともに正社員として60歳まで働いた場合でも、生涯年収には約5000万円の差があるとされ、途中で非正規雇用になると、その差は1億円以上に広がります。

さらに、日本の女性管理職割合は現在13.7%。出産や育児による働き方の制約に加え、意思決定層に女性が少ないことも、キャリア格差の背景にあるのです。

幸せなキャリアのために持っておきたい「三つの視点」

仕事とくらしのリアルトーク 自分らしい働き方を見つけよう

では、こうした現実の中で女性が長く幸せに働き続けるにはどうすればいいのでしょうか。小林は、キャリアのコントローラーを自分で握るために、意識しておきたい三つの視点があると話します。

1.経済的自立を目指す

まず大切なのが、経済的に自立する力を持つこと。理想の年収や生活を思い描き、そこから逆算してキャリアを考えていくことが、自分の人生を主体的に選択する第一歩です。

小林

パートナーに依存せず、一人でも生きていける経済力を持つことは、人生の最大の防衛策になります。

そのためには、「なんとなく年収を上げたい」と考えるのではなく、自分の理想を明確にし、自分が目指したい年収や働き方を具体的にイメージすることを意識しましょう。

2.管理職を意識する

二つ目は、管理職という選択肢を最初から外さないこと。

女性の中には「管理職は大変そう」「自分には向いていないかも」と感じる人も少なくありません。しかし小林は、管理職には別のメリットもあると話します。

小林

管理職になると、給与が上がるだけでなく、実は「ルールを作る側」に回れるという大きなメリットがあります。

例えば、会社の制度が整っていないなら、自分が働きやすいようにルールを変えていける。その裁量を持てるのが管理職の良さでもあります。

3.過渡期を意識する

三つ目は、キャリアの「過渡期」を意識すること。女性のキャリアには、ライフイベントや働き方の変化によって、どうしても「モヤモヤする時期(過渡期)」が訪れます。その時に一人で抱え込まず、自分の状況や気持ちを言語化し、周囲やパートナーと対話することが大切だと小林は続けます。

小林

「自分の母親がこうだったから」というバイアスを捨て、パートナーと家事育児をどうシェアするかなど、将来のキャリアプランをすり合わせておくことも、ライフステージの変化に負けないキャリア形成につながります。

キャリアの8割は偶然?「計画的偶発性理論」

小林は講演の中で、キャリアの考え方として「計画的偶発性理論」も紹介しました。

これは、キャリアの約8割は予期しない出来事によって決まるというもの。

例えば、想定していなかった部署への配属や、思いがけず任されるプロジェクトといった出来事が、その後のキャリアを大きく変えることがあります。

小林

配属ガチャや環境の変化に、戸惑うこともあるかもしれません。でも、そうした出来事も見方を変えれば成長のチャンスになることがあります。

こうした偶然のチャンスを生かすためには、次の五つの姿勢が重要です。

偶然のチャンスを生かすマインド

好奇心:新しいことに興味を持つ
持続性:失敗しても継続する
柔軟性:こだわりを捨て、流れに乗る
楽観性:「なんとかなる」と前向きに捉える
冒険心:未知のことにも挑戦する

また、小林は「スキル」の考え方についても触れました。スキルは一つの専門性に固執せず、複数の経験を掛け合わせることで、自分ならではの価値を生み出すことができるといいます。

小林

例えば、私自身のキャリアも「女性採用」「管理職」「企画・編集」といった経験の掛け合わせによって形づくられてきました。スキルは複数の経験を組み合わせることで、市場価値の高いオンリーワンの存在になれると考えてください。

幸せなキャリアは「理想の言語化」から始まる

セミナーの最後には、参加者が自分の価値観を見つめ直すミニワークショップも行われました。

提示されたのは、「究極の二択」。参加者は二つの選択肢のうちどちらを選ぶかを考えながら、「なぜその選択が良いと思うのか」を掘り下げていきます。

このワークの目的は、自分の価値観や理想の働き方を言語化することです。

小林

幸せなキャリアは誰かが用意してくれるものではなく、自分自身で選び取っていくものです。

だからこそまずは、自分がどんな働き方をしたいのか、どんな人生を送りたいのかを言葉にしてみてください。そうすることで、自分が進みたい方向が少しずつ見えてきます。

正解のない時代だからこそ、自分自身で人生のコントローラーを握ること。今回の講演で語られたヒントをきっかけに、まずは自分の理想の働き方を言葉にしてみてはいかがでしょうか。

取材・文/神武のぞみ(女の転職type編集部)

小林佳代子への取材・登壇依頼はこちら

https://epfb.f.msgs.jp/webapp/form/21350_epfb_80/index.do

基調講演の動画配信はこちら(2026年3月末まで)