【中村仁美】レギュラー番組をすべて降板して産休へ。それでも「また一緒に仕事したい」と思われる人の働き方
フジテレビアナウンサーとして活躍し、現在はフリーアナウンサーとして幅広く活動する中村仁美さん。2026年2月27日には、夫であるお笑いコンビ・さまぁ〜ずの大竹一樹さんとの日常をつづった初のエッセイ集『妻脳 vs.夫脳 年上夫のあるある観察記』(光文社)を出版した。
今でこそ家庭的なイメージのある彼女だが、20代の頃は「仕事100%」だったという。結婚や出産を経てライフステージが変わる中で、働き方や仕事への向き合い方も少しずつ変化していった。
第一子の出産を前に、担当していたレギュラー番組をすべて降板し、仕事を“ゼロ”にして産休に入った経験もある。
それでも復帰後、中村さんには再び仕事のオファーが届き続けている。キャリアを一度リセットしても、「また一緒に仕事がしたい」と思われる人にはどんな共通点があるのだろうか。中村さんの仕事観を聞く中で、そのヒントを探った。
中村仁美さん
フリーアナウンサー。1979年生まれ。神奈川県出身。お茶の水女子大学卒業後、2002年にフジテレビへ入社。17年にフリーアナウンサーに転向後は、定評のあるトーク力や表現力でテレビ、ラジオ、執筆などレギュラーを多く持ち、多方面で活躍中。男子三兄弟の子育てに奮闘中。26年2月には、夫婦の日常をユーモラスにつづった初のエッセイ集『妻脳 vs.夫脳 年上夫のあるある観察記』(光文社)を出版 Instagram
夫の“謎行動”を笑いに。初エッセイ出版の裏側
2026年2月に発売された中村仁美さん初のエッセイ集『妻脳 vs.夫脳 年上夫のあるある観察記』。本書には、夫であるお笑いコンビ・さまぁ〜ずの大竹一樹さんとの日常や、三人の子どもたちとの生活の中で起きた出来事が、ユーモアたっぷりにつづられている。
とはいえ、中村さん自身はもともと「エッセイを書こう」と思っていたわけではなかったという。
きっかけは雑誌『STORY』のライターさんでした。子どもを通じて知り合って、雑談の中で「うちってこうなんです」と夫の話をしていたら、「それ、すごく面白いですよ。書いてみませんか?」と言っていただいて。
当時の中村さんにとっては、あくまで日常の愚痴のようなものだった。
私はただ愚痴を言っていただけなんです。でも家族だとイラッとすることでも、第三者から見たら笑える話なんだと思って(笑)。じゃあ自分も俯瞰して見てみようと思いました。
実際、執筆するようになってからは、気持ちの整理の仕方も変わっていったという。
夫が変わったことを言ったときや、少しムッとすることを言われたときには、すぐにスマートフォンにメモを残すようになった。
それまでは、ただイライラして終わっていました。でも書いて笑いにすることで、自分の中でも消化できるようになったんです。
「これはどういうストーリーにできるかな」って考えるようになると、怒りに直接引っ張られなくなるんですよね。
そうして積み重ねてきたエピソードが、今回一冊の本としてまとまった。
書籍になったことで、改めて自分たちの生活を振り返る機会にもなりました。夫のことを理解してもらえたらうれしいですし、これを読んで、私が“鬼嫁”だと思われなくなればいいなと思っています(笑)
「20代は仕事100%」だった私が、キャリアをリセットした理由
今でこそ、3児の母として子育てと仕事を両立する中村さんだが、20代の頃は「仕事中心」の毎日を送っていたという。
20代の頃は、本当に仕事ばかり。もちろん友人と遊びに行くこともありましたが、とにかく仕事がしたいし、できるようになりたい、という気持ちでいっぱいでした。
フジテレビのアナウンサーとして経験を積みながら、がむしゃらに働く日々。そんな中村さんの働き方が変わり始めたのは、結婚、そして出産を経験してからだった。
子どもが1人、2人、3人と生まれていくにつれて、仕事だけではなくて生活の方ももっと充実させたいと思うようになりました。20代の頃は仕事に100%の時間を使えましたが、大事なものが増えていくと、24時間の中でどうバランスを取るかを考えるようになります。
とはいえ、最初からその考え方だったわけではない。第一子の出産を前にしたとき、中村さんは担当していたレギュラー番組をすべて降板し、仕事を“ゼロ”にして産休に入る決断をした。
代役を立ててレギュラーを残すという方法もあると思いますが、私は一度全部終わらせてから休みに入ろうと決めました。仕事を一度“リセットする”イメージです。
キャリアを一度止めることに、不安を感じる人は少なくない。しかし中村さんにとって、その時間は働き方を見つめ直す機会にもなったという。
休まずにキャリアを積み続けている人たちは本当にすごいと思います。でも私の場合は、一度立ち止まる時間があったことで、仕事への向き合い方を改めて考えることができました。
キャリアは「一本道」ではない。出産や子育てを経験する中で、中村さんはそう実感するようになった。
キャリアを止めると思うと怖いと感じることもあると思います。でも、違う時間を過ごすことで見えてくるものもあるし、人生で大事にしたいことは何かを考える余白も生まれる。私にとっては、その時間があったことがすごく大きかったですね。
キャリアを止めても「信頼」は止まらない
その後産休から復帰し、またゼロから仕事を始めたとき。中村さんが改めて実感したのが、「信頼を積み重ねることの大切さ」だった。
産休に入ると仕事は一度ゼロになりますが、またしっかり向き合って仕事をしていけば、それを見てくれている人がいると感じました。姿勢次第で仕事は戻ってくるんだと思います。
では、なぜ中村さんには復帰後も仕事のオファーが届き続けているのだろうか。その背景には、長年大切にしてきた仕事への向き合い方があった。
私は、本番でいいパフォーマンスをするには下準備をしないと自信が持てないタイプなんです。学生の頃からそうでしたし、アナウンサーになってからもずっと変わりません。
忙しい日々の中でも、どんなに短い時間でも準備は徹底する。そうした小さな積み重ねが、本番での安心感につながるという。
そしてもう一つ、中村さんが大切にしているのが「現場で一緒に働く人たちへの目線」だ。
私にとっての“いい仕事”は、一緒に仕事をした人が「今日は楽しかった」と言って帰ってくれることなんです。
アナウンサーはタレントさんとは違って、前に出る役割ではありません。だからこそ、一緒に仕事をしている人たちが気持ちよく仕事できるように、少しでも役に立てたらいいなと思っています。
その考え方の原点になったのが、フジテレビ時代に出演していたバラエティー番組『ヘキサゴン』での経験だった。
バラエティー番組では、自分で役割を見つけないと、ただMCの横に立っているだけの人になってしまう。そこで、自分は現場で何ができるんだろうと考えるようになりました。
たとえ放送ではカットされてしまっても、現場の空気を盛り上げたり、出演者が話しやすい流れを作ったりすることも大切な仕事。そうした姿勢が、スタッフとの信頼関係につながっていく。
視聴者の方には見えなくても、スタッフの方が「あの一言で盛り上がりました」「助かりました」と言ってくれると、すごくうれしいんです。
華やかな世界に見えるテレビの仕事。しかし中村さんは、自分が目立つことよりも「一緒に番組を作る人たちが気持ちよく仕事できること」を大切にしてきた。
そうした小さな気配りの積み重ねが、「また一緒に仕事をしたい」という信頼につながっているのかもしれない。
将来は分からないからこそ、「今やりたいこと」を大切に
キャリアをリセットしても、仕事のオファーが届き続けている中村さん。その働き方や仕事観の根底には、「将来を決めすぎない」という考え方がある。
将来って本当に分からないんですよね。私も、本を書くなんて1ミリも思っていませんでしたし、会社を辞めるとも思っていませんでした。だからこそ、「今、自分が何をやりたいか」を大事にすることが一番だと思います。
そんな中村さんは、迷ったときほど「まずは動いてみること」を大切にしてきた。
悩んでいるときに、いろいろ行動してみることって大事だと思うんです。もがいてみることで、意外と答えが近くにあることに気づくこともあります。
例えば、中村さんが結婚を考えていた頃のこと。当時、現在の夫である大竹さんはあまり結婚する気がなかったという。
私は子どもが欲しかったので、結婚するためにいろいろ動いてみたんですけど、結局「世の中にこの人以上に好きな人はいないんだな」と気付いて。それで最終的に夫と結婚しました(笑)。
自分がほしい未来をつかむためには、黙って止まっているより、何でも良いから動いてみるのが一番の近道だなって思います。
未来は誰にも分からない。だからこそ、「今やりたいこと」に正直に向き合い、一歩踏み出してみる。それが、自分らしいキャリアと人生をつくる第一歩になるのかもしれない。
取材・文/大室倫子(編集部) 撮影/笹井タカマサ
書籍情報
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定価:1,760円(税込)
出版社:光文社


