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APR/2012

【菊間千乃】女子アナから弁護士へ。事故をきっかけにリハビリを経てゼロからの再スタート

菊間千乃

菊間千乃(きくま・ゆきの)

1972年生まれ。早稲田大学法学部卒業後、1995年にアナウンサー職でフジテレビに入社。98年、生放送中にビルから転落して重傷を負うが、翌年に復帰。2005年より、仕事と並行して大宮法科大学院大学に通学。07年12月にフジテレビを退社してから、2度目の挑戦で司法試験に合格。1年間の司法修習を経て、12年1月より弁護士として活動を開始。

入社4年目の大事故で3カ月入院。アナウンサーという仕事の意味を考え続けた

仕事における自分の存在意義や立ち位置を考え、ふと将来に不安を覚える……。働く女性なら、多かれ少なかれ、そんな焦燥に駆られることもあるだろう。

フジテレビでアナウンサーとして活躍をしていた菊間千乃さんは、思いがけない形でその焦りと強制的に向き合わされた。

それは26歳の時、生放送の中継中に5階建てのビルから転落し、腰椎圧迫骨折の重傷を負って3か月余り入院したときのことだった。

「26歳なんて仕事を覚えたばかりですから、将来を不安に思うひまや仕事の意味を考える時間なんてありませんでした。でも、予期しない形で仕事ができない状態に陥ったことが、仕事に対する考え方が変わるきっかけになったんです」

もしかしたら死んでいたかもしれない。下半身不随になっていたかもしれない。そこを救われた命なのだから、これからは仕事も遊びも中途半端に終わらせず、精一杯取り組むんだ--。

そう決意した一方で、菊間さんは、テレビのなかで自分がいたはずの場所に他のアナウンサーが座り、何事も無かったかのように粛々と番組が進行している現実を目の当たりにし、ショックを受けた。

「初めてアナウンサーという職について真剣に考えました。感じたのは、テレビの画面にはよそ行きの言葉が溢れているということ。誰がアナウンサーでも同じなんです。そんな番組を見ながら、自分の存在意義を考えました」

菊間さんは、ベッドの上に伏せながら、自分の役割を客観的に分析した。

本来アナウンサーは、ディレクターが作りたいと考えている番組を滞りなく進行させ、用意された情報を間違いなく伝えるのが仕事だ。けれど菊間さんは、そこに違和感を持ち始めた。

「自分が発した以上、その言葉の責任は自分が負うことになります。それならば、自分が納得できるまで調べ、真実だけを語ろう。その結果できた番組から、視聴者に届くメッセージが生まれればと思いました」

アナウンサーの領域を超えた役割を担おうともがき始めた菊間さん。最初はディレクターとぶつかることもあった。しかし、徐々に制作に関わるメンバーの一人として受け入れられ、担当した番組の視聴率も上がっていった。

報道の最前線に立ち続けたい。そのための“武器”を得ようともがいた日々

菊間千乃

再び菊間さんが自分の仕事について考えたのは、30代に入った時だった。

20代で経験したシドニーオリンピックの取材から4年が経過したアテネオリンピックに際し、自分はこの4年間に一体何をしてきたのだろうと自問自答したのだという。

「4年ごとにすさまじい努力に裏打ちされた感動を与えてくれる選手を見ながら、果たして自分は成長できたのか、次の4年でどうなるのかと考えました。その時に初めて、アナウンサーの“定年”がリアルに感じられました」

先輩アナウンサーを見ていると、40~50歳あたりで管理職となり、テレビの最前線にはあまり登場しなくなるというのが一般的なキャリアのあり方だ。

けれど、できることならアナウンサーとして最前線に立ち続けたい。そう考えた菊間さんは、「法律の知識があれば、専門家としての役割が加わり、アナウンサーとしての“定年”が引き延ばされるのではないか」と考えた。

当時はちょうど新しい司法試験が始まり、広く社会人に門戸を開こうとロースクールが開校されるという時期だった。

「だから最初は、弁護士になろうなんて全く考えていなくて。法律の勉強は、アナウンサーを長く続けるための“武器”だったんです」

仕事と並行してロースクールに通い、司法試験を突破するということがどれほど過酷で無謀なことか、気付いたのは本格的に勉強を始めてからのことだった。

「仕事をしていると勉強が気になり、勉強をしていると仕事が気になる。どっちも中途半端になってしまいそうで嫌でした」

最終的に仕事を辞めようと決めたのは、「仕事を辞めても司法試験に受かるかどうか分からないけれど、辞めなければ絶対に受かることはないだろう」と思ったからだった。

もともと、中途半端なことが許せない性格。法律の勉強が想像以上に楽しくなり、退路を断って司法試験にチャレンジすることを決めた。

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