中村仁美「若いアナがいい? それなら結果で返します」価値観の違う相手とうまく付き合う仕事術
夫であるお笑いコンビ・さまぁ〜ずの大竹一樹さんとの日常をつづった初のエッセイ集『妻脳 vs.夫脳 年上夫のあるある観察記』(光文社)を出版した、フリーアナウンサーの中村仁美さん。
本書では、“昭和脳”な年上夫との価値観の違いから生まれる日常のすれ違いが、ユーモアたっぷりに描かれている。
こういった結婚生活の中で生まれる小さなモヤモヤや理不尽は、仕事の人間関係に通ずるものもあるはずだ。
昭和的な価値観の上司、世代の違う先輩や後輩、そして家庭でのパートナー。価値観の違う相手と、どう付き合えばいいのか。中村さんの経験から、“世代間の違い”に振り回されない働き方のヒントを探った。
中村仁美さん
フリーアナウンサー。1979年生まれ。神奈川県出身。お茶の水女子大学卒業後、2002年にフジテレビへ入社。17年にフリーアナウンサーに転向後は、定評のあるトーク力や表現力でテレビ、ラジオ、執筆などレギュラーを多く持ち、多方面で活躍中。男子三兄弟の子育てに奮闘中。26年2月には、夫婦の日常をユーモラスにつづった初のエッセイ集『妻脳 vs.夫脳 年上夫のあるある観察記』(光文社)を出版 Instagram
「その場で傷つくのは損」理不尽を“ネタ”に変える思考
価値観の違う相手とのすれ違いは、職場でも日常でも起こるものだ。中村さん自身も、アナウンサーとして働く中で、理不尽だと感じる言葉をかけられた経験は少なくないという。
そんなとき、中村さんが意識していたのは「その場で傷ついて終わらせないこと」だ。
局アナ時代から、嫌なことを言われたら「今度の飲み会のネタにしよう」と思うようにしていました。自分だけがその場で傷ついて終わる、なんて損だなと思っていて。
理不尽な言葉を真正面から受け止めてしまうと、どうしても気持ちが引きずられてしまう。だからこそ、少し距離を置いて「ネタ」として捉えるようにしてきたという。
もちろん、その瞬間は傷つきます。でも「これ、絶対どこかで話してやろう!」と思うと、少し気持ちが楽になるんですよね。
こうした考え方は、今回出版したエッセイにも通じている。夫との日常で感じる小さなモヤモヤも、そのまま怒りとして受け止めるのではなく、少し俯瞰して見ることで笑いに変えてきた。
理不尽な出来事を「ネタ」に変える。そんな視点が、中村さんなりの明るい気持ちの切り替え方なのだ。
「昭和夫」との日常が生み出すリアルエピソードをたっぷり詰め込んだ最新書籍『妻脳 vs.夫脳 年上夫のあるある観察記』(光文社)の一コマ
「年齢いじり」には結果で返すしかない
とはいえ、実際に理不尽な言葉をかけられたとき、気持ちを切り替えるのは簡単ではない。
中村さんにも、忘れられない出来事があるという。あるロケ現場で、関係者からこんな言葉をかけられた。
ある現場に行ったら、「もっと若いアナウンサーに来てほしかったな」と冗談っぽく言われたんです。「えっ?」と思いましたけど、それが本音なんだろうなとも思って。
「番組に華を添える若い女性アナウンサー」。そんな昭和的な価値観をネタにした言葉。
それでも中村さんが選んだのは、「若い子じゃなくて悪かったな!」と感情的に反応することではなく、仕事で印象を変えていくという向き合い方だった。
だったら「やっぱり若い子じゃなくて、中村を呼んでよかったな」と思われる仕事をしようと思いました。結果で返すしかないなと。
価値観の違う相手と向き合うとき、言葉に振り回されるのではなく、まずは自分にできることを積み重ねる。中村さんはそう考え、目の前の仕事に向き合ってきたという。
次に「あの人、意外とできたな」「また呼ぼうかな」と思ってもらえるように、目の前の仕事を積み重ねていくしかないと思いました。
嫌な言葉があったとしても、それに振り回され続ける必要はない。印象や評価は、結局「仕事の積み重ね」で変わっていくものなのだ。
世代の違う相手とは「教えてもらう」姿勢で
年上世代からの理不尽な言葉に向き合う一方で、年下世代とのコミュニケーションでは、また違った難しさを感じることもある。
中村さん自身もキャリアを重ね、年下との価値観の違いに戸惑う場面も少なくないと話す。そんなとき、意識しているのは「上から目線にならないこと」だ。
年下の子と仕事をするときは、「若い子たちはどういう考え方をしているんだろう」と思って、いろいろ質問するようにしています。例えば、マッチングアプリで出会うってどういう感じなの?とか(笑)。否定するのではなく、「そういう考え方もあるんだ」と教えてもらう感覚ですね。
分からないことを知ったかぶりしないことも、大切にしている姿勢の一つ。
分からないことは「分からない」と言った方がいいと思うんです。知っているふりをしてしまうと、逆に距離ができてしまうこともあるので。
世代が違えば、価値観や常識が違うのは当たり前。だから自分の昔の成功体験を語るより、「今ってどうなの?」と聞く方が会話は広がると思います。興味を持って聞けば、皆意外と教えてくれますから。
「分かり合えない前提」で、人間関係は少し楽になる
価値観の違いに向き合うという意味では、仕事以上に身近なのが家庭での関係かもしれない。今回出版したエッセイでも描かれているように、中村さんの夫・大竹一樹さんは“昭和脳”な一面を持つという。
結婚生活の中では、考え方の違いから小さなモヤモヤが生まれることもある。しかし中村さんは、相手を変えようとするよりも「考え方が違うことを前提にする」方が気持ちは楽になると話す。
夫に対しては、言っても変わらないなと思うこともあります。だったら、ずっとイライラしているより「どうぞ」と譲ってしまった方が、自分の気持ちとしては楽なんです。
もちろん、すべてを我慢するという意味ではない。大切なのは、相手を変えようとして自分が消耗しすぎないことだという。
ずっと「なんで分かってくれないんだろう」と思い続けるのは、心にもよくないですよね。諦めというより、「考え方が違う人なんだ」と受け止める感じです。
とはいえ、根本的な部分では共通しているものもある。その共通点さえ大事にしていれば、少しの違いは気にならなくなってくるのかもしれない。
夫とは、子どもという共通の宝物ができたことで、「子どもを大事にしたい」という気持ちはお互い同じなんだと分かりました。やり方は違っても、目指しているところは一緒なんですよね。
価値観の違う相手と向き合うとき、すべてを理解し合おうとすると疲れてしまうこともある。だからこそ、ときには「分かり合えない部分がある」と認めることも、多様な価値観の中で人間関係を長く続けていくための一つの方法なのかもしれない。
取材・文/大室倫子(編集部) 撮影/笹井タカマサ
書籍情報
中村仁美さんの初エッセイ集『妻脳vs.夫脳 年上夫のあるある観察記』(光文社)が好評発売中!
ファッション&ライフスタイル誌「STORY」で2021年から連載を開始したエッセイが、1冊の本にまとまりました。
世代的に家のことは妻に任せておきたい「昭和夫」と、家は休憩するところじゃない!と言い放つ「男前妻」の日常が生み出すリアルエピソード。
「昭和夫」はいわずと知れた人気芸人・さまぁ~ず大竹一樹さん。両者からバラエティ番組等でもたびたび語られる、三兄弟子育ての中から生まれる爆笑話や、妻側から見た、昭和夫のクスっと笑える珍発言&エピソードがギュっと詰め込まれています。
定価:1,760円(税込)
出版社:光文社


