26 JUN/2015

「収入へのこだわり」が選考を有利にする!? 事例から見る“年収アップ転職”のコツ

「収入へのこだわり」が選考を有利にする!? 事例から見る“年収UP”のコツ

転職をするとき、気になるのはやっぱり年収。「本当はこれくらいほしいのに……」という希望はあっても、つい気が引けて言い出せない人も多いだろう。

「採用担当者だって毎回いろんな転職者の対応をしているわけですから、ある程度交渉が入ることを想定した上で金額を提示しているはず。だから何も言わないのは、むしろ損なくらいです」

こう話すのは、キャリアカウンセラーの水野順子さん。そこで今回は、納得の年収で気持ち良く新天地でスタートを切れるよう、上手な年収交渉のポイントを水野さんに聞いてみた。

【キャリアカウンセラー

キャリアカウンセラー水野順子さん

株式会社キャリアコレクション代表取締役、All About女性の転職ガイド。公務員・外資系大手人材サービス会社を経て独立。キャリアカウンセリングや研修・講演を通じ、メンタルケアや人間関係の築き方などを含めた女性のキャリア支援を行っている。過去に20,000人以上へのキャリアカウンセリングと、60,000人以上への講演・研修によるキャリア支援実績がある

「いくらでもいい」は絶対に禁句!
年収へのこだわりは仕事への意欲と心得て

「女性で多いのは、つい自分に自信がなくて『いくらでもいいです』と言ってしまうパターン。けど、よく考えてみてください。あなたが商品を選ぶとき、『いくらでもいい』というものを安心して買えますか?」

確かにしっかりとした性能を備えた商品には見合った金額が設定されているのが世の常。「きちんとお金に価値を置けない人はビジネスでも信用できません」と水野さんは断言する。

採用担当者には条件調整に備えて、提示する年収金額にある程度のバッファを持たされているのが一般的。だから交渉するかしないかで年収は確実に変わってくるのだ。

「入社してから自分の基本給を上げていくのはとても大変ですよね。結果、それが不満につながるケースもよくあります。だから入社する前の段階で、たとえ1万でも2万でも上乗せできるなら、絶対にしておくべきです」

実際、年収交渉に成功して当初より年収を大幅アップできた事例は数多くあると言う。

CASE1:前職での実績をプレゼンして、年収100万円アップ!

年齢:30代後半
前職:外資系企業の事務部門マネジャー → 現職:外資系企業の事務部門マネジャー
前職の年収:500万円 → 転職時の年収:600万円(募集要項の年収:500万円)

「注目すべきは、彼女がバックオフィス系の職種であること。一般的に数字や実績が見えやすい営業や企画と違って、事務系の職種はどうしてもこれまでの実績をPRしにくいもの。

だけど、彼女はきちんと前職でやってきたことをデータ化して、業務の削減時間や改善率などの客観的な数値をもとにどれだけ貢献をもたらしたかプレゼンをしたんです。

年収を上げるためには、このようにまず納得感のある根拠を提示することが大事ですね」

CASE2:持ち前の折衝力で、職種未経験でも年収80万円アップ!

年齢:20代後半
前職:営業 → 現職:法務
前職の年収:320万円 → 転職後の年収:400万円(募集要項の年収:320万円)

「彼女はもともと営業職志望で面接を受けていましたが、選考の途中で営業の枠が埋まってしまった。ですが、折衝力を見込まれて法務での入社を打診されたのです。

企業から逆オファーを受けた場合、相手が自分の能力を認めてくれているわけですから、年収交渉のチャンス。希望年収を聞かれたときに、彼女はそのアドバンテージを活かして、あえて前職よりも高い希望金額を提示。

職種未経験の場合、年収は下がるのが一般的ですが、年収80万円アップに成功しました」

CASE3:大手から中小への転職で、新卒3年目ながら年収50万円アップ!

年齢:20代前半
前職:事務 → 現職:事務(幹部候補)
前職の年収:300万円 → 転職後の年収:350万円(募集要項の年収:300万円)

「このケースのポイントは、彼女がローキャリアではあるものの大手企業に在籍していたこと。中小企業の中には、自社にはいない社歴・学歴を持った転職者を歓迎するところがたくさんあります。

特にキャリア志向の強い女性は中小では貴重な存在。彼女もマネジメント職への意欲を積極的にアピールしたところ、新卒3年目ながら将来の幹部候補生として採用され、年収アップを実現しました」

年収交渉は1次面接から始まっている!押さえておきたい3つのマナー

この3つの事例、いずれも最終面接や内定後が、年収の具体的な金額を交渉したタイミングだという。だが、これらの事例から見えてくることは、そもそも面接の段階から年収交渉は始まっているということだ。

いざ交渉ボードについたとき、こちらがイニシアチブを握っておくためにも、その前段階から「この人なら年収がたとえ上がっても採用したい」と思わせておかなければならない。

「面接は企業と候補者がお互いのことを判断する場。あくまで両者は対等な関係です。下手に出過ぎず、しっかり自分の価値をアピールしてください。

特に営業や企画といった前に出る職種にとって、プレゼンテーション力や交渉力は重要な資質の一つ。きちんと年収交渉ができないと、かえって仕事ができない人だと悪印象を与えかねません。

それに特定の職種に限らず、こういう能力を備えた女性を採用したい企業は今とても増えています。年収交渉をしようと意識することが、採用にもつながるんですよ」

ただし、交渉を有利に進めるためには、最低限のマナーがある。

鉄則1:年収の話をするのは相手に聞かれてから

「自分からお金の話を聞くのは、さすがにガツガツとした印象を与えます。年収について確認をするのは、あくまで相手から尋ねられたときに。

どうしても聞いておきたい場合も、いくつかの質問とまじえながら、『とても大切なことなので念のため確認させていただけますでしょうか』と配慮のある前置きを忘れずに」

鉄則2:一方的な条件提示はNG!

「一方的に『希望は500万円です』と叩きつけるのは避けた方がいいですね。上手な交渉のコツは、相手とキャッチボールをすること。まずは『できれば』とクッションを挟んだ上で、希望金額を提示しましょう。

そのとき、前職での経験や実績を根拠として提示するのを忘れずに。前職でそして『いかがでょうか』とボールをきちんと投げ返すと、相手にも良い印象を与えることができます」

鉄則3:希望年収は“最低、理想、現実”の三段構成で考える

「まず頭の中で準備しておかなければいけないのは、これを下回ると入社そのものができないという最低限の給与。その上で希望の金額を伝えます。

ただし、そこから交渉が入って下方修正されることは織り込んでおいた方がいいでしょう。なので、希望金額は、着地の金額を見越した上で少し高めに設定するのがベターです」

自分の年収が適切なのか相場が分からない人は、同職種の求人をチェックしてみたり、紹介会社に相談してみるのも手だ。満足な年収は、仕事へのモチベーションにも直結する。

せっかくこれまで頑張って経験を積み、スキルを身に付けてきたのに、自分を安売りしてしまってはもったいない。交渉スキルを発揮することで他の応募者に差を付けてみては?

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取材・文/横川良明