03 MAR/2015

部下を残して帰宅する上司、四つのタイプって?「人に残業させたのに定時帰宅」の謎

上司に対する「何で? どうして?」をズバっと解説
堂園姐さんの「上司のキモチ」翻訳講座

上司に対して日々感じている「なんでそんなこと言うの?」「どうしてそういうことするの?」という不満や疑念。それを直接上司にぶつけたいと思っても、「余計に怒られるんじゃないか」「印象が悪くなるんじゃないか」とモヤモヤしたまま自己完結してしまっている女性も多いのでは? そんな働く女性たちの疑問に、最強ワーキングマザー・堂薗稚子さんが、上司の立場からズバッと解説! 上司って、ホントはすごくあなたのことを考えてるのかも!?

みなさま、こんにちは。堂薗です。

「部下に残業をさせておいて、上司は定時に帰るなんて。信じられない!」

「残業テーマ」の中でも目立っていた上司への不満コメントです。今回は、こんな上司が何を考えているか、取り上げてみます。

防災

株式会社ACT3
代表取締役 堂薗稚子(どうぞの・わかこ)

1969年生まれ。1992年上智大学文学部卒業後、リクルート入社。営業として数々の表彰を受ける。「リクルートブック」「就職ジャーナル」副編集長などを経験。2004年に第1子出産を経て翌年復職。07年に当時組織で最年少、女性唯一のカンパニーオフィサーに任用される。その後、第2子出産後はダイバーシティ推進マネジャーとして、ワーキングマザーで構成された営業組織を立ち上げ、女性の活躍を現場で強く推進。経営とともに真の女性活躍を推進したいという思いを強くし、13年に退職し、株式会社ACT3設立。現在は、女性活躍をテーマに、講演や執筆、企業向けにコンサルティングなどを行う

冷静に考えてみると、上司の立場も難しいんですけどねえ。上司が遅くまで仕事していると部下は帰りにくい雰囲気になると言われるし、忙しい時にとっとと帰宅したら嫌われるし。「残るのと帰るのとどっちがいいんだよ?」って気分にもなっているかも(笑)

私が若かりしころは、「若手社員はモーレツに働く人、上司はすごく偉い人」という時代でした。だからなのか、上司が出掛けたまま会社に戻らずに帰ってしまった、とか、日中もどこにいるのかよく分からない、ということがあっても、「偉くなると自由なんだわ」と呑気に考えていて、夜に仕事をしているときは、上司がいない方が気楽だったような記憶があります。

コーヒーを飲みながら先輩に愚痴をこぼしたりもできましたし、企画もおやつを存分に食べながら考えられたし(笑)。先生が教室からいない「自習時間」の気楽さといいますか、そういうのびのびした空気が生まれていました。今思えば、緊張感がなくなって、長くダラダラ働いてしまっていたという面もあったかもしれません。

時計を抱える会社員たち

自分が残業しているのに、帰宅してしまう上司にイライラしてしまうのは、部下に対する「無関心」「愛のなさ」を、感じさせられてしまうからなのでしょうね。キリキリした職場の雰囲気をまるで気に掛けずに、「お先に~」とさっさと帰っちゃう上司、確かにいます。

私自身は、上司が残っている方が落ち着かないタイプではありましたが、20年以上サラリーマンをやってきて振り返ってみると、実は「早く帰っちゃう上司」にも、多くの異なるタイプがいたように思います。

1.夜になるとエネルギー切れするタイプ

まず代表格は、このタイプ。私自身も、40代に突入してから「これか~!」と思うようになったのですが、加齢による集中力の低下ってヤツは、すごく切実です。「若い時は徹夜で仕事していたのに」などの中年の嘆きを聞いたことがあるかもしれませんが、徹夜できないどころじゃない(笑)

上司という人種は、何とか仕事も自分もコントロールしようとするので、夜に充電すると朝は比較的元気に仕事することができます。ところが、その朝のテンションに任せて多くのタスクをこなしているうちに、エネルギーが段々と減っていき、夜になるとぐったりし始めて、集中力を圧倒的に欠いてきてしまいます。あっという間に電源がなくなるスマホみたいないものです(笑)

こういう電池切れの人たちは、夜仕事をしていても役に立たないし、それを自覚もしているので、次の日の為にも早く帰してあげてください(笑)。文句も朝言った方がちゃんと聞いてくれますよ。

2.残業を減らす旗ふりを試みているタイプ

このタイプは今の時代、すごく増えてきていると思います。10年くらい前から特に、「労働時間管理」と「従業員の心身の健康」の関係が見直されていますから、部下の総労働時間や残業時間の減少にきっちり目標を持たされる上司が増えています。今や、部下に残業させ過ぎると評価が下がることも普通です。

さまざまなマネジメント手法を考えて、悶々としているワケですが、その1つとして「みんなが早く帰りやすい組織風土を作るために、自ら早く帰ろう」と決めた上司たちがいるということです。まあ、「早く帰る」行動だけで、説明もなくマネジメントも手付かずだとしたら、全体の仕事は減らないわけだし、部下たちから見れば「はあ?」って気分だとは思いますが、ぶきっちょ上司の「せめてもの努力」なのです。

このタイプは「まだ終わらないのか?」「何時まで掛かるのか?」などと早く帰るように促す発言が多いのですぐ判別できます。そして、業務改善プランを持ち込んだりすると喜びます。

私、実はこのタイプでした! 特に、ワーキングマザーの営業組織を担当していたころは、上司である自分が残業しては良くないと強く思っていました。「もっとこうしたら、生産性が上がりそう!」といったアイデアはみんなで出し合い、私は諸々、上層部に掛け合いに行かされていましたが、とにかく、週に2日はあらかじめ予告しておいて、とっとと帰宅するように心掛けていました。さすがに、残っている部下たちに声を掛けてから帰る、くらいはしていましたし、持ち帰りの仕事もたっぷりバッグに入れてましたけど(笑)

3.困りものの超・自分中心タイプ

彼らは、すごく都合良く「上司である自分の仕事はチームの仕事」と考えています。だから自分の仕事の進捗しか見ないで、急に部下に自分の仕事を振ったりもするし、振っておいて自分のパートが終われば、部下たちを労いもせずにさっさと帰ってしまう。下手したら残業させているという自覚さえない人や、たっぷり残業して作った資料に「やり直し!」などと言ってのける輩までいます。

でも、こういうタイプの上司がまとめる仕事はクオリティーも、部下たちのモチベーションも低いのが常です。一番腹の立つタイプだと思いますが、腹を立てているエネルギーがもったいない! 部下たちの仕事プロセスをろくに理解もしていないのだから、評価だって育成だってできないし、作った資料のプレゼンだってまともにできないに違いありません。上司自身の評価はきっと低いはず。早晩いなくなります!

4.「上司にしかできない仕事」をしているタイプ

そして、少数だけれど、部下が残業している間に、実は「上司にしかできない仕事をしているタイプ」がいます。私が新米上司のころ、当時の偉い人から、「上司というのは、スケジュールをオープンにして部下に予定を入れさせてはいけない」と諭されたことがあります。部下の仕事に付き合うのではなく、上司にしかできない上司の仕事をしろと。例えば、担当業界の最新情報を入手するために交流会に参加したり、マネジメント力を磨くために学習する時間にしたり、上席者や他部署との人脈を作ったり、そういうことは「上司ならではの仕事」なワケです。

部下たちに高い仕事の視点を与えるべきだ、部下の仕事に付き合うだけでは存在価値がない、という教えは、極端だけれど含蓄があって素晴らしいのだけれど、それを実践できている上司は稀でしょうねえ。私自身も教えは胸にあっても、全く実践できませんでした。でもまあ、部下たちが残業している間に、「上司ならでは」の仕事をしている立派な上司なら、「私たちが仕事しているのに、もう帰るの?」とは思われないのかもしれませんけど(笑)。しかし、志を持って、部下の残業に付き合わない上司もいるようです。

他にも、多くの「部下に残業させといて帰宅上司」のタイプは存在しますよね。それぞれに行動ポリシーや傾向はあり、その人のキャラクターによるところも大きいのかもしれませんが、「なぜ早く帰るのか?」が上司の都合であって、部下を思ってのことではないことが伝わってくるからこそ、何だか腹立たしいのではないでしょうか。「自分への愛」が「部下への愛」より強い上司は、やっぱり部下から見透かされてしまうんだよなあと改めて感じてしまいました。でもねえ、上司たるもの、どんなタイプ、キャラであれ、残業する部下に労いの言葉くらいかけて帰宅すべきだと私も思いますが。

すっかり長文になってしまいました。次回は「残業つながり」で、「帰ろうとすると仕事を振ってくる上司」について、考えてみたいと思っています!

堂園稚子

【著書紹介】

『「元・リクルート最強の母」の仕事も家庭も100%の働き方』(堂薗 稚子/1,404 円/KADOKAWA/角川書店)
「仕事も子育ても両立したい! 」と思っても現実はなかなか難しいもの。それにも負けず、子どもを育てながらてカンパニーオフィサーになった著者の働き方を紹介 >>書籍詳細