俳優・宮崎秋人が語る演劇の魅力「あんなに感情をグチャグチャにされたのは生まれて初めて」

NO残業デーは劇場で“非日常”な体験を。
ふらり~女の夕べ

プレミアムフライデーに、NO残業デー。働き方改革が進み、プライベートタイムは増えたけど、一体その時間に何をする……? 会社を追われ、行き場をなくし街を彷徨うふらり~女たちへ、演劇コンシェルジュ横川良明がいま旬の演目をご紹介します。奥深き、演劇の世界に一歩足を踏み入れてみませんか?

横川良明

演劇ライター・演劇コンシェルジュ 横川良明
1983年生まれ。関西大学社会学部卒業。ダメ営業マンを経て、2011年、フリーライターに転身。取材対象は上場企業の会長からごく普通の会社員、小劇場の俳優にYouTuberまで多種多彩。年間観劇数はおよそ120本。『ゲキオシ!』編集長


新しい趣味を探したい。だけど、これと言ってやりたいものが見つからない。そんなふらり〜女のみなさんにもっと演劇の面白さを知っていただくために、現在舞台を中心に活躍中の若手俳優にクローズアップ。彼らの言葉を通じて、観劇のきっかけをご提案します。

第1回は、俳優の宮崎秋人さん。最新出演作である少年社中×東映 舞台プロジェクト『ピカレスク◆セブン』とともに演劇の魅力をたっぷりと語ってもらいました。

※記事の後半に、宮崎さんのサイン入りチェキプレゼント企画があります。最後までお楽しみに!

宮崎秋人

宮崎 秋人(みやざき・しゅうと)
1990年9月3日生まれ。東京都出身。12年、ミュージカル『薄桜鬼』の永倉新八役で脚光を浴び、13年、舞台『弱虫ペダル』の新開隼人役で人気を確立。ドラマ・舞台『男水!』や舞台『青の祓魔師』など出演作多数。2018年1月27日より映画『ちょっとまて野球部!』が公開予定。今後の出演作に舞台『おたまじゃくし』、舞台『PHOTOTGRAPH51』がある

よく分からないけど鳥肌が立つ。生だから感じられるエネルギーを体験してほしい

ヤンチャな少年の面影を残した愛くるしいフェイスに、近年は大人の男の色気も加わり、ますます魅力を増してきた宮崎秋人さん。今や演劇界に欠かすことのできない俳優の一人へと成長したが、この世界に入るまでは全く演劇とは無縁の生活を送ってきたという。だが、仕事を通じて観劇の機会に恵まれ、そこで人生観を覆されるほどの衝撃を受けた。

「それまで映画やドラマを観て泣いたことってなかったんですよ。けど、舞台を観たときに、なぜか号泣して。かと思ったら、その後、いきなり笑わされたり。あんなに感情をグチャグチャにされたのは生まれて初めてのことでした」

宮崎さんの心を揺さぶり震わせたもの。それは、生の人間が持つエネルギーの強さだ。

「映画やテレビは、スクリーンだったりモニターだったり、何かしら隔てるものがある。でも、舞台にはそれがない。目の前の役者のエネルギーが直接肌に届くんです。その臨場感は、やっぱり舞台ならでは。舞台って、よっぽど詳しい人でない限り、出てくる役者はほとんど知らない人ばかりですよね。でもそのおかげで、かえって変な先入観を持たずに作品の世界に入っていける。幕が開くまで、どんなあらすじか分からないものも多いけど、その分、予想もつかない世界へ連れて行ってくれる。そういうところも、舞台の面白さだなと思います」

宮崎秋人

そんな演劇の醍醐味は、今回の『ピカレスク◆セブン』でもたっぷり楽しめる。本作は、劇団少年社中の20周年記念第一弾公演。宮崎さんは、少年社中について「いちファンです」と愛情を語る。

「何か嫌なことがあったり、疲れていて集中して観るのが難しいときでも、少年社中の舞台は気づいたらいつの間にか作品の世界に惹きこまれている。脚本・演出の毛利(亘宏)さんは、音と光を使った演出がすごく得意な方。音が転調した瞬間に、物語も一気にうねりを上げたりして。その気持ち良さは、やっぱり後で音をはめる映像にはない快感だと思います。前作の『モマの火星探検記』を観たときも途中から何の涙かよくわからないけど泣けてきて、ぞくぞく鳥肌が立ってきた。展開もスピーディーだから全然先読みできないし、かと言って置いていかれることもない。すごくエンターテイメント色の強い作品を毎回届けてくれる劇団です」

特に今回は刀を使った殺陣が大きな見どころとなる。

「舞台の場合、たとえ刀で斬っても映像のように血は出ません。なのに、ちゃんとお客さんには血が出ているように見えるし、首が飛んでいったようにも見える。それが、舞台の殺陣のすごいところ。もちろん刀はあるけれど、役者が体ひとつで本気の斬り合いを表現します。ぜひその迫力と面白さを一度体験してほしいです」

自分は天才じゃない。そう分かっていたから、ここまでやってこられた

『ピカレスク◆セブン』の舞台は、三代将軍トクガワイエミツの治世。泰平の世に、冥府から黄泉返りを果たしたトクガワイエヤスが日ノ本を我がものにしようと画策。世界は混乱と恐怖の底へ突き落とされる。そのイエヤスを倒すために、孫のイエミツは異世界に助けを求める。しかし、召喚されたのは、正義のヒーローではなく、7人の極悪人だった……。そんな悪VS悪の一筋縄ではいかないピカレスクロマンで、宮崎さんが演じるのは三代将軍・トクガワイエミツだ。

「この役は、毛利さんが僕のために当て書きしてくれたキャラクター。初めて台本を読んだときから、『毛利さんは宮崎秋人のここが好きなんだな』『宮崎秋人のこういう面を出してほしいんだな』というものをひしひしと感じました」

そう嬉しそうにはにかむ。この人なつっこい笑顔に象徴される通り、これまで宮崎さんは元気で明るい“陽”の役どころを振られることが多かった。

「イエミツは、パッと見は天真爛漫で元気な男。これだけ振り切った“陽”の役どころをいただくのは久しぶり。宮崎秋人の真骨頂を見せたいな、という想いはあります」

宮崎秋人

一方で、このイエミツこそが、イエヤスを現世に黄泉返らせた張本人。将軍の重圧にさらされ、泰平の世を守る自信を失ったあまり、冥府のイエヤスに助けを求めたことが、この騒乱の引き金となった。

「自信がないのは僕も同じ。そういう僕のネガティブな一面を毛利さんは知っているからこそ、この役を僕に当ててくれたんだと思います」

明るい口調とは裏腹に、ぽつりとこぼれた「自信がない」という言葉。現在、宮崎さんはD-BOYSという若手俳優集団に所属しているが、決して最初からその道が開かれていたわけではない。オーディションには落選。1年間、養成所へ通い、そこからコツコツとチャンスをものにし、初舞台から4年以上を経て、ようやくD-BOYSへの加入を果たした。それまで勉強もスポーツも特に苦労はしたことがなかった宮崎さんが、初めて「上手くできない」と感じたのが、お芝居だった。

宮崎秋人

「そういう意味でも僕は挫折からのスタート。だから今でも自分は全然できていないという想いが根本にあって。何をやっても満足できない。周りからはストイックだねと言ってもらえることもあるけど、単に自信がないだけ。自分は天才じゃないんだって言い聞かせているし、そういう気持ちが仕事への原動力になっています」

自分は天才じゃない。それは才能勝負の役者業において、自分にくだすにはあまりに残酷な通告だ。だが、その自信のなさが、俳優・宮崎秋人の道のりをつくってきた。

「稽古場に行ったら、『この人は天才だな』と思うような人がたくさんいる。だからこそ、そういう人たちと同じ戦い方をしていちゃいけないなって。常に周りを見て、この人がこういうふうにやるなら自分は違う感じでやってみようって、あれこれ考えています。誰も狙わないような隙間を縫っていくのが僕のやり方。地味かもしれないけど、でもちゃんとそこを埋めることができれば、才能では勝てないような人たちとも並べるはずだって信じています。今回もそれは同じ。天真爛漫なキャラクターは得意だけど、それだけじゃ戦えない。このすごい役者さんたちの中で自分が埋められる場所をちゃんと見つけていければ」

仕事が大好きな人ほど、仕事が一番だって自分に言い聞かせなくてもいい

現在、宮崎さんは27歳。Woman type女子とは同世代だ。一生懸命仕事に打ちこむ女性たちに対して、どんなイメージを持っているだろうか。

「素敵ですよね。お仕事を頑張っている人は、男女関係なく大好きです。どんな職業であれ、ちゃんとプロとしての自覚を持って突きつめている人は、それだけですごく素敵だなと思います」

だが、同世代だからこそ心配になることもある。

「働いていたら息がつまる瞬間って絶対ある。だから、ちゃんと息抜けてるかなって、いらぬ心配かもしれないですけど、そこはちょっとだけ心配になります」

宮崎秋人

そう言って、働く女性たちに向けて、こんなメッセージを寄せてくれた。

「僕も仕事が大好きだし、当たり前のように仕事が一番だって思うタイプ。だからこそ、自分で自分に『仕事が一番なんだ』って敢えて言い聞かせないようにしています。そうしないと逃げ場がなくなっちゃうから。仕事が一番大切な人ほど、仕事が一番だって言い聞かせないようにしてほしいなって」

真面目な人ほど、ついつい自分を追いこみがちだ。この仕事は全部私がやらなくちゃ。他の人に迷惑はかけられない。そう自分に暗示をかけ、知らぬ間に退路を断って、気づけば袋小路に取り残されてしまう。

「根が頑張り屋さんの人なら、わざわざ自分で自分に言い聞かせなくたって、ちゃんと頑張っていると思います。だから、そんなに厳しい言葉を自分の耳に聞かせなくても大丈夫。仕事が大事だからこそ、人生は仕事だけじゃないんだって思ってほしいし、立ち止まりたいときは我慢せず立ち止まってほしい。逃げたっていいし、マイペースでいい。何よりも自分をいちばん大切にしてほしいなって思います」

宮崎秋人

そう微笑んで「その息抜きの場所が舞台だったらいいなって思います、演劇人としては」と茶目っ気たっぷりに付け加えた。そんなユーモアも、彼らしい。頑張る人にこそ、ひと息つける場所を。そんな誰かのために、宮崎秋人は舞台の上から元気と感動を届け続けている。

取材・文/横川良明 撮影/山田勉


<公演詳細>
少年社中×東映 舞台プロジェクト『ピカレスク◆セブン』

宮崎秋人

■あらすじ
時は三代将軍、トクガワイエミツの治世。
長き戦乱の世は終わりを告げ、トクガワ幕府の元に天下の泰平は永劫に続くかに思われた。
だが…。世を再び乱世に戻さんとする者が現われる。

『東照大権現・トクガワイエヤス』
かつてトクガワ幕府を開き、泰平の世の礎を築き上げた、その人であった。

冥府より黄泉返りしトクガワイエヤスは『神』を名乗り、5人の亡者と共に瞬く間に日ノ本を手中に収める。
民は嘆き悲しみ、日ノ本は闇に包まれる…。
さらに、その魔の手は世界にまで伸びようとしていた。

だが、その中にあってイエヤスに反旗を翻さんとする者達がいた。
人は彼らをこう呼んだ。
『ピカレスク◆セブン』と。

今世紀最大のピカレスクロマンが幕を開ける。

■脚本・演出
毛利亘宏


■出演

井俣太良、大竹えり、岩田有民、堀池直毅、加藤良子、廿浦裕介、
長谷川太郎、杉山未央、山川ありそ、内山智絵、竹内尚文、川本裕之

鈴木勝吾、宮崎秋人 / 椎名鯛造、佃井皆美、相馬圭祐、丸山敦史
唐橋充、松本寛也、細貝圭 / 大高洋夫

■日程・会場
2018年1月6日(土)~15日(月)
東京都 サンシャイン劇場

2018年1月20日(土)・21日(日)
大阪府 サンケイホールブリーゼ

2018年1月27日(土)
愛知県 岡崎市民会館 あおいホール

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プレゼント情報

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宮崎秋人

■応募方法
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