俳優・松田凌が演劇を愛するのは「本気で『遊んでいる』大人たちがいるから」【ONLY SILVER FISH】

NO残業デーは劇場で“非日常”な体験を。
ふらり~女の夕べ

プレミアムフライデーに、NO残業デー。働き方改革が進み、プライベートタイムは増えたけど、一体その時間に何をする……? 会社を追われ、行き場をなくし街を彷徨うふらり~女たちへ、演劇コンシェルジュ横川良明がいま旬の演目をご紹介します。奥深き、演劇の世界に一歩足を踏み入れてみませんか?

横川良明

演劇ライター・演劇コンシェルジュ 横川良明
1983年生まれ。関西大学社会学部卒業。ダメ営業マンを経て、2011年、フリーライターに転身。取材対象は上場企業の会長からごく普通の会社員、小劇場の俳優にYouTuberまで多種多彩。年間観劇数はおよそ120本。『ゲキオシ!』編集長


新しい趣味を探したい。だけど、これと言ってやりたいものが見つからない。そんなふらり〜女のみなさんにもっと演劇の面白さを知っていただくために、現在舞台を中心に活躍中の若手俳優にクローズアップ。彼らの言葉を通じて、観劇のきっかけをご提案します。

今回ご登場いただくのは、俳優の松田凌さん。下北沢にある小劇場 ザ・スズナリで上演された舞台を観て、俳優になる決意を固めた松田さん。その胸に秘めた一途な演劇愛を語ってもらいました。

※記事の後半に、松田さんのサイン入りチェキプレゼント企画があります。最後までお楽しみに!

松田凌

松田 凌(まつだ・りょう)
1991年9月13日生まれ。兵庫県出身。12年、ミュージカル『薄桜鬼』にて初舞台初主演を飾ると、その後も数々の舞台に出演。近年の主な出演作にドラマ・舞台『男水!』、舞台『東京喰種トーキョーグール』、舞台『人間風車』など。映像作品にドラマ『仮面ライダー鎧武/ガイム』、映画『ライチ☆光クラブ』などがある

年をとるごとに忘れかけていた感動を、舞台は思い出させてくれる

松田さんと演劇の出会いは、小学生の頃。演劇好きの叔母に連れられ、よく劇場に足を運んだ。劇団☆新感線や大人計画。気鋭の演劇人たちが目の前で汗水流しながら芝居をする姿に、少年の心はすっかり魅入られていた。

「あの頃の僕はまだ学生で、親を含め周りの大人たちに対して、どこか『大人』っていう仕切りをしていたんですね。家族のため、仕事のため、何かしら責任を負って地に足をつけて生きていくのが『大人』なんだって。そういう『大人』像に対して、若い頃の僕はもっと自由に生きればいいのにってどこか反発心を抱いていました」

そんなナイーブで、どこか狭視眼的だった10代の心を強く揺さぶったのが、演劇だった。

「舞台に立っている人たちを観たら、最高に楽しそうだなって思ったんですよ。もちろん僕たちを楽しませるという仕事を全うされていらっしゃるんですけど、どこか『遊んでいる』ような感じがして。汗を流して、涙を流して、自分のすべてを懸けて遊んでいる。その輝きが、反骨心でいっぱいだったあの頃の僕の心情にマッチしたというか。演劇には、そういう人の心を揺さぶる眩しさがあると思うんです」

松田凌

いい年をした大人たちが、大声を出して、顔をメチャクチャに歪ませて、感情を爆発させる。そんな光景を間近で目にする機会なんて、確かに劇場以外ではそう思いつかない。そして、その光景は10代の多感な少年だけでなく、働く女性たちにも新鮮な感動を届けてくれるはずだと松田さんは信じている。

「まさしく僕がそうなんですけど、年々新鮮な感動がなくなっているような気がするんです。それこそ昔は夏休みが来るだけで心底ワクワクした。でも今はクリスマスもお正月も何とも思わない。自分の誕生日でさえ『あ、今日か』って感覚に陥っちゃう。だけど、できれば何かに感動できる心だけはいつまでも忘れたくはなくて。演劇を観ると、そういう新鮮な感動がすっと甦ってくるんですよね」

昨日と今日が何も変わらない。そんなふうに毎日が平板に見えてしまったら、思い切って劇場に訪れてほしい。きっと劇場を出る頃には、今まで色褪せて見えていた景色が、もっと鮮やかに映るはずだ。

「舞台の中の出来事はあくまでフィクションなのに、どこか自分のリアルな世界と通じる部分があるんです。それが演劇の力だし、しかもそれが映画やドラマのように決して後には残らないところが面白い。同じものは二度と観られないという一回限りの儚さが、演劇を特別なものにしているんだと思います」

はたして何が真実か。12人の登場人物がつくり出す緊迫感を楽しんで

現在、松田さんは最新主演舞台『ONLY SILVER FISH』の稽古真っ最中。あらすじだけ読むと、古い洋館を舞台にした洋風ミステリーだが、はたしてその見どころは。

「この作品は会話劇でありミステリーなんですけど、その根本にあるのは状況であり空気感だと思うんですね。観てくださる方には、まず12人の登場人物がつくり出す状況や空気感を楽しんでもらいたいです。台詞のひとつひとつに、役者の表情のひとつひとつにミステリーが隠されている。もちろん台本に描かれていることがすべてなんですけど、その行間を読み取って台本に描かれていないものまで表現するのが役者です。役者たちが仕掛けるお芝居の中には、物語のヒントとなる伏線もあればミスリードもある。きっと観ているうちに、何が真実で何が嘘かわからなくなってくると思います。そういう緊迫感を楽しんでもらえたら」

松田凌

手練れの俳優とスタッフたちによる緻密な仕掛け合いが、物語の面白さを増幅させる。だからこそ、二度三度観る楽しみを松田さんは提案する。

「もちろん一回でも十分にお届けできるように頑張りますし、二回観てほしいなんて贅沢な話ですけど、きっと二回観たら違う答え合わせができるのが、この作品の面白さ。こういうふうに物語が進んでたんだなって。もしかしたらあそこで言っていたのはこういうことだったのかもしれないって想像力を働かせながら観ていただくのも面白いと思いますよ」

また、本作は映画版との連動企画だ。18年春には、同じ設定、同じ出演者で別のストーリーが展開する映画版も上映される。その撮影も同時進行中だ。

「監督が『わけわからないものをつくろうぜ』とおっしゃっていて、最初はそれってどうなんだろうと思いながら聞いていたんですけど(笑)、撮影が進むにつれて、監督の言っていたことの意味が少しずつわかりはじめてきました。きっとこの映画は今まで誰も観たことがないような作品になる。決まった答えの出る映画ではないと思います。みなさんそれぞれの解釈が、答えでいいと思う。すごく頭は使うと思いますが、ぜひ観ていただいて、みなさんそれぞれの答えに行き着いてほしいですね」

何かを決断するときは、敢えて険しい道を選ぶこと。そして選んだ自分を褒めてあげること

初舞台でいきなりの主演デビューを果たして以来、松田さんは数多くの話題作で重要な役を任されてきた。

松田凌

「大袈裟な言い方になって恥ずかしいですけど、僕にとって働くことは生きること。楽しいことはいっぱいありますけど、お芝居がないと生きている意味がない。僕にはお芝居しかないし、それ以外できることなんて何もないので、ちゃんと自分が選んだお芝居という道で突出していかないとっていう想いは常にあります」

やりたいことを仕事にできた人は幸せだ。だけど、やりたいことだからと言って必ずしも常に幸せだとは限らない。やりたいことだからこそ、苦しむこともたくさんある。

「気持ちが折れることはいっぱいあります(笑)。僕は仕事での失敗や挫折がわりとプライベートに影響しちゃうタイプで。23のときに、すごく大きな役をいただいたんですけど、そのプレッシャーに押し潰されて、全部放り投げてしまいたいとさえ思ったことがありました」

そんなとき、松田さんを支えたのが、「一番の理解者」と信頼を寄せるマネージャーからの言葉だった。

「自分の悩んでいることとか全部相談したんですよ。そしたら、『そういうふうに考えるのは間違ってないから』って肯定してくれて。おかげですごく気持ちが楽になった。今もプレッシャーはあります。でも、プレッシャーに苦しむ自分をもうダメだとは思わない。上手に気持ちを切り替えられる人を見たら羨ましくはなるけど、自分はそうなれないのはわかっているので。悩む自分を認めてあげようって思えるようにはなりましたね」

松田凌

現在26歳。同世代の社会人もちょうど責任ある仕事や大役を任されはじめる時期だ。大きな決断を下さなければいけない場面も徐々に増えてくる。悩み多き仕事人生をそれでも前に進んでいくためには、何が必要だろうか。

「二択あったとき、僕も含めて人って安易な道を選びがち。でも、どっちを選んだらいいか悩むときほど、僕は自分で自分に言い聞かせるんです、険しい道を選ぼうって」

敢えて険しい道を選ぶ。その信念の礎にあるのは、役者人生の出発地点だ。

「この道に進もうと決めたときも、周囲はみんな大反対でした。そんな中でみんなが反対する道を選んだから今の僕がここにいて。僕は今の人生にほとんど後悔がないし、こんないい人生ないなってくらい楽しめている。それは間違いなく、あのとき安易な道に流されるんじゃなく、自分で険しい道を選べたから。だから悩んだときほど険しい道を選ぼうって決めています」

見通しの立った道を歩いてもつまらない。たった一度きりの人生、どうせ進むなら、まるで先のわからない獣道を。つまずいても転んでもいい。そのでたらめな足跡が、いつかきっと自分だけの模様になる。

「あとは険しい道を選んだら、そんな自分をとことん褒めてあげること。ただでさえキツい道ですから、自分を否定してばかりじゃ心が持たない。頑張ってるね、よくやったねって、日々少しずつでいいから自分で自分のことを認めてあげる。甘やかしすぎるのは良くないですけど、いちばん大切にしてあげないといけないのは自分自身だから。自分を可愛がってあげることも大事じゃないかなと思います」

松田凌

いつも10分かかる作業が5分でできた。会議で自分から手を挙げてみた。どんな小さなことでもいい。人から見たら取るに足らないことでも構わない。頑張った自分に、自分で表彰状を贈ってあげよう。悩める松田さんもそうやって自分と向き合いながら険しき道を歩き続けている。

取材・文/横川良明 撮影/岩田えり


<公演詳細>
舞台『ONLY SILVER FISH』

松田凌

■あらすじ
「ねえ…あなたならどうする?一つだけ振り返る事が
できるとしたら…。たった一度だけ…大切な過去を…。」

舞台は古い洋館から始まる。屋敷に置かれた大きな水槽の中にはオンリーシルバーフィッシュと呼ばれる一匹の
寂しい魚がいて、その魚の本当の名前を知る事ができれば、過去を振り返る事ができるという伝説がある。
そんな洋館で和やかに始まるはずのパーティ会場に届く、一通の不可解な招待状。
『幸せのサインを始めた瞬間、一人ずついなくなる。アガサが書いたであろう物語のように・・・。』
偶然に、しかし必然に集まった11人。そして現れる、謎の人物。
一人・・・また一人と死んでいき・・・物語が、現実を巻き込んでゆく───。

■脚本・演出
西田大輔

■出演
松田凌、皆本麻帆、玉城裕規/高柳明音(SKE48)、伊藤裕一、山口大地、小槙まこ、双松桃子/菊地美香、辻本耕志、中村誠治郎、川本成

■日程
2018年1月6日(土)~17日(水)

■会場
紀伊國屋ホール ※各線「新宿駅」東口より徒歩5分/紀伊國屋書店新宿本店4階

>>公式ページへ

プレゼント情報

抽選で2名の方に松田凌さんのサイン入りチェキをプレゼントします。

松田凌

■応募方法
[1]Woman typeのTwitter公式アカウント(@womantype)をフォローしてください
[2] 「#松田凌さんチェキプレゼント」のハッシュタグをつけて本記事をシェアしてください。

記事の感想を一緒に寄せていただけると嬉しいです!

■応募締め切り
2018年1月15日(月)12:00まで

■当選発表方法
応募受付終了後、厳正なる抽選の上、当選者の方にはWoman type公式アカウントよりダイレクトメッセージをお送りいたします。送付後72時間以内にお返事がない場合は無効とさせていただきます。あらかじめご了承ください。

■応募に関する注意事項

・当選賞品の転売は禁止させていただいております
・当選結果の発表は、ダイレクトメッセージにお送りします。応募期間中にフォローを取り消された場合は、応募が無効となります
・落選者へのご連絡はございません。ご了承ください
・プレゼントの発送は、日本国内にお住まいの方のみとさせていただきます
・プレゼントキャンペーンは予告なく変更・中止することがあります。あらかじめご了承ください
・お客さまからお預かりした個人情報は、当キャンペーンの当選発表、プレゼントの発送のために利用いたします。なお、個人情報を当該業務の委託に必要な委託先に提供する場合や関係法令により求められた場合を除き、お客さまの事前の承諾なく第三者に提供することはありません。上記をご承諾くださる方のみご応募ください