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FEB/2018

「自分がいなきゃ皆が困る」働き方は即やめよ【メルカリ小泉文明×フローレンス駒崎弘樹】育休を取った男性経営者2人が語る“働き方の新常識”

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働く女性の結婚・出産・育児に関する不安の解消と、その根本にある社会課題の認知・解決をテーマとしたチャリティーイベント『the Gift』が、認定NPO法人フローレンスとFASHION CHARITY PROJECT主催の元、2018年1月27日に開催された。

イベントで行われたトークセッション#1の登壇者は、フローレンス代表理事の駒崎弘樹さんと株式会社メルカリ取締役社長兼COOの小泉文明さん。経営者であり、育休取得経験者である2人が語る、これからの時代の働き方や個人が持つべき意識とは。

フローレンス メルカリ
写真左
認定NPO法人フローレンス 代表理事
駒崎弘樹さん

1979年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒。2004年NPO法人フローレンスを設立し、日本初の「共済型・訪問型」の病児保育サービスを首都圏で開始。現在は厚生労働省『イクメンプロジェクト』推進委員会座長、内閣府『子ども・子育て会議』委員、東京都『子供・子育て会議』委員などを務める

写真右
株式会社メルカリ 取締役社長兼COO
小泉文明さん

1980年生まれ。早稲田大学商学部卒。2003年大和証券SMBC(現・大和証券)入社。投資銀行本部にてインターネット企業の株式上場支援を担当した後、07年ミクシィ入社。取締役執行役員CFOに就任しコーポレート全体を統括。退任後はベンチャー企業を数社支援し、13年12月メルカリに入社。14年同社取締役に就任。17年4月取締役社長兼COOに就任

社長がいなくても社員は誰も困らなかった

フローレンス・駒崎弘樹さん(以下、駒崎):小泉さんが育休を取ったのはどういうきっかけなんですか?

メルカリ・小泉文明さん(以下、小泉):僕らの会社は男性社員の9割以上が育休を取得しているんですよ。だから基本的に取得するものという感覚でした。妻は僕が育休を取ることを『Yahoo!ニュース』で知ったらしくて、「本当に取るの?」ってびっくりしていましたけど(笑)。メルカリでは基本的に人事情報以外は全部オープンなので、育休中でも会社で起きていることは大体把握できましたし、長期の出張に行っているような感じでしたね。

駒崎:
日本の男性の育休取得率は3%ですから、メルカリの90%という実績はすごいですね。小泉さんはIT業界のオピニオンリーダーで影響力が大きい方だと思いますが、育休を取ったことでどんな影響がありましたか?

メルカリ 小泉文明
小泉:僕と同時に子会社の社長も育休を取得したので、まずは「ネット業界は取るのが普通」みたいな空気になってくると良いなと思っています。少しずつ男性の育休取得者が増えてきているので、ベンチャーから「それが今っぽいし、常識だよね」というルールをつくることができれば、大企業の方も追従しやすくなる。変わりやすい所から変えていくことが大事だと思います。

駒崎:休んでみてどうでした?

小泉:本当にいいことしかないですね。一番は権限委譲。育休取得までの3~4カ月の間に自分がいなくても意思決定ができる方向に持っていって、今はマネジャーでほぼ全ての意思決定が回るようになりました。

駒崎:僕も育休を2カ月取った時、最初は「自分がいなくなったら皆が困るだろう」と思っていたんですよ。でもいざ休んでみたら誰も困ってなくて(笑)。それまでは「自分の意思決定が会社を左右している」と思っていたけど、実はそうでもなかった。それで社員を信じられるようになったし、任せられるならどんどん任せちゃおうってことで権限委譲が進みました。自分の働き方を見直す意味ですごく良かったから、男性の方には本当に育休取得をオススメしたいですよね。

小泉:僕自身の働き方で振り返っても、時間をどうつくるかということに関して感度が高くなりました。産休育休明けの女性社員でマネジャーになったメンバーもいます。彼女たちをマネジャーにした理由は、復帰後の時間に対するコミットの仕方。パフォーマンスが圧倒的に上がっているんですよ。

「副業先の会社に転職してしまうのは自社に魅力がないからだ」
フローレンスとメルカリが副業推進で得たもの

駒崎:個人が会社に属するだけではなく、多様な働き方を選択する時代への過渡期が今だと思います。副業もその一つですよね。

小泉:僕らの会社は創業当時から副業推奨なんですよ。働き方改革など仰々しいものではなく、副業で表現の幅を広げたり、いろいろな会社やビジネスに顔を出したりっていうのは、その人の価値が上がること。より自らの価値を上げるために専門分野をもっと学ぼうと思うし、自分で自分自身を見直してくれるので、会社にとってプラスなんですよね。同時にメディアやイベントにもどんどん出るように推奨していて、社員が対外的に出ることを広報が支援しています。外部で話をすることで、本人の仕事に対するプライドもモチベーションも上がる。個人が自分のキャリアを考える上で、すごく価値があると思うんですよ。

フローレンス 駒崎

駒崎:フローレンスも副業OKにしたら、サイボウズの人事の方が「副業したい」って言ってくれて。サイボウズで得たノウハウをうちに還元してくれて、うちで得たことをサイボウズに還元する。競合しているわけではないですし、お互いうれしいですよね。あとは社員が動画作成の副業をするうちに腕が上がって、会社でも医療ケア児の啓発ムービーを作ってくれたんですよ。それがSNSで拡散されて100万PVくらいいきました。社員のやりたいことや才能に気づける機会にもなって、すごくよかった。

小泉:副業先の会社に転職してしまうことを心配する人もいますが、それって自社に魅力がないからだと思うんですよね。人をどうエンゲージメント(個人と組織が共に成長する関係を構築すること)させるのかが経営者としての腕の見せ所じゃないですか。「どうすれば社員が自社で働きながら彼らの夢をかなえられるのか」を設計していかなければいけないですよね。

駒崎:会社が従業員をパーツではなく、“可能性のある個人”として見て、どうやって一緒に成長していくのかを本気で考えることが重要ですよね。それこそがマネジャーや経営者の務めだと思っています。

働き方はもっと自由になっていく。これからの個人が意識すべきは“すっぴんの自分の価値”

駒崎:メルカリのような会社が増えていけば日本の生産性は上がっていくと思うんですが、どうやったら良い働き方は増やしていけるんですかね?

小泉:インターネットによって個人と会社、社会の関係が対等になってきて、イニシアティブを個人が取れるようになってきています。型にはまった働き方も解き放たれてくると思いますね。ただ自由って怖くて、実は決めてもらった方が楽だったりもするんですよ。その時に大事なのは、個人が「やりたいこと」を見つめ直すこと。そもそもどういう働き方がいいのか、考えたことのない人は多いと思うんですよね。

駒崎:9時出社で18時に帰っていいという規定の中で働く。そこに対して考えるプロセスがなかったのがこれまででした。

フローレンス メルカリ

小泉:例えば自分の値段を自分で決められることになったとき、明確なロジックや答えを持っている人はあまりいないんですよ。転職活動でも前職の年収を元になんとなく提示することが多い。でも“すっぴんの自分の価値”をしっかり考えていかないと、個人がイニシアティブを持てる状況になっても成り立たちません。

駒崎:会社が個人に対して上から指示する関係から、会社と個人が対等なパートナーシップを組んでいく関係に変わる。まさに保育業界は未曾有の人手不足で、お互いが良い関係を作っていかないと離職率が上がって成り立たなくなります。おそらくどの業界でも同じで、人手不足の状況では個人の価値や希少性が高くなるから、個人の意思を尊重した働き方は実現しやすくなりますよね。

小泉:「個人が強くなる」というのが僕の人生のテーマで、個人が情報を発信できなかった時代に『mixi』というSNS を作り情報を誰でも発信出来るようにし、買うだけだった個人に『メルカリ』で売る場を作って、それぞれ個人をエンパワーメントするサービスを経営してきました。働き方も含めて、その人がその人らしく生きてほしいんですよ。仕事と家庭もそうですが、いろいろなものが共存していく中で、その人の思いやWillを実現できる社会を築いていくために、僕やメルカリでできることをやっていきたいですね。

駒崎:僕は1億2000万人いたら、1億2000万通りの働き方を選択できる社会を作っていきたいと思っています。日本は子育てがしづらい社会になってしまっていますが、子育てと何かを両立できて、子育てによって何かを諦めなくてもいい社会をつくっていきたい。ぜひ共闘して、個人が輝ける社会を作っていきましょう。

取材・文・撮影/天野夏海

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