09 MAY/2018

【日本溺愛イタリア人】ラ・ピーナが語るTOKYO女子の魅力と不思議――「男性と競い合っても意味がない。女性は好奇心と自分らしさを大事に働いて」

近年、日本を訪れる外国人数はうなぎのぼり。さまざまな国のたくさんの人が、SNSやYouTubeで日本の魅力を発信してくれている。イタリア人女性のラ・ピーナさんもその一人。イタリアで知らぬ人はいない、国民的ラジオDJ/ミュージシャンだ。

ステレオタイプに縛られない視点で“TOKYO”の魅力を綴った彼女の著書『I LOVE TOKYO』は、イタリアで5万部以上を売り上げ、ノンフィクション部門9週連続第1位を記録する大ヒットに。あふれんばかりの愛を込めて紹介されたTOKYOのリアルは、私たち日本人の目にも魅惑的に映るほどだ。そんなラ・ピーナさんの目に、東京の女性はどのように映っているのだろうか。

ラピーナ

ラ・ピーナさん
1970年生まれ、フィレンツェ出身。イタリアのメジャーラジオ局『Radio Deejay』でレギュラー番組を持つ人気DJでミュージシャン。イタリアのラップ界を牽引する女性ラッパーのひとりでありつつ、キャッチーな発言とキュートなキャラクターで人気を集め、ラジオをはじめ地上波やCS局の司会をこなす。イタリアでは知らぬ人はいない国民的存在。東京の魅力を綴った著書『I LOVE TOKYO』はイタリアで5万部以上を売り上げ、ノンフィクション部門9週連続第1位を記録する大ヒットに
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この40年くらいで一番変わったのは、日本の女性たちじゃないかしら?

イタリアでは「日本人女性は美しい」ってイメージが強い。私自身も、日本の女性は、とってもエレガントだなって感じます。動き方がとても繊細だし、メイクも丁寧にしているし、お肌や髪の毛はすごくキレイ。ファッションもメイクも、イタリア人女性はやり過ぎちゃうんですけど、日本人女性は自分に似合うスタイルをよく知っていると思います。

ただ、靴のサイズが合っていない人が多いことはすごく不思議! ワンサイズ大きい靴を履いている日本人女性をよく街で見かけるんですよ。これまでに数えきれないくらい日本に来ていますが、彼女たちがジャストサイズの靴を履かない理由は、未だにミステリーね(笑)

ラピーナ

私が初めて日本に来たのは、1980年代の初めの頃でした。それ以来、毎年のように日本に遊びに来ているんですけど、この40年くらいで一番変わったのは、女性たちではないかしら。以前は控え目で目立たない印象だったけど、今はイキイキとした表情で街を歩く女性たちによく目を奪われます。特に東京は、女性がとてもパワフルですね。むしろ、男性の方がシャイなんじゃないかしら? あくまで個人的な感想ですけどね。

人生で一番大切なもの。それは、信頼できる「友達」

イタリアの女性も日本の女性も、中身はそんなに変わらないと思います。違いがあるとしたら、友達との関係性かしら。イタリアでは友達がすごく大切で、恋人よりも、仕事よりも、一番大事って人が女性には特に多いんですよ。同僚や恋人は関係が切れてしまうこともあるけれど、友達はずっと友達でしょう? 信頼できて、ずっと付き合っていける友達がいれば、人生に怖いことは何もありません。「頼れる友達がいれば、何事も絶対にうまくいく」っていうのがイタリア人の考え。

社内の人間関係も同じですよね。チームの関係がうまくいっていれば、仕事でも成果を出しやすい。一人の方が早くできる仕事もあるけれど、パフォーマンスを最大化させるためには、チームの力が不可欠。人と一緒に仕事をすれば、必ずプラスがあるものです。

ラピーナ

私はラジオDJの仕事を20年続けていますが、チームは家族で、事務所は家みたいな感じ。自分が自信を持って落ち着いて仕事をするために、一緒に仕事をする仲間との関係性はとても大事にしています。職場は男性ばかりだけれど、女性が少ないから大変とか、難しいと感じることもありません。自分の考え方を持ってしっかり仕事をするのに、性別は関係ないですからね。

むしろ女性がやってしまいがちなのは、男性とコンペティションをするような働き方をして失敗すること。これは絶対にやめた方がいい。「男性に負けないように」って競争するように仕事するのではなく、自分自身から湧き上がるやる気をもとに、自分らしいやり方で働くのが一番です。

大事なのは“curiosità(好奇心)”!
女性のキャリアは世界的な課題だけど、諦めないで

現在イタリアは財政状況があまり良くないですから、定年まで働けるとは限りません。これは国全体の大きな問題ですけど、少なくとも私は死ぬまで働き続けたい。私は自分の仕事が心底好き。それに、これまで頑張って仕事をしてきたおかげで、ようやく自分のスタイルで仕事ができるようになってきたと感じているところなんです。

例えば、『I LOVE TOKYO』は私と夫がコラボレーションしたプロジェクト。私が言葉を書いて、彼が本の中で紹介する音楽を決めました。また、今日通訳をしてくれている友達に本のデザインをお願いすることもできました。自分がやりたいことを実現できるようになってきたからこそ、今より少しペースを落として、ずっと働けたらいいなと願っています。

ラピーナ

とはいえ、私も最初から今のように仕事を愛していたわけではなかったんですよ。私はもともとラッパーで、ラジオDJになったのは、自分がどうしてもやりたくて、というわけではなかった。でも、せっかくチャレンジさせてもらえる機会をもらったんだから、高いレベルのラジオDJになりたいじゃない? だから積極的に自分の個性を番組に入れていったんです。大好きな日本の話題を取り入れたこともその一つ。好きなことはやっぱり皆に知ってほしいから、仕事への意欲はぐんぐん湧いてくる。そうするうちに少しずつ私だけの居場所ができて、仕事がどんどん面白くなっていったんです。

男女格差の度合いを表すジェンダーギャップ指数で、日本は140カ国中114位だそうですが、女性のキャリアは世界的な課題で、イタリアにもたくさんの問題があります。今すぐに男性と同じようにはならないかもしれないけど、日本は先進国だから、女性がキャリアを積むことはきっとできるはず。女性たち自身が「できない」と思ったらそれまでですが、「できる」というイメージを持てば、道はどんどん切り開いていけます。

私が仕事を長く続ける上で一番大切だと思うのは、“知りたい”っていう好奇心。イタリア語には男性名詞と女性名詞がありますが、“curiosità(好奇心)”は女性名詞なんです。好奇心が強いことは女の強みであり、武器だってことじゃないかと私は思います。

ラピーナ

スタートラインは女性も男性も同じで、男性にできて女性にできないことなんて、一つもない。
諦めずに、“curiosità”を持って、ガンバッテクダサイネ!

取材・文/天野夏海 撮影/赤松洋太 


ラピーナ

イタリアで驚異的ベストセラーとなった一冊!
『I LOVE TOKYO』(著者:ラ・ピーナ 翻訳:岩田デノーラ砂和子 出版:学研プラス)

ラ・ピーナは、イタリアの国民的ラジオDJ、ミュージシャン。イタリアのラップ界を牽引する女性ラッパーの一人であり、キャッチーな発言とキュートなキャラクターで人気を集め、ラジオをはじめ地上波やCS局の司会をこなす有名人。そんな彼女が、日本のカルチャーを1冊にまとめたのが『I LOVE TOKYO』。原書はイタリアで5万部以上を売り上げ、ノンフィクション部門9週連続第1位を記録した大ヒット書籍です!
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