【20代・女性の転職事情】社員数4000人以上の大手から“たった7人”のベンチャー企業に私が転職を決めた理由
メガバンクの大量リストラのニュースが世の中を騒がせている昨今。大手企業勤めであっても、“安定”なんて得られない時代だ。そう分かってはいるものの、いまだに20代の間では、何となく「将来のことを考えると、大手で働いた方がいいのではないか」と考える人も多い。一方で、最近では優秀な女性たちの“大手離れ”も目立ち始めている。
2017年5月に、動画マーケティング会社の株式会社プルークスに中途入社した久次愛さんもその一人。大学卒業後はグループ全体で4000人を超える大手人材系企業に入社。約2年間、求人広告営業の仕事を経験し、社員数7名(※2017年5月当時)の同社に転職することを決意した。
業界も、会社規模もまるで違う世界への転職。久次さんの決断を後押ししたものは、何だったのだろうか。
ずっと「営業しかできない」自分でいいの? 入社2年目で転職を決めた理由
大分県出身の久次さんが人材系企業への入社を決めた動機は、自身が就職活動をした際に感じた違和感だ。
「地方の学生は、大学で紹介されたり、学校で開催される企業説明会で見つけた企業に就職することが一般的。世の中にはもっといろいろな仕事があるはずなのに、可能性を狭めてしまっていて、もったいないと感じたんです」
地方における就職情報の格差を解消したい。そんな意欲を持って、求人広告営業の仕事をスタートさせた。
“足で稼ぐ”営業スタイルは少々泥臭いものだったが、それは入社前からイメージしていたので特にギャップは感じなかったという。やりたいと思った仕事に就けた満足感もあった。しかし、「転職」の二文字が頭に浮かぶようになったのは、入社から約1年半年が経った頃だった。
「入社2年目の秋くらいから、今の仕事、ちょっと違うなって思い始めたんです。今後のキャリアを考えたときに、このまま営業の仕事だけずっと続けていていいんだろうかと」
女性のキャリアはライフステージの変化に影響を受けやすい。結婚、出産をして一度職場を離れた時に、営業経験しかない自分が、また会社に戻ってやりたいことがやれるのか、働く場所があるのか、不安を感じたという。
「長く働き続けたいという気持ちがあったから、もっといろいろなことができる自分になった方がいいんじゃないかと思うようになりました。『営業しかできない』んじゃなくて、企業経営の根幹部分にもっと関わるとか、事務的な仕事ももっとできるようになるとか。そういうチャレンジがしてみたくなりました」
社内異動の希望も出してはみたものの、大企業の中での部署異動はそう簡単ではない。職種も変更するとなれば、なおさらだ。
「せっかく大企業に入ったのにもったいないって周囲の人には言われましたけど、将来のことを考えたら、もっといろいろな仕事にチャレンジできる環境に転職した方が、自分にとっては絶対にためになると思いました。20代だし、1回くらい失敗したってまぁ、いいかなと(笑)」
年収は減ったけれど、自分の決断は正しかった。後悔しない転職ができたワケ
転職サイトを使って出会ったのが、当時社員数たった7名のプルークスだった(2018年5月現在は17名)。小規模だからこそ、幅広い業務を担当できるのではないかという期待が膨らんだ。
「転職活動に臨むにあたって、『絶対にやりたいこと』『絶対にやりたくないこと』、働く上で自分が大事にしたいことをノートに書き出しました。複数社を検討しましたが、そのノートに書いた内容に従ってバランスを見た結果、当社が一番自分の理想に近かった。社長との面接がすごくフランクだったから、本音を話しやすかったことも決め手になりましたね」
営業時代のインセンティブが無くなったため、前職と比べると年収は減った。しかし、自分が大事にしたい条件を叶えられる転職となったため、納得感があったと話す。
「働き始めてびっくりしたのは、思っていた以上に一人一人の業務範囲が広いこと。企画もするし、カウンターセールスの仕事もする、営業サポートや事務も兼任するといった感じで、自分の職種が何なのか分からないっていうのが今の本音(笑)。でも、それを希望しての転職だったのでとても満足しています」
小規模組織だからこそ、一人一人の仕事の重要性が大きいことも痛感した。
「自分が何もしなければ、会社が動かないんですよね。今までの環境だと、自分がやってもやらなくても、会社は普通にまわっていた。それってすごいことだったんだなと思って、感謝しかない(笑)。今は、良い意味で気持ちが引き締まります。自分の仕事に責任を持たなければ、と」
そう聞くと、仕事に忙殺される日々を送っているのではないかと感じるが、「自分の裁量が大きいから、無理して働いているという感覚はない」と久次さんはほがらかな表情を浮かべる。
「仕事は無限にあるので、ずっとやろうと思えばできてしまいますが、効率良く働きたいという意思があって、自分で仕事をコントロールできる人であれば問題ないですよ。『長く働け』という人はいませんし、『今日は早く帰りますね』『今日私ができるのはここまでです』って自分が決めればいいだけなので」
「やりたいこと」も「やるべきこと」も楽しめる人がベンチャー向き
ベンチャー企業に転職を希望する人の中には、「やりたいことをやるため」という人が多いと久次さんは実感を語る。だが、転職してみて感じるのは、「やりたいことをやる前に、やらなければいけないことが膨大にある」ということだった。
「当社の中にも“やりたいこと”“実現したいこと”、強い想いを持って働いている人がたくさんいます。でも、創業期のベンチャー企業には、やるべきことが山ほどあって、それをも楽しんでできる人じゃないと長続きしないのかなという気もしています」
小規模ベンチャーだから、自由に何でもできると考えてしまうと入社後にギャップが生まれてしまう。
「社員数が増えていけば、オフィスの引越しをしなきゃ、なんて話も出てくるかもしれない。そうしたら、『会社ってどう引っ越すの?』ってことを自分たちで一から考えてやらなきゃいけないわけで。そういう想定外の仕事も、自分の知識を増やしたり、ビジネススキルを伸ばしたりできる貴重なチャンスと捉えられる人は、すごくベンチャー向きなんじゃないかと思います」
ベンチャー企業に転職し、「毎日わくわくしている」と目を輝かせる久次さんだが、「就職活動時に選んだ会社に入社したことを、間違いだとは思わない」とも考える。
「一社目の会社で一生懸命仕事をした経験があったから、選択肢が増えて、今の会社でこうやって刺激的な毎日を送ることができています。すべての経験がつながっているし、今の仕事に活きている。どんな経験も、自分の考え方次第で『成功』になると思うので、環境のせいにせずに前に進んでいけたら」
長く働き続けるために必要なのは、自分自身の“できる仕事”を増やすこと。仕事で活かせる「武器」を一つでも多く身につけられる場所で20代を過ごすことが、変化の激しい現代を生き抜く最大のリスクヘッジとなるのではないだろうか。
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取材・文・撮影/栗原千明(編集部)