5年越しの夢を叶えシンガポールに赴任中! 日本でやりとりしていた仕事仲間が海外生活を助けてくれる
人生の1つの選択肢として、海外で働くことを選んだ女性たち。
言語の難しさや暮らしの違い、コミュニケーションなど、海外で働くということは、まさに一世一代の大冒険。
「海外で働いてみたい」と思いながらも、一歩踏み出す勇気が持てずにいる人もいるのでは?仕事や生活スタイルの気になるアレコレを、現役で海外勤務している女性に教えてもらった。異国の地で活躍する彼女たちのリアルな働き方を、ぜひ参考にしてみて。
28歳でまわってきた海外赴任のチャンス
不安よりも喜びが大きかった
2013年4月からシンガポールに赴任という形で海外ライフが始まった小橋真希子さん。外語大学出身で、新卒入社当初から海外勤務を希望していた。日本人以外の上司や同僚と一緒に働き、日本人とは違う感覚に触れたいという思いが強かったという。
日本では日立建機株式会社の海外営業部に所属。入社から5年間アジアパシフィック地域を担当し、現在駐在しているシンガポールの統括会社をはじめ、アジア各国の販売会社と日本本社や工場とをつなぐ窓口を担っていた実績を買われての抜擢であった。
「入社当初から海外で働きたいとの想いは上司、先輩、同僚問わず発信してきました。当社では入社して数年目に会長、社長以下社員全員の前で論文発表をする機会があり、それを終えると駐在のチャンスも広がるため、積極的に駐在に行きたいと希望を出していました。
ただ、会社の人事なので個人の希望が全て叶うというわけではありませんし、建機メーカーという業界柄かまだまだ女性の駐在員は多くないので、チャンスがどれほどあるのか不安な部分もありました。なので今回、入社6年目という年齢で駐在の機会を与えられたこと、さらには希望していた赴任地域シンガポールだったことはとてもうれしかったですね」
駐在ばかりを意識してきたわけではないが、日々の業務を通して、国内・海外問わず社内に広く人脈を作ってきたことが、駐在員に選ばれた一つの大きな要因と振り返る。「英語のみでなくいつでも使えるようにとタイ語も細々と継続していた」など、夢に近づくための努力をしていた小橋さんだからこそチャンスを得られた。
日本での引き継ぎ期間は1週間程度と短かったが、作成した引継ぎ書での説明と関係者への挨拶まわりはなんとか完了。シンガポール赴任後1カ月くらいは電話やメールでやりとりしていたが、大きなトラブルはなかったそう。
「シンガポールでの引き継ぎは、正式赴任前に数日出張させてもらい、前任者より説明を受けました。幸い、シンガポールの所属部署のローカルスタッフはほとんど知っていたので、赴任後分からないことは彼らに聞いて教えてもらっています」
お客さまの近くで仕事をすることで
より多くの知識やスキルを身に付けられる
シンガポールでは、日立建機のアジアパシフィック地域の統括会社に在籍している。管轄地域となるインドネシア、マレーシア、タイ、シンガポールなどをはじめとする東南アジア、ニュージーランド、オーストラリアのオセアニアにある販売会社の営業やマーケティングのサポートが日々の業務だ。各国の販売会社の要望を聞き、日本の技術者の協力を得ながら営業用の製品資料やツールを作成したり、マーケティングのための情報収集なども行う。
そのほか、ローカルの営業員と一緒にシンガポール国内のお客様をまわり、営業活動のサポートやお客さまの情報収集をするほか、工場があるインドネシアに出張し、関係者と打ち合わせをすることも。ときには日本からの出張者の対応もあり、自ら車を運転してシンガポール国内の現場に連れていくこともある。
「こちらは約150名の従業員のうち、日本人は8人。同僚はほとんどがシンガポール人で、彼らとの会話は英語です。また、担当する各国の販売会社は数人の日本人とローカルスタッフという構成なので、そことのやりとりは日本語と英語が半々。日本本社や工場とも交信があるので、全体として、日本語4割、英語6割で仕事をしているイメージですね」
日本側とのメールは日本語でしているが、今後は国籍関係なくメールは英語にしていこうと考えているそう。「日本語でしてしまうと、日本人のみの情報共有になってしまうので」と、グローバルでの仕事術が着実に身に付いてきているようだ。
シンガポールに赴任してまだ数カ月の小橋さんだが、顧客に近いところで仕事をすることで、より多くの製品知識を身に付けることができそうだと意気込む。
「日本にいるときより接する人たちの範囲が広くなり、さまざまな考え方や意見を知ることができて、自分の思考の幅も広がるような気がします。英語ははっきりと結論から話すことが大切ですが、そのような話し方や説明の仕方を常に心掛けることで、自分の考えをきちんと整理してわかりやすく相手に伝えられるようになりたいと思っています」
経験者に聞きたい素朴な疑問
海外で働く女性のワーク&ライフ事情
Q.1渡航前の手続きは大変だった? 具体的にしたことは?
区役所へ海外移住届の提出、国際免許証の申請、金融機関(銀行、カードなど)の契約の整理、就労ビザ申請用書類の準備および取得、保険会社への連絡、人間ドックの受診や各種予防接種などやることは多かったですね。わたしは独身、かつ姉と暮らしていたため、家族や住居に関わる手続きがない分、簡単に済んだ方なのだと思います。
Q.2現地での住まいはどうやって探したの?
住居や引っ越しに関する準備は、会社からのサポートに頼りました。引っ越しは、会社指定の引っ越し業者に連絡を取って日本から荷物を引き払い、シンガポール到着後は家が決まったタイミングで連絡をして、荷物を引き取っただけ。家探しは、会社が紹介してくれたエージェントに頼んで物件をいくつか見せてもらい、その中から決めました。日本でも自分で家探しをしたことがなかったので、自分の感覚できちんと家が選べるかはあまり自信がありませんでしたが、今のシンガポールの家には満足しています。
Q.3仕事の後やお休みのときは、何をしている?
当社独自の仕組みかもしれませんが、会社のサポートで定期的にダンスやインラインスケート、バトミントンなどを楽しむアクティビティがあります。また、職場の日本人のつてで飲み会に誘ってもらい、新しいお友達ができたり、シンガポール人の同僚のお友達と知り合ったり、充実しています。日本と違い隣国マレーシアまで車で行けるので週末にドライブがてら国境を越えるのは新感覚の楽しみですね。
Q.4仕事や日常のコミュニケーションで困ったことはない?
英語ができれば特に困ることはありませんが、中華系シンガポール人同士は中国語で話すことが多いので、中国語が理解できるともっと会話が広がるのにと感じることがあります。生活の立ち上げには思った以上に困ることがないので、この国が外国人の受け入れに慣れていることに逆に驚きましたね。
Q.5日本と大きく違うと感じた文化や商習慣はある?
まず違うのは残業に対する意識。日本では残業することが多かったですが、シンガポールでは定時をまわると社内の大半がさっと帰宅していきます。忙しい時期には残業もありますがいつも残業しているということはありません。あと、休みもまとまって取得するので、1~2週間休暇を取ったローカルスタッフは、わたしが来てからわずか2カ月の間に3人もいました。
取材・文/朝倉真弓