転職を「人生の転機」にするための5つのコツ
転職は、ビジネスのフィールド、人間関係、勤務地、給与、時間の使い方など、自分を取り巻く環境が大きく変化する転機。新しい自分に生まれ変わる絶好のチャンスでもある。
そこで、『がらっと自分の性格を思いのままに変える方法』の著者である山崎拓巳さんに、転職をきっかけに新しい自分になるためのヒントを教えてもらった。
ヒントその1
“失敗”の定義付けを改める
「違う仕事をしてみたい」、「違う会社も見てみたい」と転職が脳裏をよぎっても、「失敗に終わるかもしれないから、やっぱりやめておこう」と、つい心の奥底に封印してしまう人も多いのでは?
自分自身が変化を求めているのに、何もアクションを起こさないのは危険だ。転職したいなと思ったときは、もう“何かを変えなければいけない時期”が来たと、赤ランプが点滅している状態。
「今は激動の時代なので、常に変化が求められます。神経衰弱のカードのように、これかな、あれかな、と何枚もめくり、自分にとって最適な場所を見つけるための、経験を増やすことが求められます」(山崎さん)
新たな一歩を踏み出すためには、まず自分の中の“失敗”の定義付けを変えることが重要だという。
「世界No.1コーチと称されるアンソニー・ロビンズ『直伝』トレーナーの池田貴将さんによると、失敗はマイナスではなく、行動を起こしたことに対する“フィードバック”だといいます。フィードバックは多ければ多いほど良いですよね。次の施策を考えるデータは、たくさんあった方がより精度の高い作戦を練ることができますから」(山崎さん)
成功の反対は、決して失敗ではなく、“何もしないこと”。失敗を恐れて何もアクションを起こさないことの方がリスキーなこともある。まず、変化を柔軟に受け入れられる自分になろう。
ヒントその2
自分の長所を正しく知る
自分は何をしたいのか、何が好きなのか、得意なのか。それが分からないという人も多いが、自分に合った職場を見つけるのにも、面接で初対面の人に自分をアピールするのにも、まずは自己理解していることが大前提だ。
好きなことや得意なことは容易にできてしまうため、自分自身でそれに気が付くのは難しい。山崎さんによれば、以下の3つを考えると、おのずと自分の長所に結び付くという。
1、お金を払ってでもやりたいことは何か
2、三度の飯より楽しいと思えることは何か
3、よく他人から頼まれることは何か
自分の長所を確信できれば、自信を持って自分をアピールできるはず。さらに、転職先と自分のマッチングを誤ることもない。
「例えば、組織人が欲しい大企業に、自分の強い個性をアピールしてもうまくいきませんよね。自分は組織人として生きていきたいのか、個性を活かして生きていきたいのか、それによって面接の受け方も違ってくると思うんです。自分に似合う服を選ぶのと同じで、自分に合った職場を選ぶためにも、長所を知っておくのは大切なんです」(山崎さん)
ヒントその3
グルーピングで人間関係を整理
新しい職場になると、上司、先輩、同僚、そのほか取引先など、新たな出会いが待っている。これまでの古いコミュニティから新しいコミュニティへと変化するときだ。そして、この新しいコミュニティをどう構成させるかで、新たな職場でスムーズに仕事を進められるか否かが決まる。
「成功する鳥は群れをなして飛ぶ」という言葉があるように、人間関係を俯瞰して眺めると、同じタイプの人間が1つのグループになって集まっていることが多い。とはいえ、今の時代の“成功”は上へ上へと上り詰めることだけではない。何を幸せと定義している人なのかを見極めなければならない。
「この人たちはオシャレ好きなキラキラ派、この人たちはキャリアを極めるギラギラ派、この人たちは人生エンジョイ派……など、知り合った人を頭の中でグルーピングしてみてください。こういう時はこのグループの人に相談すればよい、こういう時はこのグループに顔を出すとよい情報がもらえるなど、人との関係を整理することで、関わり方がクリアになってくると思います 」(山崎さん)
さらに忘れてはいけないのが、複数のグループに顔を出すことだ。1つのグループだけに属していると、そこでの位置づけが人生の評価になってしまう。
ヒントその4
情報は足で稼ぐ
「分からない」「アイデアが浮かばない」と悩み始めたとき、机の前でじっとして考え続ける人も多いのでは?
転職で新たなフィールドに挑戦するには、未知の分野の勉強をしたり、発想の転換を求められたりと、慣れた仕事を続けるよりも多角的な情報が必要になってくる。
現代はインターネットに代表されるように、簡単にたくさんの情報を得られる方法があるが、その中から自分にとって役立つ情報を見つけ出すのは至難の業だ。パソコンの前にずっと座っていても人より優れたアイデアを得られることはない。
「船井総研創業者であり、経営コンサルタントの船井幸雄さんは『情報量は、移動距離の二乗に比例する』と話しています。最近、良いアイデアが浮かばないなんて、思っている人はすぐに行動すべき。見る景色が変わるだけで、脳が反応し良い発想が涌いてくるんです。だから旅っていうのは特によいですね。人数は少なければ少ないほど良い、一人旅は最も脳を刺激します」(山崎さん)
ヒントその5
“俯瞰位置”を高く持って自分を客観視
新しい職場に馴染んで仕事を任せられるようになれば、もちろん結果を求められるようになる。良い実績を出そうと必死に目の前の仕事に打ち込むという人が大多数だろう。
しかし、それだけに熱中すると、八面六臂の活躍は難しい。自分の実績にしか目が行かず、自己満足に陥ってしまうことも。周囲が認める本当の成果を出すためには、山崎さんは 「“俯瞰位置”を高く持つこと」とアドバイスする。
「組織で仕事をこなしている人、一定以上の結果を出している人は、周囲の“wants”が見えている人です。なぜあの人はあそこで働いているのか、なぜあの人はあれをすごく頑張っているのか……周囲の状況が客観的に見えているので、自分の動き方や、周囲の人に掛けるべき言葉も分かっている」(山崎さん)
転職活動を進めていくと、自分の弱さや苦手な部分と向き合うことになる。そんな時に逃げるのではなく、それを自分を変えるチャンスと、ほんの少し発想の転換をしてみてはどうだろう。今までだったら、「できない」、「やりたくない」になることも、この転職活動をきっかけに、試してみようと思える自分に変われるかもしれない。
取材・文/吉田 明乎