事務なら転職できる?! 営業職女性が陥りがちな間違ったキャリア選択

事務なら転職できる?! 営業職女性が陥りがちな間違ったキャリア選択

営業職は残業も長く、ノルマを抱えるハードな仕事。そのため、30歳手前でデスクワークの事務職へキャリアチェンジしたいと考える女性も多い。
営業職女性たちは、数字を持たない、サポート的な役割を担う事務職は「採用のハードルが低そう」と誤解している。が、実際、事務は人気職種。「数字を持たない」というだけの安易な理由で事務職を選択するのは非常に危険だ。事務職への転職を望む営業職女性の実態に迫る。

求人数が少なく、応募数が多い事務職求人
転職成功のハードルはかなり高い

『女の転職@type』に2013年4月の1カ月間に新規会員登録した人の中で、最も多かったのは営業職経験者で約5割。続いて事務職経験者が約3割だった。多くの営業職女性が転職活動に積極的であることがうかがえる。

一方、同期間に応募された求人の内訳を見てみると、最も多かったのが事務職求人で、全体の5割以上を占めた。事務職への応募は経験者に加えて、他職種からのキャリアチェンジを望む、未経験者からも多数ある。その結果、競争率もグッと高くなっているのだ。

そんな状況にも関わらず、『typeの人材紹介』キャリアアドバイザーの池上 奈緒子さんによると、事務職に転職したい営業女性たちの多くが
「事務職で特にやりたいことがあるわけではない。残業もなく、目標を追いかけなくてよいから選んだ」と語るという。転職理由が“消去法”であることは問題だと指摘する。

「事務職は人気なので、応募数も多く、採用される確立は相対的に低くなります。経験者ならば優遇されることもありますが、未経験者ならば『事務職に就いて何がやりたいのか』、『その会社に入って自分には何ができるのか』を真剣に考え、自分の言葉で語れるようにならないと内定を獲得するのはかなり難しいでしょう」

事務職へのキャリアチェンジは、営業職女性たちが思っているほどたやすい道では決してないのだ。

次の選択肢は事務職だけではない
冷静になって長いスパンでキャリアを考えて

「数字を追わない」職種は事務だけではない。営業での経験や自分の強みを活かしたキャリアチェンジにつなげたい

「数字を追わない」職種は事務だけではない。営業での経験や自分の強みを活かしたキャリアチェンジにつなげたい

ノルマを追わない職種に就きたいのであれば、何も事務職に限定することはない。その条件を満たす職種なら、ほかにもたくさん存在する。あえて採用ハードルの高い事務職を選択する必要など、実はないのだ。

「例えば、人とのコミュニケーションが得意であれば、コールセンターのカスタマーサポートがありますし、ネットの知識が豊富であればマーケティングリサーチという職種を選ぶこともできます」(池上さん)

営業職で培ったスキルや経験を転用して、活かせるフィールドはいろいろある。もっと主体的に専門性を持ってキャリアを築いていきたいという人ならば、人事や経理に進む方向もあるという。

このように少し発想を変えて、自分の得意分野や会社に貢献できることは一体何なのかという視点で次の選択肢を選ぶほうがずっと建設的だ。
さらに同社のキャリアアドバイザー・伊藤泰子さんは、キャリアは長いスパンで考えるものだと助言する。

「営業職の女性たちはこれまでストレスフルな環境で働いていたので、次の仕事は『アシスタント的な役割でいい』と考えがちです。しかし、一歩踏み止まって、専門性を高めることができたり、経験を積める仕事を選ぶことが大切です」

営業職女性に多いのが、30歳を目前に控えて「将来のために働き方を変えたい」という理由で転職を志すパターン。その根底には、結婚・出産したら今と同じ働き方はできないという不安がある。それが極端に振れて、「ハードじゃない仕事に」という志向が強くなりすぎ、そもそものキャリア継続に必要な「中長期で成長していける仕事に」という視点が抜けてしまいがちなのだ。

本当に長く仕事を続けていきたいのであれば、子どもの手が離れて仕事に集中できるシーズンがやがてまた来たときも、モチベーション高く取り組める仕事に就くことを優先すべきではないだろうか。

仕事選びは人生の中でも重要なイベントの一つ。「数字を追いたくない」と消去法で選択するにはリスクが高すぎる。行き詰まったときにも自らが納得感を持って“この仕事を選んで良かった”と思えるような冷静なキャリア選択をしたい。自分の得意なことややりたいことと照らし合わせて、可能性の幅を広げてみて。

取材・文/岩河内弘美