06 NOV/2014

上の顔色ばかり見てる“ヒラメ上司”の行動に隠された、意外と真っ当な理由

堂園稚子
上司に対する「何で? どうして?」をズバっと解説
堂園姐さんの「上司のキモチ」翻訳講座

上司に対して日々感じている「なんでそんなこと言うの?」「どうしてそういうことするの?」という不満や疑念。それを直接上司にぶつけたいと思っても、「余計に怒られるんじゃないか」「印象が悪くなるんじゃないか」とモヤモヤしたまま自己完結してしまっている女性も多いのでは? そんな働く女性たちの疑問に、最強ワーキングマザー・堂薗稚子さんが、上司の立場からズバッと解説! 上司って、ホントはすごくあなたのことを考えてるのかも!?

堂薗稚子(どうぞの・わかこ)
株式会社ACT3代表取締役。1969年生まれ。1992年上智大学文学部卒業後、リクルート入社。営業として数々の表彰を受ける。「リクルートブック」「就職ジャーナル」副編集長などを経験。2004年に第1子出産を経て翌年復職。07年に当時組織で最年少、女性唯一のカンパニーオフィサーに任用される。その後、第2子出産後はダイバーシティ推進マネジャーとして、ワーキングマザーで構成された営業組織を立ち上げ、女性の活躍を現場で強く推進。経営とともに真の女性活躍を推進したいという思いを強くし、13年に退職し、株式会社ACT3設立。現在は、女性活躍をテーマに、講演や執筆、企業向けにコンサルティングなどを行う

皆さん、こんにちは。堂薗です。

上司の「?」な行動の真意、今回も考えてみたいと思います。
今回のテーマは、「上にはへいこら、下にはいばる上司」です。

部下というのは、本当によく上司を見ているものですよね。特に女性は、仕事の能力や成果だけでなく、その人柄も含めて上司を見ている傾向が強いように思います。「人として」見ているからこそ、見る目が厳しく、「尊敬できない」という気持ちは、「キライ」という気持ちにまで発展してしまうこともあります。もう「キライ」までいってしまって、許せないという方にとっては、どうして「へいこら」か考えるのは意味がないでしょう。でも「どうして?」と思えているのなら、上司をよく観察してみると、将来、自分が上司になったときに、「そうだったのか」と思えることもあるかもしれませんよ。

へいこらする上司は2パターンいる!
本当に自分のことしか考えてない上司は見限ってよし

それにしても、「上にへいこら」な人って本当にいますよね。一緒に議論して出した結論なのに、偉い人たちに「ちょっと違う」と言われると、反論もせずに「そう思っていたんですよ、もう一度考えさせます」なんて答えられちゃったり、偉い人から電話があると、どんな予定よりも優先して、すっ飛んで行っちゃったり。それなのに、部下に対しては、「オレが決める」といばってみたり、「上から評価されている」と得意気だったり。「なんじゃ、この人?」って上司、確かにいます。俗に言う「ヒラメ」、上にしか目が付いていないってヤツです。

この人種、私は種類が分かれると思っているんです。1つは、本当に自分のことしか考えていないタイプの人で、部下に見透かされていることに気付いていない上司。このタイプは、早晩、駆除されます(笑)。
私が始めて管理職になり、張り切りすぎて、部下から総スカンだった時期に、ある人から「管理職以上の人事ってのは、上が決めるように見えるかもしれないが、実は部下が決めているのだ」と言われたことがあります。「部下との信頼関係がない管理職はリーダーにあらず。上からの評価も得られない」というメッセージで、苦しむ私への激励だったのだと思います。そう思って見渡すと、「部下が何と思おうとオレはオレ」と思っている人は、しばらくするとそのポジションからいなくなっていること、ありませんか? 残っている人は、部下から信頼されない未熟な自分を自覚し、「この状況を何とか変えたい」と苦しみ懸命に行動しようとしているもので、上司のそのまた上司は、意外ときちんとその人を見ているのです。
あなたの上司が、本物のヒラメ上司だった場合は見限ってよし! でも、少し時間が掛かる発展途上の上司だとしたら、ほんの少し時間をあげて、その人の成長を見極めてみてほしいなと思います。

もう1つは、部下と同じことを言うときに、上層部に伝わるように言い換えている「翻訳タイプ」。これが部下から見ると、判別しにくいことがあるような気がするのです。

これも私の体験ですが、ある企画をプロジェクトオーナーにプレゼンしていたとき、一緒にいた上司が、オーナーである上層部の意見に耳を傾けすぎているように感じて、苛立ったことがあります。会議が終わった後には、上層部の意見を受け入れて修正したり精査したりするポイントがいくつも出てきていて、私はぷりぷりしていました。「この人、どっちの味方なわけ?」と思ったのです。打ち上げでその不満を上司にぶつけてみると、彼は、「あんなの、大筋に関係ないじゃないか。プロジェクトが前に進めばいいんだよ」と言いました。よくよく考えるとそうなのです。私たちが「やりたいこと」はちゃんと通っている。でも枝葉のところは、上層部の意見を取り入れて修正する形で収まっている。私は唸りましたね。
「この人、チームに代わってうまく交渉してくれたんだ!」とやっと理解したからです。

部下たちの仕事をうまく進めるために
上との調整をしている姿が「へいこら」に見えるのかも

私自身も後に同じような場面で、上司側の立場になったことがあります。同席したメンバーから、プレゼンの後に「上の顔色ばかりみて、これじゃなんのためのプロジェクトか分からない!」とすごい剣幕で食ってかかられましたが、私は相変わらず未熟で、きちんと意図が説明できたか自信がありません(汗)。

自分たちの主張ばかりしていたら、通るものも通らないことがあります。私は上層部の意向を一部取り入れて、プロジェクトをまとめたのですが、そのメンバーは今でも私を「上にへいこらする上司」と思っているかもしれませんね。でも、チームメンバーと同じ方向を向いて仕事をしていた自信があるので、どう思われてもへっちゃらです。ただし、「いつか分かるよ」なんて思わずに、納得してもらえるまでとことん説明すべきだったと反省しています……。

部下たちの仕事をうまく進めるために、情報収集し微調整している姿、というのも、「上にへいこらする上司」に見えるのかもしれません。でも、そのコミュニケーションスタイルにばかり気を取られずに、それで得られた結果はどうか、よく見てみると、「翻訳タイプ上司」である可能性もあると思います。「オレがこうしたから通ったんだよ」とか言うと、「へいこら」に「いばる」がプラスされて、その頑張りも台無しなんですけどねえ。私のときのように、食ってかかられた方が説明する機会ができて、かえって良いのかもしれません。もし、翻訳タイプかもな、と思ったら、「どうしてあのとき、ああしたんですか?」と聞いてみるといいと思いますよ。「こんなに深く考えていたんだ」と思える、新たな発見があるかもしれません。
「上にへいこら」は意外と奥深いのです(笑)。

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