怒鳴るマネジメントは言い訳無用でレッドカード! 感情に任せて怒る上司に真意はある?

堂園稚子
上司に対する「何で? どうして?」をズバっと解説
堂園姐さんの「上司のキモチ」翻訳講座

上司に対して日々感じている「なんでそんなこと言うの?」「どうしてそういうことするの?」という不満や疑念。それを直接上司にぶつけたいと思っても、「余計に怒られるんじゃないか」「印象が悪くなるんじゃないか」とモヤモヤしたまま自己完結してしまっている女性も多いのでは? そんな働く女性たちの疑問に、最強ワーキングマザー・堂薗稚子さんが、上司の立場からズバッと解説! 上司って、ホントはすごくあなたのことを考えてるのかも!?

怒鳴るマネジメントは言い訳無用でレッドカード

こんにちは。堂薗です。

「感情に任せて怒る上司がイヤ」
「自分じゃなくても誰かが怒鳴られているのが聞こえると不快になる!」

今回は、「そんな上司のキモチなんて翻訳しなくていい!」という声も聞こえてきそうなテーマですが……私自身の反省も含めて、あえて取り上げてみたいと思います。

皆さんがこれだけ不快な感情を抱いている「怒鳴る行為」ですが、私の周りにもつらい思いをしていた女性がいました。

その人は同僚で、小柄な女性だったのですが、彼女は背の高い男性同僚に怒鳴られてから、大柄な男性に言いにくいことを言うのが恐ろしくなってしまったと言っていました。会議室で議論していて、突然、黙って立ち上がられたりすると、頭が真っ白になると言って苦しんでいました。

どんな真意があったとしても、暴力を連想させるような態度を取ることは許されない、と思います。

これは、上司が部下に対して、ということだけでなく、部下が上司に、同僚同士で、ということも含みます。

もちろん、強い立場の上司が怒鳴る側にいることが多いのでしょうが、メンバーもまた、感情的になって大声を出した瞬間にそれは「暴力」を連想させるのだ、ということを知らなければなりません。

真意が隠されている場合もある
でも怒鳴られた側の「負の感情」はなくならない

部下時代の私自身も、20代の頃には何度も上司や関係者に怒鳴られたことがあります。

「パワハラ」なんて認識はまだない昔のことですからねえ。一番印象に残っているのは、25歳くらいの時のこと。あるとき、納品された制作物を確認していたら、写真に大きなミスを発見したんです。

血の気がひいて、パニックに陥り、上司の元に走っていって、口をパクパクさせながら報告しました。そして、「どうしよう、どうしよう……」とつぶやいていたら、その上司は大声で私を怒鳴りつけました。

それもね、「こんな大きなミスしやがって!」ではなく、「なんや、命でも取られるんか?」と関西弁で怒鳴ったんです(笑)

私はミスの動揺よりも「こんなに困っているのにひどい!」という怒りが込み上げてきて、そのまま、ついっと席に戻りました。

そして怒りにまかせて後処理をテキパキ始めてやりました。「アイツなんかに頼るか、見てろよ!」とばかりに1人で謝罪に行き、再納品の手はずを整えて、報告もしてやりませんでした。

「どうなった?」と聞かれて、顔も上げずに「終わりました」「再納品に●●万円かかります」と答え、とっとと帰りましたが、スカッとしましたねえ。

今思えば、きっと、私が勝手に再納品することに決めた分のコストの決裁や、先方上司への連絡や、そういうことはやっておいてくれたのだと思います。

その時は全く分からなかったし、その後もしばらく気まずい関係のままでした。

よくテレビドラマとかであるじゃないですか。登場人物がパニックに陥って、ぎゃーぎゃー騒いでいると、誰かが平手打ちしてはっとする、みたいな。そういうことだったのかもしれないなあと今は思うのですけどね。

おかげで、少なくともミスに対しては冷静になれたし、上司に頼りたい逃げたくなるような出来事に1人で立ち向かうこともできた。そして、笑ってしまうけれど、「命取られるわけじゃなし」というのは、私がその後20年、仕事で大きな壁にぶつかるたびに、胸でつぶやく呪文になったのです。

たぶん、このケースは計算して怒鳴ってくれた稀有なケースです。ここまで功を奏するとは思っていなかったと思うけれど、焦りまくって動揺する私が冷静になるには、「怒鳴る」という方法しかないと考えたのかも。

もし、いつもは大声なんて出さない上司が怒鳴ったとしたら……。

その上司にとって、感情をコントロールできない何かがあった、ということでもあります。自分の仕事を邪魔されたとか、思うようにならなかったとか、自分の事情で他人に八つ当たりしたのだとすれば、お話になりません。

でも、部下の発言や行動に感情的になったのだとしたら、どうしても譲れない琴線に触れたか、どうしても伝えたいことがあってそれが溢れたか、ということなのだと思います。

それこそ、母親が、道に飛び出した子供を大声で叱るように。部下の言動が、実はとても危険なことだったと伝えるために。

今でこそこんな風に冷静に振り返ることができますが、それでも、私はあの時の上司の怒鳴った顔は、いやな思い出として忘れることはできません。

信頼している上司なら、真意を尋ねてみても
自分だけで抱え込まないで!

実は、私も上司になりたての若い時には何度も怒鳴ったことがありますし、40歳を過ぎてもやっぱり怒鳴ったこと、あります。その時、感情的になっていなくて計算して叱ったのだ、とはとても言えません。

やはりカッとなったのです。

どんなにそのときメンバーがひどい失敗をしたとしても、頭ごなしに怒鳴る、という行為は人としてありえません。

叱っている内容が正論であってもメンバーの胸には響かないでしょうし、その後の関係もぎくしゃくしてしまう。

叱り方を謝る、ということもしなければならない。一時の感情でそのような事態に陥ってしまうなんて、上司失格だとしか言いようがありません。私の怒鳴り声もまた、メンバーたちにとって忘れられないいやな記憶になっているに違いないでしょう。

「怒鳴る上司のキモチ」なんて知らなくていいとも思います。

でももし真意があるとしたら、怒鳴った自分を悔やんで悔やんで、きちんと説明したい、謝罪したいと考えている上司もいるのではないかしら。

怒鳴った上司を、普段は信頼していたのだったら、「裏切られた」「信頼が崩れた」と思うのは当然ではあるけれど、思い切って真意を尋ねてみてもいいかもしれない。

自分が触れてしまった大きなリスクに気付くこともあるかもしれませんよ。

許せないほど理不尽なのであれば、上司との直接対決は避けて、人事やコンプラ関連部署に相談しましょう。

なるだけ時系列に、言葉や行動も事実通りにメモしておくと、冷静に相談できます。怒鳴られた側が抱え込んで、自分を追いつめる必要なんてないのです。怒鳴る上司、これは明らかにレッドカードの上司です。


堂薗稚子(どうぞの・わかこ)
株式会社ACT3代表取締役。1969年生まれ。1992年上智大学文学部卒業後、リクルート入社。営業として数々の表彰を受ける。「リクルートブック」「就職ジャーナル」副編集長などを経験。2004年に第1子出産を経て翌年復職。07年に当時組織で最年少、女性唯一のカンパニーオフィサーに任用される。その後、第2子出産後はダイバーシティ推進マネジャーとして、ワーキングマザーで構成された営業組織を立ち上げ、女性の活躍を現場で強く推進。経営とともに真の女性活躍を推進したいという思いを強くし、13年に退職し、株式会社ACT3設立。現在は、女性活躍をテーマに、講演や執筆、企業向けにコンサルティングなどを行う

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